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狼は振り向かない【完結済】  作者: 月影野里
第二章

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35/47

35:蝶とバタフライ

二学期の中間・期末考査も、織部と丹生は無事に乗り切った。

もう1年生の誰もがどう頑張っても3位以下しか狙えそうもないと思い始めている。

嫉妬深い連中は、織部が一つ年上であることをアドバンテージだとし、

自己を正当化している様子だ。丹生に関してはそこに派手な見た目も加わり、

理不尽な口撃が裏では展開されている。だが二人は今じゃない先を見据えており、

丹生もここにきてようやく、その手の連中の言い草をくだらぬ雑音と思えるように

なっていた。丹生が今、我慢できなかったのは別のことだ。



「何でお前がここに居るんだよ」

年末に帰るところのない丹生は、ミナコの部屋で年を越そうと考えていた。

だがミナコの下宿先に行くと、ミナコの悲鳴が聞こえた。慌てて部屋に向かうと、

前に施設で丹生のピアスに難癖をつけた少年がいたのである。


「逆に何でリンシがここに居んだよ、帰れよ優等生」

少年はミナコに覆い被さっていた。

「その手に持ってるもん、寄越しな」

少年はドクロの指輪を嵌めた手に、ブランドのバッグを持っていた。

ミナコは畳にひっくり返っていたが、思いっきり手を伸ばして

バッグを奪い返そうとしていた。

「それはお世話になった劇団の人から貰った物なのよ。売って金にする気でしょっ

 ぜったいダメよ」

「っるせぇな、借りるだけだって言ってんだろが」

少年は屈んだままミナコに怒鳴りつけた。

強引な少年は思い通りに事が運ばないことで怒りが増幅し、立ち上がると丹生にも

「出てけっ」と言って、持っていたハンドバッグを振り回した。


なんとなく状況の読めた丹生は、脱いだコートで少年の顔をくるみ、

のけぞらせた。

少年が慌てた隙に、手にしていたハンドバッグを素早く取り上げる。すると少年は

コートから急いで顔を出し、丹生の頬を一発殴った。

丹生はひっくり返ったが、すぐに起き上がる。

そして少年の背後に回って両腕を掴むと少年の背中を膝で思いっきり蹴り上げた。

これが強烈だったためか、とうとう少年はポケットからバタフライナイフを取り

出して、振り向きざまに丹生の腹部を刺してしまった。


「リンシ!!!!」


ミナコが思わず叫んだ。そんな声を出せば誰かがやってきてしまう。

慌てた少年はハンドバッグを再び奪うと、急いで外階段を降りて行った。


丹生の腹部にナイフは刺さったままである。丹生は立っていることができず、

ゆっくりと畳に手をつく。次第に目の前が暗くなってきたのか、

手を左右に動かしてミナコを探しているようだった。ミナコは急いで救急車を

呼ぼうとしていたが、指が震えてなかなか番号が押せない状態だった。


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