↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼は振り向かない【完結済】  作者: 月影野里
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/47

43:飛び火

「インフルエンザだったんだって? 辛かったね……」

平野は久しぶりに図書館で丹生を見かけ、慌てて話しかけてきた。

「うん、あ、でももう大丈夫、ありがと」

丹生は織部がまとめてくれたノートを見ながら遅れを取り戻そうと勉強中だ。

「水無瀬くんも、ここんとこ休みがちなんだよ…大丈夫かなぁ…」

「え、学校来てないの?」

「寮で寝込んでるから、僕がたまに食事運んでる」

平野は織部の力になれた喜びが隠しきれず、どこか誇らしげな顔をしていた。

「そっかぁ こう寒くっちゃ、みんな調子崩すよね…」


織部は会うはずのない人に病院で出会ったあの日から、精神が安定していない。

学校や寮でも、まわりの人間との何気ない会話をこなすことすら

難しい日が出てきた。

冬休みの間に、いつもの自分を取り戻そうと急ぎ過ぎたあまり、

ここにきて気力が徐々に削り取られていたことに気づいた格好だ。

だが来週の祝日前にはすぐに期末考査だ。それだけはこなさねばならない。




「2月の23日ですか…それなら大丈夫です」

「では、お父様にもそのように伝えておきます」

「あ、輝虎さんも同席してくれるんですか…?」

「はい、そのつもりです」

「良かった……じゃ、また」

『いよいよ、あの男に会わなければならないか… 体力つけなきゃな…』

織部はベッドから起き上がった途端、頭が重くて再びベッドに沈んでしまったが、

なんとか起き上がると購買に向かった。


学校までの5分の距離を歩くのもやっとなほど、体力は衰えていた。

黒のスウェットの上下にフードを被っていたため、怪しい侵入者のようだったが、

丹生にはすぐ織部だと分かった。

「織部っ」

「……リンシ。 なんか…パン残ってないか」

「いつも食べてるツナパンは……あぁ…売り切れてる」

リンシの動きはいつものように機敏で、

もう見た目はいつものリンシに戻っているようだった。

「じゃぁ……いいや おにぎりで」

「ツナのおにぎりね、OK」

丹生は織部から小銭をもらうとテキパキと買い物を済ませ、

おにぎりを織部に渡した。

「サンキュ じゃぁな」

丹生は、すぐに寮に戻ろうとする織部の袖を掴み、

「ちょっと待ちな。一緒に食べようよ」と言った。


「…俺、今日休んでんだよ、寮に帰らせろ」

「わかった。じゃぁ私も寮に行く!」

「ばか、着いてくんな」

織部は丹生の両肩を掴んで半回転させると、丹生を見送るように手を上げた。

「食べるもん食べて、しっかりしてよね!!」

織部は丹生の大声に振り向くこともなく、

「わかった」とでも言うように手だけ振ってみせた。   でも思い直した。

織部は一度だけ振り向き、少しだけがんばって声に力を入れ、

「またな」と言った。

丹生がその声に振り返ったときには、織部の後ろ姿はもう小さくなっていた。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!

もし少しでも「続きが気になる」と思ってくださいましたら、ページ下部にある

【☆☆☆☆☆】をタップして評価や、ブックマーク登録などをしていただけると、

今後の執筆の大きな励みになります!星1つ、応援の気持ちだけでも大変嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。