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ラノベ部(仮)  作者: ぼうし(ケモナーの人)
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四章 おちなど、もとめて、いけない


四章


俺たちは事務所に最も近い駅から二個奥の駅に降りた。もちろん奏多を悟られないようにするためもあるが、俺は奏多に頼んである男に連絡をつけてもらっていた。

『お話があります。事務所の他の方々には秘密にしていつもの場所に三十分後に来てください。』

そう送った相手は奏多にとって最も親しかった人。

「本当にマネージャーさんに伝えるんですか…?」

「そうするしかないんだ。お前にとって最も親しいマネージャーを味方にしなければあの

事務所に入るのは厳しいだろう。」

そう、奏多のマネージャーだ。いつもの場所は奏多の家。迎えに言ってもらうときはいつもの場所と言っていたそうだからきっとマネージャーならわかるだろう。俺たちはその家へばれずに向かうためなるべく隠れながら歩いた。

::

奏多の家。それは世間が思うような家ではなく、ありふれた家だった。一人暮らしをしていると言っていた割には少し広いが特に装飾品はなく、普通台所やリビングのテレビと机、そしてソファーがあったりと一般的で、ファンが思っているようなキラキラな大豪邸とはかけ離れているだろう。少し違うのはクローゼットの中身で、恐らくプライベート用の地味なズボンやスカートと共にステージできるようなふわふわとした衣装まであった。そんな奏多の家で俺たちは待っていた。

「ちゃんときてくれるでしょうか。」

「きてもらうしかないさ。」

約束の時間までまだ十分近くある。ちゃんときてくれるか、そして事務所の人間に何も言っていないか、その二つが気になっていた。ただ、今は待つしかない。

「奏多にはマネージャーに会って逃げ出した理由を言ってもらう。納得してもらったらマネージャーから事務所に連絡して二人で事務所のお偉いさんとケリをつけるんだぞ。」

「え、二人でなんですか。輝さんは来ないんですか…。」

「当たり前だ。そんな知らない奴と一緒に行けるはずがないだろう。それこそ問題になってしまう。」

俺は最初からこうすることに決めていた。俺と奏多には接点はない。いや、なかった。それが不意に出会っただけだ。きっとこの縁が切れてしまえばもう二度とあんな偶然はないだろう。

「話をつけて、これからは俺のことを忘れてアイドルとして再び生きるんだ。」

そう言った俺は少しの間だったが奏多と過ごした日々をふと思い出した。

「僕はここまでしてもらったのに、それじゃあ何にも返せないじゃないですかっ。」

奏多がそう言ってすぐ玄関からチャイムの音がなった。マネージャーが来てくれたんだろう。鍵はかけてあるがマネージャーは合鍵があるらしい。しかし、自ら開ける様子はない。しっかり一人で来てくれているみたいだ。

「どうやら来たみたいだ。今からちゃんとマネージャーに話して納得させるんだぞ。」

「っ…僕は…。」

俺は扉を開けマネージャー一人を中に入れた。

::

「そういうことだったんですか…。」

俺はマネージャーになぜ逃げ出したか、どこで匿っていたか、どうやってここまできたか、全てを話した。

「申し訳ございません。」

「いや、輝さん。君を責めるつもりはない。感謝したいぐらいだ。」

奏多のマネージャー 平坂ひらさかさんは温厚な人だった。

「私はむしろ遥ちゃんの悩みに少し気づいても助けれなっかたからね。」

「き、気づいていたんですかっ。」

今まで黙って来た奏多が口を開ける。

「マネージャーさん、奏多を頼めますか。」

「そうですね…。」

沈黙が訪れる。奏多は何か言いたげに、しかし何も出ないのか落ち着いていない様子。マネージャーの答えを俺は待っていた。

「私の答えは遥ちゃんに判断を委ねましょう。」

「えっ。」

奏多が驚く。奏多がなぜこんなにも動揺しているのかを俺は知っていた。

「僕は…輝さんがついて来てくれるなら…。」

「それはダメだって言っただろう!」

「でも、そんなの僕は嫌です。そんなの輝さんが報われないじゃないですか!」

奏多は叫ぶように言った。マネージャーはそれを見守るように見ていた。奏多は涙ぐみ俺を見つめている。納得してくれないなら突き放して忘れて欲しかった。

「お前が望んでいるようにするのに俺は邪魔なんだ。」

「でも…でも…。」

「俺だって奏多と一緒にいたいよ!」

だけど俺はありのままを俺で答えていた。

「俺だって奏多と一緒にいたい、少し前のように同じ家で過ごしたいって思ってる!」

二人で過ごした日々は少ないかもしれない。それでもその時間でどれほど俺は惹かれていたのか、思いは募っている。

「輝、さん…。」

確かな思いを俺は伝えた。

「もう一緒にはいれない。だから一人のファンとして、送り出させてくれないか…。」

奏多の目には涙が溢れていた。俺も涙ぐんでいたかもしれない。だからこそ俺は最後の言葉を紡ぐ。

「もう一度、今度はステージで立つ姿を見させてくれ。」

言ってしまった。きっともう今のような関係で会うことはできない。

悔いしかない。でもこれで後悔はない。

「なんですかそれ…輝さんはとってもずるい人です。今日まではあんなに素っ気なかったのに、最後の最後でそれですか…。」

奏多は少し笑ったかのように

そして覚悟したかのようだった

「…わかりました。」

涙を拭う。

「今だけは、一人のファンのために僕はステージに戻ろうと思います。」

さようなら。

::

「私は輝さんが羨ましいです。あんなに信頼してもらえるなんて。」

「やめてください。俺は、もうただのファンの一人です。」

ここから先はどうなるのか俺にはわからない。でも奏多ならやってくれると信じている。そう確信があった。

「お願いします。奏多を連れてってあげてください。さよならはもう言いましたから。」

「わかりました。遥ちゃん、行きましょうか。」

「はい。」

奏多のその返事にはもう悔いはなさそうだった。玄関を出て事務所に行く二人を見送る。遠くに行ってしまう。二度と触れられない場所へ戻ってしまう。そう思っているとき。

「やっぱり、僕はさよならは言いません。また会えると信じてますから。」

奏多は振り返って言った。きっとこれが言葉を伝える最後のチャンス。だから

「俺は、奏多のこと、好きだからな!」

こう言って二人を送った。

::*

「えー…これで終わりなの?」

「まだ残っているだろ。」

五章を読み終わって、優のつまらなそうな話を聞く。

「でもあと少ししかないじゃん。」

「まあまあ、僕もなんというか、素直に言うと雑かなとも思ったけど話としてはよかったと思ってるよ。」

「大地のフォローは心に刺さるな…。」

まあいい。むしろこれぐらいがいい。


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