元木 18 5/31 日 2
ep.18藤澤3の元木サイド的な感じ+αです。
「よし、まずは各々考えてきたお題を渡した紙に書き、4つ折りにしてからこの箱に入れてくれ」
それぞれが紙にお題を書いていく。
紙の大きさはイカサマしやすいよう少し小さめにした。
隣の茜をチラッと見ると『鎮圧』『賃貸』『鎮魂』などを書き、紙を4つ折りにしてどんどん箱の中へ入れていく。
そしてこちらの視線に気付いた茜もウインクをしてきた。腹立つウインクだが「イカサマよろしく〜」の目配せか。
イカサマ用のお題の紙は先程の休憩中に渡された。当然紙は今書いているものと同じ。既に4つ折り状態で隠し持っている。連続で引かせると怪しまれる可能性もあるので、イカサマは菱川と常盤の1回目のみということに決まった。
「最初はコハルンからね〜」
「はい」
「菱川がお題を1枚引いたら自分で見ずに俺に渡してくれ。渡したら菱川はドアの方を向く。他の人たちが確認をしてホワイトボードにお題を大きく書いておくので、合図をしたら菱川が振り向いてお題を確認。その4文字のお題の言葉を2回言ったあと、上2文字を2回、下2文字を2回言う。そしてそれをもう一度繰り返す。ただしお題を確認したらすぐに言い始めること。それと大きな声でハッキリと早く言うこと。ゆっくり言うのは駄目だからな。よし、始めるか。菱川1枚引いてくれ」
菱川が引いた紙を渡してきた。ホワイトボードから離れていく菱川のことを皆が見ている瞬間、バレないよう紙をすり替える。なにも反応がなかったので気付かれなかったようだ。
紙を広げお題を確認する。勿論『ワクチン』だ。
藤澤が驚き、周りの様子をキョロキョロ窺い始めた。こんなお題があるとは想定していなかったのだろう。
茜は口元に人差し指を立て「シー」と、常盤は笑うのを堪え、千葉は無反応で明後日の方向を見ている。
さらに茜と常盤がゲームを中断されないよう藤澤を制止させた。こんなときに限って阿吽の呼吸だ。考案者は茜で俺も共犯だが、常盤もノリノリか。
しかし菱川が気付いて言わない可能性もある。その場合はどうなるんだ?
「3、2、1、ドン!」
『ワクチン』
「ワクチンワクチン
ワクワクチンチン
ワクチンワクチン
ワクワクチンチって
なんなんですかこのお題!!!!!」
心配無用だったか。
すまん菱川。
そしてお前には悪いが、今のはかなり面白かった。
「アハハハハ!! コハルン最後まで言わないと〜」
「あっはっはっは! どうした菱川ー!」
茜と常盤が大笑いし始めた。
正直自分も笑い出したかったが、それでは菱川があまりにも可哀想なので笑うのは堪えた。藤澤はまだしも千葉も無反応。どちらも自分と同じ考えかもしれない。ただし俺は言わせた犯人ではあるが。
「ううーーー…………」
菱川が恥ずかしさに耐えられなくなり縮こまってしまった。
好きな相手の藤澤が目の前にいるにも拘らず、大きな声でハッキリと言ったのだからそうなるよな。
本当にすまん菱川。
「会長、いいんですかこれ止めなくて……」
「菊池の我儘だ。俺は知らん」
俺のせいだが知らん。
「もしかして最初からこういうお題があるってわかってたんですか?」
「ああ」
最初からではないがな。
そして『ワクチン』は箱の中のお題ですらない。
「アハハハハハ!!」
「あっはっはっは!!」
お前ら長くないか?
「……これ僕と千葉先輩もやるんですか?」
「たぶん千葉はやらんだろ。というより常盤がやらせないだろうな」
「僕はやるんですね……」
「ああ」
お前はクジ運次第だがな。
「はい、次リョーの番ねー」
「……これ僕もやらなきゃ駄目ですか?」
「当たり前だ藤澤。菱川もやったんだからお前もやれ。先輩命令だ」
軽くパワハラだな。
流すが。
「……わかりました」
藤澤が引いた紙を渡してきた。
『テリーヌ』セーフだったか。
茜と常盤が興味をなくしている。
お前ら……。
「3、2、1、ハイ!」
掛け声を変えてみた。ただの気分だ。
『テリーヌ』
「テリーヌテリーヌ
テリテリヌーヌー
テリーヌテリーヌ
テリテリヌーヌー」
普通にミスったな。
「はいダメーー、リョー失敗ー」
興味なさそうだったくせに、判定はきっちりするんだな。
「藤澤、正しくは
テリーヌテリーヌ
テリテリーヌーヌ
テリーヌテリーヌ
テリテリーヌーヌ、
こうだ」
「テ、テリテリーヌーヌ……?」
「そうだ。テリテリーヌーヌだ」
「フフ、テリテリーヌーヌ……。フフフ」
ん? どうした千葉?
