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和沢 3

誰が喋っているかわからないセリフがありますが雰囲気で読んでください。大した内容ではないセリフなので特に問題ないと思います。

 小休憩を挟んだ後、舞台を前方に移し2本目のコントが始まった。2本目のコントは丁半を題材にしたものだった。


 その後の3本目のコントには生徒会長が現れ、演劇部と一緒に最後にかりん糖をばら撒いていった。


 演劇部のコントを見終わると皆腹が減ったということで、少し早いが昼飯を食べるため教室へ戻ることにした。

 遂にあれのお披露目だ。


「そういや和沢、さっきのやつなんなん?」

「はっはっは、見ろ」


 ダンボールを開け中身を見せた。


「バナナ?」

「アハハ、何本あんだよ」

「そしてこれを見ろ」


 チョコレートソースとチョコスプレーをカバンから取り出し見せびらかす。


「チョコバナナ食うぞ!!」

「マジか! なら持ってきた菓子いらねぇじゃん」

「和沢、お前最高!」

「何処で食うよ?」

「やっぱり屋上だろ」


 チョコバナナといえば屋外だろう。

 下に垂れても大丈夫だしな。


「だな」

「お前ら、食いたい分のバナナは自分で持ってけよ。ていうか俺トイレ行ってくるから先行っててくれ」

「よっしゃー、何本食うかな〜」

「先屋上行ってんぞー」

「チョコ忘れんなよー」

「お前らこそ昼飯持っていくの忘れんなよー」

「アハハ、弁当忘れてたわ」


 トイレで用を足し手を洗い、教室に戻ろうとすると越後が前から歩いてきた。

 越後は1年のときにクラスが同じで仲が良かったやつだ。しかし2年になってからはクラスが離れたこともあり、最近はほとんど絡みがない。


「お、和沢じゃん、久しぶり」


 越後が話しかけてきた。橘たちと一緒にいないからだろう。

 あいつら3人は2年になってからの友人だ。そして佐々木や真島を嫌っていて、おそらく越後もそのことを知っている。悪いやつらではないのだが、越後からすれば関わりたくはないはずだ。

 俺は佐々木も真島も嫌いなわけではない。そもそも好きとか嫌いとか以前に接点がなく、ぶっちゃけ興味もない。


「よぉ越後、丁度いいや。ちょっとこっちの教室来てくれ」


 あいつらは屋上へ行っているはずだから大丈夫だろう。


 「なんだ?」


 越後を7組へ連れていきバナナを3房手渡した。


「これやるよ。他のやつにも配ってくれ」

「ハハハ、なんでこんなにバナナあんだよ」

「うち青果店だからな」

「あー、そういえばそうだったな」

「これもやるよ」


 チョコスプレーも越後に配ることにした。

 こっちは複数あるので越後にあげても大丈夫だろう。


「なんだこれ?」

「チョコだよ。これかけてチョコバナナみたいにして食ってくれ。俺今から屋上で他のやつらと食うんだ。こっちのチョコレートソースは1本しかないから流石にやれないけど。……あ、こっちかけないとそれくっつかないか?」

「ハハハ、チョコバナナか、考えたな。別にそっちはいいよ、サンキューな」

「お前らいいもん持ってるな」


 まるでカツアゲかのように急に後ろから声をかけられた。しかし女子の声だ。振り向くと同じクラスの常盤だった。

 常盤は女子っぽい話し方をしないので、こちらとしては話しやすく楽ではある。


「お、常盤じゃん。久しぶり」

「よお越後」


 常盤も1年のときに同じクラスだったので、当然越後とはお互い知っている仲だ。

 そういえば常盤は生徒会所属だから今日は忙しいはずだが、どうして教室に戻ってきたんだ?


