元木 8 後輩
文化祭が終わると同時に但馬先輩の雑用期間も終了し、但馬先輩は生徒会室に来なくなった。
そして古賀先輩と越後先輩も引退し生徒会選挙が行われたが、生徒会長立候補者が美冬先輩のみだったので、信任投票を経て美冬先輩が生徒会長に、秋陽菜先輩が副会長に就任した。
ちなみに去年は古賀先輩と越後先輩の2人が生徒会長に立候補者し、白熱した一騎打ちの選挙が行われたらしい。本当に白熱していたかは知らないが。
その後も部長会議や挨拶運動、年末には近隣他校の生徒会の人たちと交流会が行われた。
年が明けると演劇部と共に地域交流会を開いたり、各部の予算案を作成したりと生徒会の活動が続いていく。
卒業式では古賀先輩、越後先輩と一緒に生徒会メンバー7人で記念撮影をした。但馬先輩にも混ざってほしかったのだが、但馬先輩と喧嘩をした2人の先輩が校門前で待ち構えていたようで、面倒事になる前に但馬先輩は岩山先輩たちとさっさと裏門から帰ってしまった。
生徒会の活動中人手が足りない場合は、その都度美冬先輩や秋陽菜先輩の友人が援軍に来た。
茜が吉野を連れてきたこともあり、そのとき吉野は「神崎も誘ったんだけど断られちゃったんだよね」と言っていた。
雑用を手伝ってくれる援軍は全員女子だったので、男子が少数になり隈坂先輩は毎回居心地悪そうにしていた。「女子ばっかで気まずくね?」「俺たち居場所ねぇな」などと言っていたが、それなら隈坂先輩も関口先輩たちに頼めばよかったのではないだろうかと思う。あの人たちであれば隈坂先輩の頼みは断り難いだろうに。流石に名波先輩は無理だろうが……。
4月になると新入生が入ってきた。
当然生徒会にも新しいメンバーが加わる。
去年の自分たちと同じように生徒会室に集まり、1年生たちから自己紹介が始まった。
「1年4組常盤詩音でーす。よろしくお願いしまーす」
堂々と自己紹介をした常盤は女子の中では身長が高く眼鏡をかけている。
ハッキリとものを言いそうな印象だ。
「……1年5組千葉夏実です。よろしくお願いします」
逆にこちらはとても大人しそうだ。声量が小さいわけではないが、自分から積極的にコミュニケーションをとっていくようには見えない。美冬先輩程ではないが身長も小さく、常盤とは正反対のタイプのように見える。
「私は生徒会長の筑紫美冬だ! 2人ともこれからよろしくな!」
「私は副会長の菱川秋陽菜です。よろしくね」
「俺は3年の隈坂。よろしくー」
美冬先輩はハキハキと可愛らしく、秋陽菜先輩は笑顔で、隈坂先輩は相変わらずだるそうに自己紹介をした。
「アタシは2年の菊池茜で〜す。茜先輩って呼んでね〜」
「俺は2年5組の元木光一。2人ともよろしく!」
「えーと、質問いいっすか?」
常盤が右手を顔の横に上げ、美冬先輩の方を見つつ聞いてきた。
「いいぞ。なんだ?」
「会長の身長は何ミリすか?」
は?
なんだその質問は?
去年の俺より酷いぞ。
聞きたくなる気持ちは共感できるが。
「……おい、身長を聞くのはまだわかる。わかるが……なんで単位がミリなんだ?」
険しい顔で美冬先輩が聞き返した。
「すぐ答えられるか試しに聞いてみただけですよ。それと副会長にも質問いいっすか?」
「なにかな?」
「副会長の体重は何トンすか?」
おい、そっちはやめとけ。
「……なんで単位がトンなのかな〜?」
秋陽菜先輩も聞き返す。
笑顔で。
「だからすぐに答えられるか試してみただけですよ。私人の身長とか体重が気になるタイプなんで。ちなみに私は身長1700ミリで体重0.06トンです」
言うのか……。
これでは聞いてきたことを非難しにくい。
「しおっち〜、気になっても初対面で聞くのはどうかと思うよ〜? 私たち先輩なんだからさ〜」
先輩2人を庇ってか聞かれていない茜が指摘した。
おまけに早速常盤にあだ名を付けている。
後輩なのでいちいち許可を取らないようだ。
中学でバレー部に所属していた際、勝手に後輩のあだ名を決めていた光景が目に浮かぶ。
「それ私のあだ名っすか?」
「そう、しおっち。いいよね?」
「私あんまり詩音って名前と合ってないんで苗字にしてもらえます?」
「えー? でもしおっちでよくない?」
「なら菊池先輩は赤ちゃん先輩でいいですか?」
「ちょっと! それはイヤなんだけど!」
あだ名が気に入らなかったのかカウンターが飛んできた。
「下の名前茜でしたよね? 赤ちゃん先輩でいいじゃないすか。お似合いのあだ名ですよ?」
「イヤ! あ·か·ね·せ·ん·ぱ·い! アタシ赤ちゃんじゃないから!」
「私のあだ名はトッキーでよろしくお願いしまーす。中学時代もそう呼ばれてたんで」
とんでもない後輩が入ってきた。
隈坂先輩もそう感じたのか「こいつヤベー……」と小声の独り言が微かに聞こえた。
もし越後先輩と混ぜていたらどうなっていたのだろうか……。
「赤ちゃん先輩は体重何ポンドっすか?」
「え!? ポンドっでなに!?」
体重を言う、言わない以前に、その聞き方では茜が答えられるわけがない。
なので場を和ませるためにも自分が答えることにした。
「ていうかアタシ赤ちゃん先輩じゃないからー!」
「ハハハ、お前今自分で受け入れてただろ。ちなみにそいつの体重は約121ポンドだ!」
「ちょ! それ合ってるかアタシ全然わからないんですけどー!」
「ハハハハハ!」