「普通のお題で失敗してんじゃん藤澤。じゃ、次私やるわ」
常盤が引いた紙を渡してきた。当然これもすり替える。意外とバレないものだ。
「3、2、1、ゴー!」
『チンピラ』
「チンピラチンピラ
チンチンピラピラ
チンピラチンピラ
チンチンピラピラ。余裕だわ」
やはりな。こんなの常盤には効果ないだろ。
「アハハハ! トッキー成功〜」
「常盤先輩、よく簡単に言えますね……」
「こういうのは恥ずかしがったら負けだ。ていうかお前男子のくせに回避しやがって」
「クジはたまたまでしょう!」
常盤と菱川に命中したのは必然だがな。
「フフフフフ……」
千葉がまだ笑っている。
何故そんなに笑っているんだ?
「夏実、テリテリーヌーヌがそんなに面白いのか?」
テリテリーヌーヌ? そんなことでか?
「や、やめて、フフフフフ……」
「次の千葉は……」
「フフフフフ……」
「ずっと笑っているな」
謎だ。
「テリテリーヌーヌ」
常盤が千葉の耳元で囁いた。
「フフフフフフ、や、やめて……。フフフフフ……」
「……これは駄目だな」
だが……いや、考え過ぎか……。
「いやいや会長、元々夏実にはさせませんよ。こんなゲームこの子には無理でしょ」
やはり常盤が庇ったか。
常盤はあまり千葉のことをイジったりからかったりしないからな。高校からの仲らしいが、常盤の中では千葉はそういうポジションなのだろう。今しがたからかってはいたが、これはセーフの範疇か。逆にこのやり方ではからかい続けるかもしれない。
「えー、なっちゃんがやってるとこ見たいなー」
「どっちにしろ笑ってるから無理じゃないか?」
「えー……」
「ほら、次副会長。さっさとやってください」
「はーい」
さて、茜の番だ。
こいつは「引いたら言うよ。引いたらね」と言っていて、俺はそれを聞いたときからどうにも怪しいと思っていた。
だから紙を箱に入れる際「4つ折りにしてから」と指定した。手で触れたときの大きさで自分自身が書いた紙かどうかを判断できないようにするためだ。そしてこれは茜以外のイカサマも封じている。といってもおそらくそれ系のお題を書いたのは茜だけだろうが。
だが茜は「4つ折りにしてから」と聞いた瞬間も一切反応はしなかった。つまり茜のイカサマはこの方法ではない。
そして紙を入れる際、箱の中の上や横に張り付けた素振りもなかった。
ということは、イカサマ用の紙を手のひらの中に忍び込ませたまま箱の中に手を入れ、引いたと見せかけて元々持っていたその紙を俺に渡す。おそらくこの方法だろう。
しかし茜、お前のイカサマは通用しない。何故ならお前に対しても俺がイカサマをするからだ。
俺はお前の書いたお題の紙を隠し持っている。先程菱川が絶叫し全員が菱川のことを見ている隙に、箱の中から紙をいくつか回収した。その中からお前が書いた紙を判別するのは簡単だ。紙を開き、お題をわざわざ確認する必要はない。お前の紙だけは歪に折られているからだ。お前は書いては入れ、書いては入れと、他の皆よりお題を多く用意していたせいで折り方がかなり雑。といってもお前は普段から大雑把ではあるが。
お前はアホだが、イカサマやこのゲームの進行方法などを事前に決めていた。なのでこのイカサマ方法も事前に考えていたのだろうが、俺にはお見通しだ。
菱川も常盤も言ったのだから、ゲーム考案者のお前も当然言うべきだよな。
茜が渡してきた紙を、茜自身が書いたお題の紙にすり替える。さて、お題はなにかな? 紙を開き確認する。
『ちんちん』
こいつ、本当にこいつは…………。
しかしこれは俺が回収できたことで茜以外の被害を抑えられた。むしろ好都合だったか。
藤澤は呆れ、常盤は小さく鼻で笑った。
「自業自得でしょ」
「だな」
すり替えはしたがな。
