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元木 5 お題スゴロクチーム戦終了後

 3人で片付けをしていると越後先輩が小声で話しかけてきた。


「あなた筑紫のときなんですぐにアウトだって言わなかったの?」


 今更そこほじくり返すんですか?

 もう終わったことですよね?


「……すぐにアウトだって言ったら怪まれるでしょう。だから少し間を置いたんですよ。それに結局セーフが4票だったから俺の票は関係なかったですよね?」

「あなたが先に言っていたら流れが変わっていたかもしれないじゃない。だから早めに✕を出すべきだったのよ」

「越後先輩こそ最初に古賀先輩がものまねをしたとき✕出すの早過ぎでしたよ」

「あー! やっぱり2人とも俺たちを最下位にするつもりだったんでしょ!」


 声が大き過ぎたか……。


「最初から怪しいと思ってたんだよね。なんか俺のニワトリのものまねすぐに✕出されたからさぁ」

「……でも結局私たちが最下位であなたは文化部担当になれたんだから別にもういいでしょ」


 もういいならほじくり返さなくていいでしょうに……。


「そうだね。悪だくみしてた越後が最下位になったのは自業自得ってことで」

「……でもあれは越後先輩に言われなくても✕でしたよ」

「え? 元木判定厳しいね。なら元木のものまね見せてよ」

「わかりました」


 ということでゴリラの全力ものまねをすると、古賀先輩も越後先輩も大笑いし始めた。


「あはははははははははは! 確かにそんなものまねできるなら俺のニワトリなんか✕だね!」

「フフフフッ! それ他の人たちにも見せてあげなさいよ」

「そうですね、ものまねのマスを踏んだらやりますよ」


 その後片付けを終わらせると、越後先輩は「私先に帰るわね」と1人で生徒会室を出て行った。


「さてと、俺たちも帰ろっか」

「そこのダンボール出しっぱなしですよ」

「あ、忘れてた」

「そういえばスゴロクは2種類ありましたよね? もう片方はどんな内容なんですか?」

「んー、簡単に言えば難易度易しいって感じかな」

「難易度易しいですか?」

「って言っても勝ち負けの話じゃないけど。マスの内容見てみればわかるよ。見る?」

「はい」


 自分たちがプレイしていない方の紙を机の上に広げ、マスの内容を確認する。


「……確かに難易度易しいという感じですね」


『ウインク』·『投げキッス』·『愛してるゲーム』·『土下座』·『変顔』こういったマスがない。


「こっちは恥ずかしがり屋の生徒とか、あとトランスジェンダーの生徒のことなんかも考えて作られているんだよ。これを作った先輩がそう言ってたんだ。あっちのお題は男子か女子かを括ったマスもあるけど、こっちは性別的な要素を含んだマスが一切ないからね」

「成程。これを作った先輩も色々考えていたんですね」

「そうそう。それに実はこれを作ったのは越後のお姉さんなんだ」

「そうなんですか?」

「涼子先輩っていってね、俺たちの2学年上の先輩で越後とは違って常に明るくて笑顔が素敵な先輩だったよ。それで他の先輩たちが笑顔の涼子先輩と仏頂面の越後を比較してイジるから越後はいつも怒ってた。それを見て涼子先輩が越後をまたイジったりね。それとあのダンボールの中にあるやつはほとんど涼子先輩が置いていった物なんだよ。家から持ってきたり自腹で買った物もあるって」

「将棋もですか?」

「いや、将棋は将棋部から拝借してる物だよ。だからあれだけは学校の備品。あとバックギャモンは但馬の私物だね。さてと、そろそろ片付けて帰ろっか。元木は時間大丈夫?」

「はい、大丈夫ですよ。このあとの用事などは何もないので」

「じゃあ駅まで一緒に帰らない?」

「いいですよ」

「職員室に鍵返してくるから先に校門のところで待ってて」

「わかりました」


 自分と同様古賀先輩も電車通学で、自宅の最寄り駅はお互い逆方向だが駅までは共に帰れる。

 校門前で少し待っていると古賀先輩が合流した。


「おまたせー。そういえば元木は今日楽しかった? なんかあんまりゲーム中笑ってなかったけど」

「いえいえ、十分堪能しましたよ」

「堪能?」


 しまった……。

 本音が出てしまった……。


「生徒会の楽しい雰囲気というかなんというか……」

「ああ、そういう意味ね」


 よし、なんとか誤魔化せたか。


「楽しめたならよかったよ。……あ、一応言っておくけど、越後と菱川は普段から仲悪いわけじゃないからね」

「わかってますよ。昨日までそんな風に見えませんでしたし」

「越後はたまに喧嘩腰のときがあるからそれが出たんだろうね」

「それを秋陽菜先輩が買ってしまったと……」

「そうだね」

「……こんなこと聞くのも変ですけど、越後先輩は非力だと思いますか?」

「うーん……ここだけの話、多分越後が非力なんじゃなくて菱川が強いんだと思う……」

「そうですよね。但馬先輩にくらわせたあのビンタを見る限り非力な女子の威力ではないと思っていたので」

「ははは、そうだね」

「そういえば但馬先輩は雑用要員ということですが、過去に色々問題を起こしているんですよね? そんな人に生徒会の仕事を手伝わせても大丈夫なのですか? 今のところは掃除くらいしか手伝っていないと思うのですが、部活の見回りは任せるんですよね?」

