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元木 14 5/23·25·26 土·月·火

ここから裏側です。

 5月23日土曜日の22時過ぎ、真島からスマホに連絡がきた。


『5月31日のゴミ拾い、佐々木と俺ともう1人の友達で一緒にやっていいですか〜?』


 ゴミ拾いは3人1組、生徒会メンバーは7人なので1人あぶれる。それに佐々木には友人たちとやらせた方がいいだろう。つまり真島の頼みを聞き入れるのはむしろ都合が良い。


【サボらずきちんとゴミ拾いをするのであれば構わない】


 返信してから1分も経たずに再び連絡がきた。


『ゴミ拾いって午前で終わりますよね〜。終わったら午後から佐々木と遊んでもいいですか〜?』


【いいぞ。ゴミ拾い後は特に生徒会の仕事はない。なにして遊ぶんだ?】


『カラオケ』


【またか】


『明日もみんなでカラオケ』


【そうか】


『風呂』


 終わりのようだ。

 今週中間テストが終わったので、遊ぶ予定をどんどん組んでいるのだろう。


 ということで、佐々木には悪いがゴミ拾い後にお題スゴロクをやることにした。勿論普通バージョンをやるためだ。自分はどちらもプレイしたが、やはり普通バージョンの方が面白いので、菱川と藤澤にはそちらをプレイしてもらいたい。自分がそちらをやりたいというのもあるが。


 10分後、今度は佐々木から連絡がきた。


『再来週の日曜日にあるゴミ拾いは、終了後すぐに帰れますか?』


 真島に遊びに誘われたが、佐々木からすると終了後すぐに遊べるかはわからない。なのでそれの確認ということだろう。


【ああ、終わり次第帰って問題ない。なにか用事でもあるのか?】


 正確には生徒会日誌に活動内容を書いてもらう必要があるが、別にそれは翌日でも構わない。


『真島に誘われて遊ぶことになりました』


【そうか、よかったな。それと佐々木がいないのであれば、そのタイミングでお題スゴロクをやろうと思うんだが構わんか?】


『いいですよ、自分がいるとやり難いでしょうから。藤澤や菱川と一緒に普通バージョンを楽しんでください』


【ああ、そうだな。佐々木も友人たちと楽しんでこいよ】


『はい』


 さて、なら次は茜だ。いつお題スゴロクをやるのか茜からしつこく聞かれていたので、先に茜にだけ知らせておく。


【お題スゴロクは5月31日ゴミ拾い終了後の午後にやる】


 すぐに返信が来た。


『どっちバージョン?』


【普通バージョン】


『ササッキーは?』


【いない。ゴミ拾い後友人たちと遊ぶ】


『ササッキーから連絡あったの?』


【そうだ。本人から了承も得ている】


『了解〜』


 終わりのようだ。

 茜は文章だと簡潔なので、通話でごちゃごちゃ話すよりこっちの方が大分楽だ。



 4月25日月曜日の放課後、生徒会室で雑務をしていると演劇部部長の手塚が生徒会室に訪れた。劇の助っ人をやってほしいのだという。渡された脚本をその場で読むと、かなりふざけた内容の劇だった。こんな下品な役をやれば皆楽しんでくれるだろうと思い、引き受けることにした。下品な劇なので、場所は体育館ではなく武道場の予定ということだ。おそらく、堀江先生が演劇部と剣道部の顧問を兼任しているため武道場にしたのだろう。

 早い時期に脚本が出来上がっていたことに少し驚いたので、そのことを手塚に聞くと「秋に文化祭、年越して地域交流会、春に新入生への部活紹介。だから文化祭の準備はなるべく早く始めることにしているんだ」そう返ってきた。おまけに脚本を考えた高橋という生徒は、去年から既に構想を思い付いていたらしい。


 その後生徒会の仕事を終わらせると、茜からなにか話があると言われ生徒会室に残された。


「それで菊池、話ってなんだ?」

「2人なんだから茜でよくない?」

「いいから本題は?」


 何故か茜がニヤニヤしている。

 一体なんなんだ?


「アタシ先週の金曜日に告白されちゃったんだよね〜」


 …………は?

 エイプリルフールはとっくに過ぎたよな?