「3、2、1、0!」
『ちんちん』
「ちんちんちんちん
ちんちんちんちん
ちんちんちんちん
ちんちんちんちんって、
これアタシのやないかーい!!」
言ったな。躊躇なく言ったな。
当然俺のことを疑うが、この場では絶対追及されない。
そして菱川と常盤に言わせたからにはきっちり約束も守ってもらう。
「………………」
「………………」
笑おうかとも思ったが、藤澤が黙っているので投げキッスのときと同様ノーリアクションで辱めることにした。
「……流石っす菊池副会長殿。尊敬しますわ」
常盤がイジった。
それはそうだな。常盤はイジるか。
「こんなんで尊敬されても嬉しくないんですけどー! それにちんちんって犬にやるやつの方だからねー!」
嘘つけ。
「次は俺だな」
菱川と常盤と茜に言わせたのであれば、俺も言うべきだろう。茜もその方が納得する。ということで敢えて茜の歪んだ紙を選び茜に渡す。
「3、2、1、いいよー」
『賃金』
「ちんぎんちんぎん
ちんちんぎんぎん
ちんぎんちんぎん
ちんちんぎんぎん」
言うのは容易い。
「アハハハハハハハハハハハハ!!」
「あっはっはっはっはっはっは!!」
笑え笑え。ノーリアクションより余程マシだ。
「次は菱川だが……」
「私こんなのやりません!! 続けるなら帰ります!!」
それはそうだ。
「まぁ待て菱川。次から変なお題はなしにしよう」
「えー、このまま続けようよー」
「僕も嫌ですよ!」
「流石にこれ以上はもういいだろう」
「……わかったよぉ。ごめんよコハルン」
そもそもお前のせいだろ。菱川のことを慰めてはいるが、このゲームの裏側を知っている俺からすればお前はただのマッチポンプ変態女だ。
そしてこんな中でも千葉は笑っている。
うーん……これはどうだろうな……。
とりあえずゲームはお題を限定して続けるか。
「お題を確認して変なお題だったら引き直すということで再開しないか? 普通のお題で言い難いものもあるはずだ。俺はそういうお題を書いたからな」
「僕もです」
「私も」
「私もでーす」
「アタシはー……」
お前のお題は全部それ系だろ。
「菱川、それでいいか?」
「……それなら、はい……」
菱川が引いた紙を渡してきた。
『運賃』
「菱川、引き直しだ」
『賃上げ』
またか。
「もう一度だ」
『賃貸』
おいおい、こんなに引くならイカサマする必要なかったんじゃないか?
「菱川、そんなに言いたいのか……!」
「なんでですか! 会長今のセクハラです!!」
う……悪ふざけが過ぎたか……。
「す、すまん菱川、悪かった……」
「菊池先輩、どんだけ書いてるんですか……」
「この人変態だからな」
常盤、正解。
「コハルンアタシのこと好き過ぎでしょ」
「嫌いです!!」
「イヤーー、嫌わないでーー!」
お前、自分でやっておいて……。
「いいから引き直せ菱川」
「……」
お題は『矢沢屋』菱川は言えずに失敗。
次の藤澤は『ガジェット』これも言えずに失敗。
常盤も『生米』を失敗し藤澤に八つ当たり。
「次アタシー」
茜が引いた紙を渡してきた。
『沈殿』
お前も結局自分で引くのかよ……。
しかし常盤がクスクス笑いながらそのままホワイトボードにお題を書き始めた。
……別にいいか。止める必要もない。菱川も藤澤もスルーなら俺もそうする。
「3、2、1、ヘイ!」
『沈殿』
「ちんでんちんでん
ちんちんでんでん
ちんでんちんでん
ちんちんでんでんって
これもアタシのやないかーい!! ってなんで引き直しじゃないんだよーー!」
「あっはっはっはっは!」
「ハハハハハ!」
常盤が笑ったので俺も笑うことにした。
これはこれで面白い、滑稽だ。
「自分が書いたお題なんだから責任持ってください!」
正論だな。