「ん〜、まず但馬たちが起こした問題っていうのは個人的にそこまで大したことじゃないと思うんだよね。暴力とか犯罪行為とかそういうことじゃなくて、ただ細かいことの積み重ねっていうかなんというか……。わかりやすく言うと素行に問題があるとかそんな程度なんだよ。ただ麻雀が一部の先生の逆鱗に触れちゃったんだろうね。だから半年間の雑用をすることになった。でも但馬も岩山も宇津木も若林も半年間手伝ってくれて俺たちが助かったのは事実なんだよ」

「よくそんな人たちが雑用なんて引き受けましたね」

「ははは、確かに元木たちからすればそう思うか。でもあいつらは授業とか何かの役割とかをサボったりするタイプじゃないんだよ。赤点も取ってないみたいだし。やらなきゃいけないことはやるけど、やらなくていいこともやっちゃうタイプの集団っていうのかな。例えば、岩山は私服で登校してきたり、宇津木は銀杏(ぎんなん)を沢山拾ってきて教室内を臭くしたり、若林は登校中に捕まえてきたトンボとか鳩(はと)を教室で解き放ったり」

「聞いている分には愉快ですね」

「そうだね。岩山のなんかは日曜日に年の離れたお兄さんの家に遊びに行って、夜に帰ろうと思ってたらそのまま寝ちゃって、起きたら朝になってて、自宅に戻る時間ないから私服のまま手ぶらで学校来たって。『遅刻とか休むよりマシじゃね?』って本人は軽く言ってたよ。あとは3人が節分のときに各教室に豆をバラ撒いたり『鬼は外ー!』って集中攻撃された但馬が怒り散らしたなんてこともあったな」

「但馬先輩の問題行動は?」

「但馬は単純に普段の態度だよ。あいつは先生にも先輩にも一切敬語を使わないから」

「成程、だから先輩に目を付けられたんですね」

「そうそう。それと話を戻すけど、人手が足りない雑用なんてのは頻繁にあるわけじゃないからたまにって程度なんだよ。具体的には卒業式の準備と片付けとか、部活の見回りの手伝いとか、文化祭のときとか」

「確か挨拶運動には参加していませんでしたね」

「ああいうのは人数が必要なわけじゃないからね。あくまで雑用だから人手が必要なときだけだよ。それに部活の見回りを任せる件だけど、以前あれを任せたときには但馬以外の3人は楽しそうにやってたんだ」

「楽しそうにですか?」

「だって普段は自分たちが注意される立場なのに、各部室を回って部員に『キレイに使え』とか『掃除しろ』とか『物が多いから片付けろ』とか逆に注意できる立場になってたからね。但馬なんかキレイ好きだからどの部室回っても言ってたよ。おまけに怖い但馬に注意されたら従う生徒も多いし」

「同学年の古賀先輩と越後先輩はまだしも、2年生の先輩方は初対面のとき大丈夫だったんですか?」

「筑紫と隈坂は但馬のことを最初少し怖がってたよ。でも俺と越後もいたし、俺は但馬と2年連続で同じクラスだったからね。それと但馬以外の3人は途中から菱川の家来みたいになってたから面白かったよ。『1番役に立った人には手作りのお菓子作ってきてあげる』とか『仕事しない人にはバレンタインのチョコあげない』とか言って服従させてたなぁ」

「そんな人たちなんですね」

「おまけに菱川のおかげか素行の悪さも以前より改善されてきてるし。でも逆に菱川が少し我儘になってきちゃってねぇ……」

「今日も最後までごねてましたね」

「前まではもっと清純って感じだったんだけど、ちょっと小悪魔っぽくなってきちゃった……」

「ということはうちの生徒会には鬼と悪魔と疫病神がいるんですね」

「ははは、元木も言うなぁ」

「あの人ゲーム中全然役に立たなかったですし、おまけに俺の足踏んでましたからね」

「ははははは!」


 古賀先輩と雑談しながら歩いていると駅に着いた。

 そして駅にはその疫病神が電車を待っていて、おまけに自分と疫病神は同じ方向、古賀先輩は逆方向。

 さて、どうしたものか……。

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