「……誰に?」

「2年生の駿河っていうサッカー部の子。アタシは全然知らない子なんだけど『ずっと可愛いと思ってました! 俺と付き合ってください!』だってさ〜!!」


 は?

 可愛い?

 こいつのどこが?

 サッカー部の駿河君とやら、君の目はアホな女子が可愛く見えてしまう自動補正でもかかっているのか?


「……罰ゲームとかドッキリじゃなくてか?」

「違うってば! アタシも最初驚いたけど、本気の告白だったもん! 『すぐに返事しなくていいんで』って言われたし!」

「で、どうしたんだ?」

「今日の昼休みに会って断ってきた。やっぱり全然知らない相手はね〜」

「話ってそれだけか?」

「いんや〜? 今のはついで」


 今のがついで?

 かなり本題っぽい自慢話に聞こえたが……。


「前から聞こうと思ってたんだけどさ〜」

「なんだ?」

「コーイチは結局ミフユン先輩に告白したの?」


 うごぁ!!!!!


「……なんの話だそれは?」


 とりあえずしらばっくれたが、何故こいつが俺の気持ちを知っているんだ!?!?!? 

 いつからバレていた!?!?!?


「誤魔化したって無駄だよ〜。他の人が気付いてたかは知らないけど、アタシにはバレバレだったからね〜」


 そういえばこいつは隈坂先輩のことも見抜いていた……。

 なんでこいつはこういったものには鋭いんだ……。


「……いつから知ってた?」


 恥ずかしがると余計からかわれそうなので、逆に堂々と会話を続けることにした。


「ん〜、1年生の5月くらい?」


 即バレかーい。


「なんでわかった?」

「態度でバレバレだよ」

「そんなにわかりやすかったか?」

「アタシだから気付いたってのもあると思うけどね。それに美冬先輩って呼んでたし」

「名前呼びは秋陽菜先輩もだろ」

「でもその2人だけじゃん。怪しさしかないよ」

「だが他の先輩たちは苗字呼びの方がいいと……」

「それでも怪しいって」

「……秋陽菜先輩の線は?」

「ヒナヒナ先輩じゃないのは見てればわかるでしょ」


 だよな。


「あと」


 まだあるのか……。


「ミフユン先輩たちが生徒会室に来なくなってから、なんかコーイチの雰囲気とか態度変わったし」

「それは生徒会長になったからだと思うんだが……」

「あ、そっか、それもあるか」

「おい……」

「まぁまぁ、とにかくバレバレだったのだよ。それで告白はしたのかなってずっと気になってたから聞いてみた」


 もう隠しても無駄なようなので、打ち明けることにした。


「……しなかった」

「なんで?」

「美冬先輩が俺のことを恋愛対象に見ていないのが明白だったからだ」

「それでも告白する人いるよ? 駿河君もそうだったし」

「それはわかっているが、俺は無理だったんだ」

「……そっか。ま、コーイチは恋愛に関してはまだまだお子様だからしょうがないか。人生長いんだからコーイチのこと好きになってくれる子も絶対いるって」

「余計なお世話だ!」

「アハハハハ!」

「……もういいよな? 帰るぞ」

「いんや、本題がまだ」


 はぁ!?

 今のがどう考えても本題だろ!!

 これ以上一体なにがあるんだ!?


「お前……まさか今のもただの前置きなのか?」

「今のを踏まえた上でお願いがあります」

「お願い? なんだ?」

「今のをトッキーにバラされたくなかったら、私のお願いを聞いてください」


 こいつ……。


「……もし聞かなかったら?」

「勿論トッキーにバラします」


 そんなことをされれば卒業するまでずっと、からかわれ、おちょくられ、イジられ続けるだろう。他のことで馬鹿にされたり笑われるのは構わないが、これだけは笑いの種にされるのは御免だ。


「……お願いってなんだ?」

「日曜日のゴミ拾いのあとにやるゲームを、お題スゴロクじゃなくてアタシが考えたゲームにしてほしいんだよね」


 それだけ?

