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佐々木 12

 家に着き自分の部屋に入ると、会長に言われたことをふと思い出した。


「お前はもっと自由に生きた方がいいだろう」


 去年の夏までは我慢した学生生活を送ってきたけれど、ここ最近はとても楽しい日々を送れている。それで十分満足だしもう我慢はしていないつもりだ。

 歌うこと自体はとても楽しい。そこに嘘偽りはない。あそこに加われば彼らは喜んでくれるはずだ。


 『しかし自分が文化祭で歌ったら周りはどう思うだろうか』


 この考えを改めろと会長は言ったのだ。


 歌いたくないのは周りの反応が気になるから。


 つまり自分が臆病なだけだ。


 「菊池や真島を見習え」とも会長は言っていた。

 確かにあの2人を見ていると常に明るく、周りを巻き込み笑顔が絶えない。

 そしてどちらも自由奔放だ。

 奔放過ぎるのは問題だろうが、自分には足りていない部分なのだろう。


「お前が歌ったところで誰の迷惑にもならん」


 確かにそのとおりかもしれない。


 音痴の真島が文化祭で歌う方が余程迷惑だろう。


 そんなことを考えていたら笑えてきた。


 自分の部屋で1人クスクスと笑い、ベッドの上に横たわり天井を見上げる。


 その瞬間何かが吹っ切れた気がした。




 そして文化祭で歌うことを決めた。




 後日そのことを報告すると宮本に「よし、言質取ったからな」と返された。これでもう引き返せない。

 真島もその場にいたので「じゃあ俺だけ参加しないんだから俺が曲決めるね〜」と言い出し勝手に例の曲に決めた。

 当然3人は反対したけれど自分が「その曲を入れないなら歌わない」と我儘を言うと「うわ、マジか……。でも歌うのは佐々木なんだからしょうがないな」と宮本が納得し、越後と奥井も条件を飲んだ。


「ってことは今からその曲練習かよ。ハハハ、俺歌詞すら知らねぇよ。宮本、楽曲とかお前なんとかしろよ」

「なんで俺なんだよ!」

「真島と佐々木の我儘なんだからお前がなんとかしろよ」

「はぁー!?」

「越後の言うとおりだよ。真島のせいなんだから宮本に任せたからね」

「マジか……」

「他は何やるよ? 奥井は何がいい?」

「俺はデャバロームの『孤独の逆鱗』がいい。越後は?」

「ワムリグシャやるなら同じワムリグシャの『天変地異ワールド』の方が良くね?」

「えぇ……違うグループのやつの方がいいよ」

「ま、どっちもやればいいか」

「それならまぁ……」

「お前ら、まだ何曲やれるかわかんねぇんだから勝手に決めるな。それよりあの曲やるなら特訓しないと間に合わないぞ。……はぁ、これは夏休みもけっこう潰れるかもな」

「ハハハ、なんとかなるだろ」

「文化祭楽しみだなぁ〜」

「……お前だけ気楽でいいよな」



 その日の放課後、生徒会室へ行き会長にも伝えると「そうか、頑張れよ」とだけ返ってきた。

 おそらく生徒会の皆はそれぞれの持ち場での仕事があるため演奏を間近では聴いてもらえないだろう。

 なので今度時間があるときカラオケに誘ってみるのもいいかもしれないと思った。生徒会の皆で行ったら賑やかだろう。


 この日は生徒会の仕事がなく会長への報告も終えたので帰ろうとした瞬間、衝撃の事実を言い渡された。


「ちなみに今年の軽音楽部の演奏は体育館だ」


 !?


「え!? 軽音部って仮設ステージじゃ……」


 越後がそう言っていたはずだ。


「演劇部が体育館ではなく武道場で劇をやることになってな。代わりに今年は軽音楽部が体育館だ」

「会長! それいつから決まってたんですか!」

「さぁ? いつからだろうな、ハハハ」


 ……やられた。

 おそらく会長はあの時点で既に知っていたのだろう……。


 急いで越後にスマホで確認すると『あのときはまだ体育館じゃなかった。んでその後体育館に変更になった。黙ってただけで嘘はついてない(笑)』と返ってきた。


 ……こっちもか。

 おそらく宮本と奥井も共犯だろう。


 スマホに返ってきたメッセージを後ろから覗いていた会長が笑い出した。


「ハハハハハ、友達付き合いはこういうことがあるから気を付けろよ」

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