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アリアドネ・コード─少女兵たちよ人類を奪還せよ─  作者: チャハーン
第2章 断絶の箱庭編

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第36話 夢の続き

自分の中でマンネリ化というかなんかが始まってる気がする

応援ください

(エレンは悪い夢を見ていないみたい。ま、それは全然いいことなんだけど)


 リリスは指で銃の形を作りながらソファーで寛いでいる。エレンが昼食を作っているのをぼんやりと眺めながら夢の続きを考えていた。リリスはエレンに撃たれる瞬間目を覚ましたが、もしその続きがあるとしたらどういう内容になるか、そのことで頭がいっぱいだった。


「リリスさん!さっきからぼーっとしてないで、何か手伝ってください」

「あっ、うん。今行くよ」


 リリスはキッチンの前に立つとエプロンを整えた。横ではエレンが包丁で野菜をみじん切りにしている。包丁がスムーズに野菜を切っていく様子に、リリスは見惚れてしまう。

 トントントンと、まな板を規則的に叩く。


 リリスはペティナイフでじゃがいもの皮を剥き始めた。芽を取り、薄皮をスルスルと慣れた手つきで剥く。


「今日は何を作るの?」

「シチューです!この前ベティさんが美味しいって言ってくれたので」

「シチューかぁ、確かに美味しかったね。今度私にレシピ教えてよ」

「えーそれは嫌ですよ。食材無駄になっちゃうし……」


 リリスは眉間に皺を寄せた。思わずじゃがいもを手から滑らせる。エレンが包丁の手を止める。リリスは慌てた様子でじゃがいもを掴み、皮をまた剥いた。あらかた剥き終わるとまな板の上に置き、半分に切る。


「その、さ」

「はい?」

「最近……今日、変な夢を見たんだよね」

「どんな夢ですか?」


 リリスは言葉に詰まる。

 言えなかった。たとえ夢だったとしても、エレンがリリスを撃ったと聞けば落ち込むだろう。エレンはそうするとリリスは直感していた。

 しかし夢を見たと言った以上手遅れだ。適当にはぐらかすとエレンは余計詮索しようとする。リリスは思考を張り巡らせ、最善策をつかみ取ろうと模索したが、ほとんどが霧散した。


「その……ね、変なことなんだけど……エレンが私を撃つ、夢だったんだ」


 そのまま真実を告げる。

 リリスが出した答えだった。

 間髪入れずにカバーを入れることでエレンが悲しむ暇を与えないようにする。


「でもエレンはさ、絶対にそんなことしないのわかってるから!」

「リリスさん」


 エレンの口調は普段の緩やかなものとは違った。

 鋭く、引き締まった声色。表情はリリスからは見えないが、恐らく真剣な眼差しをしている。


「それは夢じゃないです」


 エレンは包丁をまな板の上に置いた。コトッ、と静かな音が響く。

 リリスの瞳孔が開き、鼓動が速くなる。服の上から胸を押さえると息を整えた。エレンが言った言葉の意味が理解できない。落ち着いて何を言ったのか整理し、反復して言葉を飲み込む。


「今、なんて?」


 リリスは恐る恐る尋ねる。


「夢じゃないです。だってこれから起きる未来ですから」


 エレンの声には甘えや遠慮といった感情が一切含まれていない。心做しか冷たく感じる。エレンの瞳は暗く、表情も深刻だ。リリスに体を向けると一歩歩み寄る。リリスは何を思ったのかエレンから距離を取る。そんなはずはない、と頭の中では思いながらも体が、本能が、拒絶反応を出していた。


「あなたが忘れても、私の体はそれを覚えています」


 エレンは自分の右手をじっと見つめ、それから愛おしそうにリリスを見る。キッチンに漂うシチューの香りは、最後の晩餐かのように感じられた。

 刹那、リリスの脳を駆け巡る存在しない記憶。

 落ちた自分の頭が食卓で一番大きな皿に載せられ、それを囲むように食事を摂る。まるで儀式だ。


「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!」


 エレンはポケットに手を入れる。ゴソゴソという音が聞こえたが、リリスの耳には入らない。何度飲み込もうとしてもエレンが言ったことの意味がわからない。

 困惑、としか言いようがなかった。


「……っ、いやあああ!!」


 エレンが腰から黒い塊のようなものを引き抜くと同時にリリスは手を振り回し叫ぶ。そのまま体勢を崩し尻から崩れ落ちると、奇妙な音が耳に入った。

 銃声とはまた違った火薬の弾ける音。

 滅多に聞くことはないクラッカーの音だった。


「へ……?」


 きらきらと輝く金色のテープがリリスの腕の隙間から入り込む。そのままへたれこんでいるリリスの頭や肩へとそっと降り注いだ。


「ふふっ……」


 先程までの険しい表情はどこへやら、エレンはクラッカーの筒を握りしめたまま腹を抱えた。その顔には申し訳なさが浮かびながらも、溢れ出る笑顔を隠すにはあまりにも小さかった。


「え……え、ええ?」

「びっくりしましたか?」


 リリスは床に尻もちをついたまま固まっていた。視線を激しくあちこちへと動かし、様子を探る。

 黒い塊、リリスが銃だと思っていたそれはただのクラッカーだ。

 激しく跳ねていた心臓が、ようやく落ち着きを取り戻す。


「ど、どういうこと?」

「ベティさんが考えたんですよ。何か心当たり、ありませんか?」

「心当たりって……」


 リリスの視界にカレンダーが入った。

 11月28日、リリスは記憶を辿る。そしてすっかり忘れていたものを思い出した。


「誕生日……?」

「はい!ちょっとアドリブだったんですけど、上手くいったみたいですね」

「は、はは……笑えないなぁ」


「リリスさんが悪夢を見た、ってベティさんから聞いたんです。それで……今日誕生日だから、何とかして欲しいって言われたんですよ」

現在1.2.3章の予定なんですけど、2と3の間にさらに1章入れるか悩んでます

よかったら感想欄で案ください

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