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【連載版】幼馴染ばかりを優先する婚約者には、愛想が尽きましたので  作者: 雪菜
第二章

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18/21

第9話 修羅場というやつですか?

「アルヴィンが侯爵家を継ぐなんて話、聞いてないわ!」


 周囲の目を意に介すことなく、会場の一角で声を上げたのはキャスリーンだ。オスカーの婚約者である彼女は、当然今日のパーティに出席している。


 愛らしい顔に険を浮かべて、彼女はオスカーに食って掛かっていた。


「こんな大事なこと、どうして黙っていたの!?」

「いや、それは……」


 ごにょごにょと言い淀んだ後、オスカーが慌てて言い募る。

 

「俺も今知ったんだ! だから――」


(あら、まあ……)


 オスカーの苦しい言い訳に、ミレイユは内心で苦笑した。彼の泳いだ視線と焦りようは、大嘘です、と顔に書いてある。


 長い付き合いのキャスリーンにも察せられたのだろう。彼女の瞳の色が一段と冷めたものになる。

 

「……わざと黙っていたのね。ひどいわ。このままずっと私を騙すつもりだったの?」

「騙すなんて、おおげさな言い方をしないでくれ。近いうちに話す気でいたんだ」


 オスカーが宥めるように言う。


「それに、跡継ぎから外されたって俺たちの仲は何も変わらないだろう? いつ話そうが、大した問題じゃないじゃないか」

「冗談を言わないで! バークライトの後継じゃないオスカーに魅力なんて、何もないじゃない。大事なことだわ!」

「な……っ」


 キャスリーンの容赦のない物言いに、オスカーがたじろぐ。


「……あそこまで言われれば、兄様も目が覚めるのかな。ホプキンス男爵令嬢を純粋無垢だ、なんて信じていたみたいだけど」


 隣でぼそりとアルヴィンがこぼす。あどけない顔には呆れの色が浮かんでいる。


「とりあえず、衝撃で言葉が出てこないようですね」


 固まっているオスカーを遠巻きに眺めつつ、ミレイユは周囲を見渡す。招待客たちは三者三様の反応だ。無関心を貫く者。興味津々で野次馬と化す者。最も多いのは、この場であんな言い争いをする二人への呆れ。


 総じて、会場の空気は居た堪れなくなっていた。


(……まあ、こうなりますよね)


 予想通りの展開である。


 キャスリーンも参加しているパーティで侯爵家の後継が変わったことを発表すれば、オスカーとの喧嘩が始まるのは予想できたこと。不満を胸の内に収めて人目のない場所で話し合うような、キャスリーンはそんな理性的な人ではないのだから。

 

「家督を継げない長男の婚約者だなんて、ごめんだわ。こんな婚約、解消よ……っ!」

「いくらなんでも薄情だぞ、キャスリーン! 君と俺の仲だろう!」


 いつのまにやら二人の話は婚約解消にまで発展していて、収拾がつかなくなっていた。


 婚約を解消する、しない、で大揉めしている。


 そんな二人に、ミレイユはそっと声を掛けた。


「お二人とも。ひとまずその辺りで。ここは周りの目もありますから。談話室でゆっくりお話し合いをしませんか?」

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