↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
70/72

元木 20 文化祭準備

元木はこれで終わりです。

 9月7日月曜日の放課後、生徒会と各クラスの文化祭実行委員を3年5組の教室に集めた。

 文化祭実行委員と生徒会メンバーの顔合わせ、そしてアンケートを取るためだ。

 文化祭実行委員長の神崎が相変わらず堅苦しい挨拶を済ませたあと、自分がゴリラの全力ものまねで場を和ませた。それから文化祭への意気込みや過去の文化祭から参考にするべきことなどを語り、最後にアンケート。といっても本当に重要なのは最後のこの質問だけだが。


今年の文化祭のイメージカラーを以下の選択肢から選んでください。


·血のような赤色

·真っ青

·風邪の治りかけに出る鼻水のような黄色

·長年放置された池のような緑色

·ドエロいピンク色

·長時間プールに入っていたときの唇のような紫色

·犬のフンのような茶色

·黒光りしているゴキブリのような黒色

·失神で目の前が真っ白になったときのような白色

·昭和中期に製造された5円玉のような金色

·悔しくて悔しくてしょうがない銀メダルのような銀色

·爽やかなオレンジ色


 これは生徒会長という立場を利用した俺の自己満足だ。

 こんな馬鹿なアンケートを取れば神崎に文句を言われるだろうが、イメージカラーをオレンジ色にすること自体への苦言はおそらくないだろう。そこさえ反対されなければ成功だ。


 皆がクスクス笑いながらアンケート用紙を埋めていく。

 書き終えた者から教室を出ていくが、神崎がプリントを渡してきた際「オレンジ色にしたいならもっとマシな方法を取れ!」と小声で強く責められた。もしかしたら明日も小言を言われるかもしれないが、そんなことは全然構わない。

 次々生徒が教室から出ていく中、何故か速攻で終わらせそうな常盤が最後に残った。

 ……これはまた質問ラッシュか?

 しかし今回は全く問題ない。


「はい会長」

「常盤、遅かったな。てっきりお前のことだから、雑に書いてさっさと帰るもんだと思っていたんだが」

「そうしようと思ったんすけど、少し気になることがあったんですよ」


 やはりな。


「なんだ?」

「この最後のイメージカラーのやつ、会長の仕業ですよね?」

「そうだ。なんで俺だと思ったんだ?」

「書いてる最中、副会長が隣でクスクス笑ってたんで、考えた本人ならあんな反応しないんじゃないかと。あと神崎って人のことはよく知らないですけど、自己紹介のとき真面目そうに見えたんでたぶん会長かなーと……」

「そうか」


 これは別に隠す程のことでもないがな。


「オレンジ色がいいなら会長が勝手に決めればよかったんじゃないすか?」

「それでもよかったんだが一応カモフラージュ的な感じだ。ああすればゴリラのものまねをしたふざけた生徒会長がふざけた選択肢を用意したという印象が残るだろう。結果俺が何故オレンジ色を希望していたのかを疑問に思う生徒は少ないはずだ。それに疑問に思ったとしても、俺がただ単にオレンジ色が好きなだけなんじゃないかと思うだろうからな」

「ってことは会長がオレンジ色が好きだからってわけじゃないんすよね? なんでオレンジ色なんすか?」


 やはり常盤はしつこいな。

 しかしそう聞いてくるということは、常盤は全く気付いていないということだ。逆に安心できたな。


「ただの俺の自己満足のためだ。……俺は今年の文化祭を佐々木のための文化祭にしたいと思っている。俺が会長の今年しかチャンスはない。だがそんなことを他の生徒や教師には知られたくないんだ。生徒会長が1人の生徒を依怙贔屓するなど本来あってはならないからな」


 こう言っておけば真相に絶対気付けない。

 今回のカモフラージュは完璧だからな。


「なんで佐々木のための文化祭だとオレンジ色なんすか?」

「それはノーヒントだ」


 オレンジ色の百合の花言葉は『愉快』だ。


「ええ……。それって佐々木本人は知ってるんですか?」

「教えてないから知らないだろう」


 佐々木のために今年は『愉快』な文化祭にする。

 それが裏テーマだ。

 そしてバレても構わない裏テーマだ。


「なら意味ないんじゃ……」

「仮に伝わらなかったとしても構わん。さっきも言ったが、ただの俺の自己満足のためだ」


 そういう体(てい)をカモフラージュで用意した。

 俺の自己満足という点は本当だがな。


「でも佐々木って生徒会の仕事で文化祭中忙しいですよね?」

「演劇部の劇がおそらく午前と午後にあるから、そのどちらかの間と午後に抜ける時間帯はフリーにするつもりだ。それにお前らにもそれぞれフリーになる時間を用意するように予定を組むからな。それなら問題ないだろう」