「お前生徒会の仕事とかはいいのか?」

「今私フリーの時間だからな。昼飯食べるために弁当取りにきたんだ」


 そうか、生徒会も当番制で動いているのか。


「常盤は和沢からバナナ貰ったか?」

「いや、貰ってない」


 せっかくなので常盤にも配ることにした。


「やるよ」

「くれ」

「どんくらい?」

「んー……30本くらいだな。生徒会と文化祭実行委員に適当に配るわ」

「ハハハ、そんなにかよ」

「大丈夫、そんくらい余裕である。ていうかそんなに持てるのか?」

「常盤なら大丈夫だろ」

「えーと……これで11、これで16……」

「私ならってなんだよ」

「千葉さんは無理じゃねーか? って意味」

「夏実がバナナ大量に持ってたら面白過ぎるだろ」

「ハハハ、確かに。違和感半端ないな」

「そうだ越後、夏実の前でテリテリーヌーヌって言ってみ」

「テリテリーヌーヌって何だ?」

「いいから言ってみろ」

「ハハハ、わかった、今度言ってみる」

「よし、6房で32本。あとこれもやるよ」


 チョコスプレーはまだあるから常盤にも配って大丈夫だろう。


「いや、バナナだけでいいよ。それかなり散らばるだろ。それ下にバラ撒いて食ってたら流石にドヤされる」

「そうか、ならしゃーないな」

「サンキュー和沢、ゴリラ会長にバナナ食わせてくるわ」

「ハハハ、お前生徒会長イジるなよ」

「いいんだよ。ゴリラ会長とアホ副会長はイジってなんぼだ」

「あ、会長にコント面白かったって言っといてー」

「りょーかいー」


 常盤がバナナ6房と弁当、それに何故かオセロを抱えたまま教室を出ていった。


「なぁ、千葉夏実って誰だ?」

「俺と同じクラスで生徒会入ってる女子。だから常盤と仲良いんだよ。んで俺はけっこう前だけど1回隣の席になったな。背小さくておとなしい感じ」

「常盤と真逆じゃん」

「そうそう真逆」

「可愛い?」

「んー、けっこう可愛いんじゃないか? お前、それ聞きたいから常盤いなくなってから千葉さん誰って聞いただろ」

「正解」

「ハハハ、やっぱりな。ていうかなんで生徒会長でコントなんだ?」

「あー、演劇部のコントに会長が出てきたんだよ」

「そうなのか。俺午後に観る予定なんだよな」

「あ、ネタバレすまん……」

「いや、別にいいよ、内容知らねぇし。じゃあ俺もそろそろ行くわ。バナナサンキューな」

「ああ、またな」


 越後と別れたあと、クラスにいた他の連中にもバナナとチョコスプレーを配ってから屋上へ向かった。


「和沢、遅ぇぞ」

「すまんすまん、常盤とか他のやつらにもバナナ渡して駄弁ってたら遅くなった」

「え? 常盤にも渡したのかよ。アイツ生徒会だろ。大丈夫なのかよ」

「チョコは渡してない、バナナだけ。ゴリラ会長に食わせるってさ」

「アハハハハ」


 俺だけ遅れたので急いで弁当を平らげる。

 そして本日のメインイベントであるチョコバナナの時間だ。


「どうやって食うんだ?」

「バナナ剥いて適当にかけるだけだ。弁当箱を受け皿代わりにしてこうやって……」

「アハハ、チョコたれてるぞ」

「次俺な〜、かけてくれ〜」

「なぁ、バナナってできるだけ少ない回数で剥きたくならねぇ?」


 急に橘が意味不明なことを言い出した。


「いや、なんねぇよ」


 幼少期からかなりの量のバナナを食べてきた俺でも思ったことねぇよ……。


「俺もならねぇわ」

「俺も」

「2回で成功、3回が普通、4回は失敗、5回以上は論外」

「なんじゃそりゃ!」

「どうでもいいわ! いいからさっさとチョコかけてくれ!」

「なんだよ、一切共感なしかよ」


 ワイワイしながら食べていると知らない3年が近づいてきた。

 身長が190cmくらいある。おまけに強面だ。不良か?


「君達いいもん食ってるね」


 まずい……今度は本物のカツアゲか……?

 こっちは4人もいるが……。


「……あ、いります?」


 とりあえず勧めてみた。


「お、いいの?」

「バナナもチョコもまだあるんで……」

「君達のそれ見てたら美味そうだなーって思ってさ。声かけて正解だったわ、サンキュー」

「あのー、すみません……」


 橘が口を開いた。

 おいおい、まさか「邪魔だからどっか行ってください」とか言わないよな?

 頼むから面倒事は避けてくれよ……。


「もしかしたら間違ってるかもですけど、さっき演劇部のコントで半炒飯一気食いしてた人ですか?」


 ん?


「そうそうそれ俺。もしかして君達観てた?」

「全員観てましたよ」


 あー! あの人か!

 

「俺演劇部で3年の諏訪、よろしく」

「橘です」

「俺玉虫っす」

「あ、俺は鰕西(えびにし)です」

「俺和沢です。このバナナとチョコ持ってきたの俺です。これどうぞ」


 バナナを1本手渡すと、その場に座りバナナを剥き始めた。


「いやー、俺炒飯早食いしなくちゃいけないから昼飯持ってこなかったんだけど腹減っちゃって。そしたら君達がチョコバナナ美味そうに食ってるからさ。俺チョコバナナ大好きなんだよね。祭りの屋台で必ず食うし。あ、チョコかけてくんない?」

「あ、はい、どうぞ」


 チョコレートソースとチョコスプレーをかけてあげるとすぐさま食べだした。


美味(うま)!」

「1人ですか? 他の演劇部の人たちは?」


 チョコバナナを食べながら鰕西が聞いた。


「他のやつらは今頃どこかで昼飯食ってるんだろうけど、俺やることないから屋上来たんだ。屋上ってなんかいいよな」

「俺も好きっす。普段入れないからいいっすよね」

「あの、さっきのコントで炒飯から湯気出てましたけど、あれってどうやって用意したんですか? 電子レンジですか?」


 俺と同じく橘も疑問に思っていたようだ。


「電子レンジじゃないと思うんだよな。あれ実は俺も知らないんだ。3年に沼下ってやつがいてさ。あ、さっきツボ振り役と飯屋のオヤジ役やってたのが沼下ね。そいつマジックが得意で炒飯熱々にしたのもそいつなんだけど、あれマジックで使うタネらしくて結局誰にも方法教えてくんないんだよ」

「へぇ、マジックですか。じゃあの炒飯って本当に熱々だったんですか?」

「そうそう、マジで熱々。でも俺熱々の早食い得意だから」

「すごいっすね」

「ちなみに沼下は1時から武道場でマジックショーやるよ」

「え、マジっすか!? 俺見たいわ! あとで行かね?」

「この後は予定なかったしいいんじゃねーか?」

「だな」


 ということで、1時からはマジックショーを見ることになった。


「あのー、諏訪先輩はバナナ食べるときできるだけ少ない回数でバナナの皮剥きたくなりませんか?」


 おいおい橘、それ初対面の先輩に聞くのかよ……。


「あー、なるね。絶対3回以下で剥きたい」

「ですよね!」


 ええ……。

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