 少し拍子抜けなんだが……。


「どんなゲームだ?」

「えーとね、お題の4文字の言葉を2回言ってから前半2文字と後半2文字を繰り返して言うの。そしてそれを2回言う」

「……黒板だったら?」

「黒板だったら、

『こくばんこくばん

 こくこくばんばん

 こくばんこくばん

 こくこくばんばん、』

 こんな感じ」

「成程な、大体わかった。早口言葉みたいなゲームだな。しかし何故こんなゲームがやりたいんだ?」

「ん〜、アタシも自分で考えたゲームやりたいなって思って」

「……このゲームをやれば秘密にするんだな?」

「します!」

「常盤だけじゃなくで誰にも内緒だからな?」

「わかってるって〜」

「なら日曜日ゴミ拾いのあとに今のゲームをやる。その代わり絶対誰にも話すなよ。もし話したらお前の恥ずかしい過去もバラすからな」

「え〜? 例えば〜?」

「祭りのとき男性が着替えている部屋に突撃したやつとか、プールに入っているとき俺や弘和の水着を脱がそうとしたやつとか」

「それ子供の頃のやつじゃん!」

「だが変態行為には変わりないだろ」

「わかったわかった、コーイチ、ここはお互い平和にいきましょ」

「お前が秘密にするなら俺も話すつもりはない」


 もう真島には話しちゃってるけどな。


「大丈夫大丈夫、アタシも秘密にするから。なんせ2年間はずっと黙って見守ってたんだからね」

「そうか……。それで、さっきのゲームは具体的にどう進行させるんだ?」

「ん〜、事前にお題をみんなに考えてもらって、それを紙に書いて箱に入れて、それを引いてお題を見ないようにアタシに渡して、お題をホワイトボードに書いて、言う人が振り向いてー」

「わかった、わかった、そこら辺も既にきっちり考えているんだな。それならいい」

「そんじゃ帰ろ〜」


 茜との帰り道、なにか言い難そうな4文字がないか考えながら歩いていると、矢沢屋の看板が目に入ってきた。

 わざわやわざわや

 わざわざわやわや

 わざわやわざわや

 わざわざわやわや、

 茜に聞こえないように小声で発してみた。これは言い難いのではないか? 早速いいお題を発見した。


 帰宅後、佐々木に日曜日のゲーム内容が変更になった連絡を入れる。勿論茜との交換条件のことは伏せ、茜の我儘を受け入れたという形にしておく。

 少し待つと『真島たちとの約束を優先したい』と返ってきたので【それで構わない】と返した。


 その日の夜、越後から連絡がきた。


『文化祭で歌ってくれないか佐々木に頼んでいるんですが、なかなかOKもらえません。なにかいい案ないですか?』


 これは……。


【少し考える。いい案を思い付いたら連絡する】


 2年前の文化祭でも同じようなことがあった。あれは当日だったが、半ば強引に押し切れた。今回もとりあえずあんな感じで押し切れるのではないか? 文化祭まであと5カ月近くあるが、決断させるのは早いに越したことはない。

 しかし、自分と越後は全然知らない同士という体(てい)な上、佐々木からもそんな相談はされていないので、佐々木が誘われているということ自体を知っているのがそもそもおかしい。まずはそこをどうにかする必要がある。


 風呂に入りながら少し考えていると1つ案が浮かんだので、風呂から上がり越後に連絡を入れる。


【俺とお前は知らない同士という体(てい)なので、まず俺がお前たちの状況を知る形を作る必要がある。あくまで体(てい)だけどな。なので、部活の見回りのときにお前から相談を受け、お前たちが佐々木を誘っていることを知ったことにする。その後俺も佐々木を説得してみる。これで駄目ならまた他の方法を考える。ということで、お前らが部活動をしている日を教えてくれ。その日に部活の見回りを行い、佐々木を連れて軽音楽部の部室に行く】


『ありがとうございます。俺たちの使用日がわかったら連絡します。説得お願いします』


 部活の見回りは今週中にやる予定だったが、少しずらすことにした。そもそも毎年同じ時期にやっていては抜き打ちにならないのだから、決まった時期にやる必要性はない。



 翌日の5月26日火曜日、昼休みに弁当箱を開けると上段も下段も中身がおかずだけだった。

 1年1組の教室へ行き弘和の弁当も確認するが、こちらもおかずだけだった。

 これは真衣と晴久には悪いが笑うしかない。

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