「コハルンまだ怒ってるのー?」
「当たり前です!!」
「次コーイチー」
「ああ」
俺は『生麦』を成功。
そして3巡目がスタート。
菱川は『和沢屋』を失敗。
藤澤は『矢沢屋』を失敗。
「矢沢屋は2回目だな」
「まー、そういうこともあるでしょ〜」
千葉を見ると笑い状態が治っている。
やらせてみるか。
「千葉はどうする? やれるか?」
「……はい」
「よし、千葉引いてくれ」
千葉が引いた紙を渡してきた。『リリース』だが、常盤が勝手に『テリーヌ』をホワイトボードに書いた。
……別にいいか。
「3、2、1、デン!」
『テリーヌ』
「テリーヌテリーヌ
テリテリーヌーヌ、フフフ
テ、テリテリ、ヌーヌ、フフフフフ」
駄目だったか。
「テリテリーヌーヌってそんなに面白いか?」
「いえ、私はそこまでは……」
「僕もよくわからないです……」
だよな。
「なんでか夏実にはハマってるんだよな」
「なっちゃんを笑わせたいときはこれ耳元で囁やけばいいってことだね」
千葉がまた椅子に座り、口元を押さえ笑い始めた。
……しかしやはり気になる。
「次トッキーだよ」
常盤が引いた紙を渡してきた。『鎮圧』だったので引き直し『和沢屋』を失敗。
次の茜も『キツツキ』を失敗。今度は引かなかったか。
最後は俺が『矢沢屋』を成功させゲームは終了。
「今日はここまでだな。片付けは俺がやっておく。よし、解散!」
女子4人が先に生徒会室を出ていき、残った藤澤にノックをしろと注意をする。その後藤澤も帰っていった。
…………さて、お題を全部確認するか。
箱をひっくり返し、誰がなにを書いたか確認する。少人数なので筆跡でわかるはずだ。
まず茜。紙の折り方でも文字の汚さでもわかる。というよりお題そのものでわかる。
『ワクチン』『チンピラ』『たんぽぽ』この3枚はイカサマ用。その他は『ちんちん』『運賃』『鎮圧』『賃金』『沈殿』『賃上げ』『鎮魂』『鎮痛』『沈黙』『陳列』。普段であればあいつが書けなさそうな漢字もある。わざわざ覚えたのか? そんな労力は普段の勉強に回せ。
次にわかりやすいのは菱川。少し文字が小さいからだ。
『キツツキ』『生麦』『生米』。3枚しかないが、全部引かれたお題だ。
常盤も比較的わかりやすい。菱川とは逆に少し字が大きく、漢字のはらい部分が少し長い。
『矢沢屋』『矢沢屋』『矢沢屋』『和沢屋』『和沢屋』。
こいつ矢沢屋と和沢屋だけか……。
俺は『ラディッシュ』『ガジェット』『ドローン』『リリース』『矢沢屋』『和沢屋』の6枚。
残ったのは藤澤と千葉。文字の横棒が若干斜めなのが藤澤、斜めになっていないのが千葉。生徒会日誌に書かれている字がそうだからだ。
まず藤澤。
『矢沢屋』『ウインク』『ウイング』『ウィメンズ』の4枚。
最後に千葉。
『矢沢屋』『キツツキ』『パターン』『テリーヌ』の4枚。『キツツキ』は菱川と同じか。
……ん?『テリーヌ』?
あいつ自分で考えたお題であんなに笑っていたのか?
……これはやはり怪しいな。
お題の紙は持ち帰って捨てることにした。
これで俺以外は詮索できない。
帰ろうとしているとドアがノックされた。
一瞬、茜がイカサマについて問い詰めるために戻ってきたかと思ったが、あいつであればノックをするわけがない。誰だ?
ガチャ
生徒会室のドアが開き、入ってきたのは
……千葉か。
「どうした千葉?」
「……忘れ物しちゃったので」
千葉が隅の椅子へ歩いていき、その上に置いてある小説をカバンの中に仕舞った。
すぐに帰るかと思ったが、こちらをじっと見ながら口を開いた。
「……水曜日、生徒会室へ入ってきた私になんで佐々木君が登校してるか聞いたんですか?」
その件か。
となると小説を置いていったのはわざとか?