 勿論神崎にも。沼下に頼まれたからな。


「まぁ文化祭実行委員もいるし、それはなんとかなるでしょ。それで佐々木には会長が出る劇を見てもらうってことですか?」

「そうだ、佐々木に楽しんでほしくてな。俺が出る劇も含めて佐々木に友人たちと見て笑ってもらいたいんだ」


 これは本音だ。

 そして俺自身も演劇部の助っ人を楽しむ。


「……そうですか」

「それと俺が抜ける時間は常盤が俺の代わりをやってくれ」

「え? 副会長じゃなくてですか?」

「そうだ。あいつも俺も文化祭で引退だからな。そして俺は次の生徒会長はお前にやってほしいと思っている」


 というより他がいない。

 ただの消去法だ。


「はぁ!! 私ですか!? いやいや、そんなガラじゃないですよ私……」

「俺がそう思っているだけだ。常盤がしたいようにすればいい」

「……そすか」

「他になにかあるか?」

「……アンケート結果見たいんすけど」


 それくらいは別にいいか。

 どうせ集計などは生徒会の仕事だ。


「いいぞ」

「……会長、ピンク選んだやついました」

「なに! 本当か!?」


 2年2組高橋友彦


 演劇部のあいつか!

 あのふざけた劇を考えただけはあるな!


「ハハハ、大したやつだ! しっかり名前も書いてあるな。ハハハハハ!」

「…………」


 最後に常盤が教室を出ていった。


 これで今年の文化祭のイメージカラーはオレンジ色になるだろう。








































 オレンジ色は美冬先輩の好きな色だ。

 ただそれだけだ。

 我ながら心底本当にくだらない理由だ。


 美冬先輩·秋陽菜先輩·佐々木·俺の4人でお題スゴロクをやったとき、美冬先輩が


『自己紹介タイム

 好きな色、好きな飲み物

 趣味、苦手な教科

 全部言えたら+1』


 このマスを踏み、オレンジ色が好きだということが判明した。ちなみに好きな飲み物はココア、趣味はドラマ鑑賞、苦手な教科は体育だ。

 その情報を知り、自分が生徒会長になった時点で文化祭のイメージカラーをオレンジ色にすることは決めていた。しかし怪しまれないよう念入りにカモフラージュの策を考える必要があったが、絶妙な案を見つけた。それが百合の花言葉だ。

 美冬先輩の好きな色がオレンジ色だということを佐々木は覚えているかもしれないが、もしそこを繋げ聞いてこようものならカモフラージュ用の答えを佐々木本人に伝える。

 勿論他の生徒会メンバーが聞いてきた場合もこの答えを返す。実際常盤は誤魔化せた。常盤が佐々木に話すかどうかはわからないが、それは別に構わない。

 オレンジ色の百合の花言葉は『愉快』。そして今回の文化祭を佐々木のために『愉快』な文化祭にする。これはそもそも本当のことだ。完璧なカモフラージュの理由はそこにある。だから真相は絶対にバレない。

 美冬先輩の好きな色がオレンジ色だということをもしかしたら茜は知っているかもしれないが、あいつには既にこちらの気持ちがバレているのでスルーでいい。

 それに知っているとも限らない。実際美冬先輩はオレンジ色の私物などはあまり持っていなかった。



 後日、今年の文化祭のイメージカラーがオレンジ色に決定した。

 しかし文化祭の準備はまだまだここからが本番。


 生徒会と文化祭実行委員共催による出し物を決める。神崎の案でクイズ大会に決まった。クイズの問題は知識や学力で差が付かない問題にするということで、邦南高校についての問題を皆で考える。自分が「校長先生と教頭先生も巻き込んではどうか?」と提案するとそれも採用され、更に他の教師も巻き込むことになった。


 ということで、校長先生と教頭先生にクイズ大会への参加をお願いしにいく。快く引き受けてもらえた。


 2年4組と2年5組がビックリハウスなる出し物をするようで、去年の夏にバラ撒かれたゴキブリのおもちゃがほしいと言ってきた。なので真島に事情を話しゴキブリのおもちゃを20個借り、それをビックリハウスの代表者へ貸し出した。おまけに真島から何故かビリビリペンも渡されたので、それも貸し出す。これも父親からのプレゼントらしい。


 演劇部の頼みで3本目の劇の最中に武道場へ教師たちを近付けないよう、クイズ大会担当の文化祭実行委員へ頼み込む。交換条件として料理部のお菓子を提示されたので、その条件を呑んで引き受けてもらった。


 なので次は料理部。文化祭当日にお菓子を用意してほしいと頼み込む。こちらは同じクラスの料理部員が快く引き受けてくれた。


 沼下の要望どおり、神崎のフリー時間を沼下のマジックショーの時間に被せる。神崎に「文化祭実行委員長なのだから自由に回る時間など必要ない」と言われたが、真面目な態度のフリをしつつ「お前も生徒の1人なのだから文化祭を楽しまないと駄目だ」と返しフリーの時間を与えた。それぞれの交代時間は俺と文化祭副委員長の浅葱が決めているので、シフト操作は容易だ。


 体育館でパントマイムをやりたいと個人での要望があった。吹奏楽部などが準備をする隙間時間であればねじ込めるので、そのタイミングならと許可を出した。


 俺自身も演劇部と稽古に励む。3本目の劇終了後には馬鹿騒ぎをする予定なので、それも非常に楽しみだ。


 その他にもいろいろと準備を進めていく。



 そんなこんなで明日はいよいよ文化祭。

 きっと『愉快』な文化祭になるだろう。

次のepで完結になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。