しかしその質問だけならなにも問題はない。
「あれはただの確認だ。常盤に言ったのが本当で、俺は佐々木の欠席を知っていたんだ。朝職員室でたまたま聞いてな。紛らわしくてすまん」
「……そうですか」
「用件はそれだけか?」
「はい」
ならこちらも聞いてみるか。
丁度千葉と2人きりだ。
「俺からも1つ質問がある」
「なんですか?」
「『テリーヌ』はお前の書いたお題だよな?」
「……」
返事がなく相変わらず無表情だが、既に調べはついている。
「悪いな、お題は全て確認した。そして誰がなにを書いたかも全て把握済みなんだ」
「……そうですか」
「……千葉、お前比較的笑いの沸点低いよな?」
「……」
「お題スゴロクのときもけっこう笑っていたし、普段も茜がからかわれていると笑っている」
「……」
「……菱川の『ワクチン』は面白くなかったか?」
「ブフッ!!」
千葉が勢い良く吹き出した。
見てはいけない瞬間を見てしまったかもしれない……。
すまん千葉。
「フフフフフ」
そして横を向いてしゃがみ込み、顔を伏せて笑い始めた。
「フフフフフフフフフフフ」
口を抑えてはいるが、笑いが止まらない。
テリテリーヌーヌのときと同じ状態だ。
ということは……。
「千葉、お前まさか……」
「フフッ、フフフッ…………ハー、ハー…………」
落ち着くまで少し待つか……。
「……コハルンの『ワクチン』すごく面白かったんです」
そうだったか。
「でもお前は最初笑っていなかったよな?」
「はい。でも笑っちゃったらそういうので笑ってるって思われますよね? そう思われたくないから笑うの我慢してたんです。それに笑っちゃったらコハルン可哀想だと思って……。でもどうしても我慢できなくて、藤澤君の『テリーヌ』のときに笑うことにしたんです」
「つまりテリテリーヌーヌが面白いんじゃなくて……」
「はい、コハルンの『ワクチン』が面白かったんで笑ってたんです。それをテリテリーヌーヌが面白くて笑っているようみんなに勘違いさせました。そういえば会長も『ワクチン』では笑ってなかったですよね? 面白くなかったですか?」
「いや、俺も本当は笑いたかったが、千葉と同じで皆が笑ってしまうと菱川があまりにも可哀想だと思って我慢していたんだ」
俺の場合は実行犯だから余計な。
「なら私と会長同じだったんですね」
「そうだな。もしかしてそのあともずっと笑っていたのは……」
「はい、詩音の『チンピラ』と副会長の『ちん……』と会長の『賃金』も面白くてずっと笑ってました」
「なんだ、そうだったのか」
「私、ああいうので笑っちゃうキャラじゃないですよね……」
「俺は別に気にしないが、確かにお前は皆からそういう風に見られているのかもしれないな。お前自身はああいったもので笑っているとは皆から思われたくはないんだな?」
「はい。本当はお笑い番組とかも好きで、ああいうネタとかも家では笑っちゃうんです。でも家族以外の人の前で笑うのは抵抗があるから、面白いときは毎回堪えるようにしてて……」
「なら別に隠したままでもいいんじゃないか? こういう自分を見られたくないというのは誰にでもあるだろうからな。知られてもいいのであれば自分のキャラなど気にしなくてもいいが、知られたくないのであれば、無理して表に出す必要もないだろう。俺も一応生徒会長という役を演じているから少し気持ちはわかる。それと少し話は変わるが、千葉は普段寡黙だよな。だが、もっと自分の意見は出していった方がいいぞ。でないといろいろと損をすることなんかもあるからな。言いたいことがあるならどんどん言っていけ。そこはキャラなんぞ気にするな」
「……わかりました」
「にしても菱川の『ワクチン』はかなり面白かったな」
「フフフ、あれ面白かったですよね」
「ああ、菱川には悪いがとても面白かった。もしかしたら藤澤も笑うのを我慢していただけかもしれないな」
「そうですね」
逆に藤澤が大笑いしていたら菱川はかなり傷付いていたかもしれない。そこだけは不幸中の幸いだったか。
「テリテリーヌーヌと言われたときは無理に笑っているのか?」
「いえ、コハルンの『ワクチン』を脳内再生して笑ってます。インパクト強過ぎて今でも思い出すと笑えちゃいますから」
「ハハハ、そうか」
だがそれはそれで菱川の扱い酷くないか?
「それとお題スゴロクのとき、会長が空気イスしながら投げキッスしたのもとても面白かったです。私あのときも本当は笑いたかったんですよ。でもコハルンと藤澤君が笑わなかったから……」
「なんだ、そうだったのか。あれはむしろ笑ってもらった方がこちらとしては気が楽だったんたがな」
「すみません……」
「いや、謝ることはない。面白かったならそれでいい。俺は笑われても別に平気だからな。むしろノーリアクションより笑われた方がマシだ。それで、菊池の投げキッスはどうだった?」
「あれも本当は面白かったです」
「だよな。ちなみに俺はあのとき敢えて笑わなかった」
「なんでですか?」
「あいつを辱めるためだ。笑うよりダメージがデカい」
「……会長いじわるですね」
「ああ、菊池だったからな。……こんなことを聞くのもあれだが、もしかして千葉は4文字ゲームを変なお題で参加したかったか?」
「いえ、恥ずかしいし、私は笑われるのはイヤなので」
「そうか」
それは普通に嫌なんだな。
「それとお題スゴロクのときにウインクができないと言っていたが、あれは本当か?」
「……あれは嘘です。やりたくなかっただけです」
「……そうか」
それも普通に嫌だったか……。




