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佐々木 11

「……パス」

「はいどうぞ、副会長の番ですよ」

「……パス」

「はいどうぞ副会長」

「……パス」

「はいどうぞ」

「パスだよコノヤロー! 置けるとこないんだよー!」


 どうやら常盤が圧倒しているようだ。

 こちらの作業が終わったので盤面を確認すると、白の全滅間近といったところか。

 いつの間にか藤澤も常盤の横に移動し観戦している。


「藤澤、さっきの答えわかったの?」

「……いえ、調べてもよくわからなかったので諦めました」

「そっか」

「私の勝ちですね」

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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「もう1回だー! 次もアタシが白で先攻ね!」

「いいですよ」


 2回戦が始まった。

 しかし

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「はいどうぞ、副会長の番ですよ」

「……これもうアタシの勝ち目なくない?」

「100パーないですね」

「また真っ黒にされるのかー……できるだけ粘ってやるー!」

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「……パス」

「はいどうぞ」

「……パス」

「はいどうぞ」

「……パス」

「はいどうぞ」

「……パス」

「はいどうぞ」

「……パス」

「はいどうぞ」

「……パス……パス何回目やねん!」

「はい、私の勝ちですね」

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 再び常盤の圧勝で終わった。

 最後斜めに挟んだのが常盤らしい。


「アタシ全部置くとこまですらさせてもらえないんですけど……」

「副会長がザコ過ぎるからですよ」

「くそー! トッキー強過ぎるでしょー!」

「オセロって漫画とかアニメとかだと64対0で真っ白か真っ黒で終わるの見ますけどそこまでやらないんですね」

「そういうのは途中の盤面考えてないからだろ。ワンサイドゲームならわざわざ最後までやんねぇよ。ボクシングでも強い選手はザコ相手に最終ラウンドまで付き合わないで途中でKO勝ちするだろ。それと同じだ」

「なるほど、確かにそうですね」

「納得するなー! 誰かアタシの(かたき)を取ってくれー!」

「僕弱いんで佐々木先輩どうですか?」

「いや、オセロは全然……」


 オセロはほとんどやったことがない。


「私オセロ自信あります!」


 菱川が名乗りを上げた。


「よし、なら勝負だ」

「負けませんよ。私後攻でいいですか?」

「いいぞ」

「いけーコハルン! トッキーなんかボコボコにしてしまえー!」


 副会長が菱川に席を譲る。

 千葉さんも集まり、4人で観戦しながら常盤対菱川の勝負が始まった。

 常盤が引き続き黒で菱川が白だ。


「茜先輩、オセロは序盤相手の石をあまり取ってはいけないんです」

「え、そうなの!?」

「この人先攻が黒ってことも知らなかったからな。初期配置も間違ってたし」

「そんな決まりまであるの? 別にどっちでも良くない?」


 開始からお互い迷わずに手が進む。

 常盤が石を置くと盤面は黒が多くなった。

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 菱川が石を置いた瞬間何故か常盤が笑い出した。


 「あっはっは、うまいこと掛かったな〜」


 常盤がにやにやしながら石を置くとすぐにその意味がわかった。

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「あ!!」


 菱川から思わず声が漏れる。


「ほらほらどうした菱川〜、好きなとこ置けよ〜」

「うぅー……」


 常盤の勝ちが決定した。


「あれ? これどこ置いてもダメじゃない? えー……コハルンアタシより瞬殺されてるじゃん」

「こ、これはちょっとしたミスなのでたまたまですよ! 常盤先輩もう1回お願いします! 次も私が白で!」

「はいはい」


 常盤対菱川の2回戦が始まった。

 1回戦と同様スムーズに進んでいく。

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 まだまだ序盤。

 しかし

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「…………」


 菱川が考え込んでいる。

 更に数手後

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 「えぇ……」


 再び菱川から声が漏れる。

 常盤が優勢のようだ。

 そして

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「ほら、そっちの番だぞ」

「うぅ……」

「大丈夫だコハルン、真っ黒にされなければコハルンの勝ちだから!」

「ねぇよそんなルール」


 結局角を取った黒がそのまま圧倒し

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 常盤の4連勝で幕を閉じた。


「57対7で私の勝ちだな。菱川自信あったんじゃなかったっけか?」

「…………」

「まぁまぁ、アタシと違って最後までできたんだからいいじゃん」

「それ全然励ましになってないですよぅ……」

「さてと、そろそろ帰るか」

「えー! トッキー勝ち逃げズルいぞー!」

「相手になるやついないんだからしょうがないでしょ。会長全然戻ってこないし。夏実帰ろうぜ」

「うん」

「副会長、負けたんだから片付けよろしく」

「トッキーは上級生も顎で使うよね……」

「藤澤君、私達も帰ろっか」

「そうだね。お二人はどうします?」

「アタシはコーイチ待ってるよ。各部活の報告もしなくちゃだし。ササッキーは?」

「自分もお先に失礼します」

「そっか。みんなまたね〜」


 副会長に鍵を渡し、5人で下駄箱へ向かっていると菱川から質問された。


「さっき常盤先輩が数学100点って言ってましたけど、佐々木先輩は何教科100点取ったんですか?」

「あー……100点は1つもなかったよ」

「そうなんですか?」

「おいおい、それで学年2位とか私に対する嫌味かよ」

「いや別にそういうわけじゃ……」

「そういえば常盤先輩数学100点だったんですよね。オセロも強いみたいですしそんなに頭いいとは思いませんでした」

「なんだ藤澤、お前私のこと馬鹿だと思ってたのか?」

「菊池先輩と同じくらいかなぁと」

「あれと同レベルなわけないだろ」

「昨日は完全に同レベルでしたよ」

「あれはアホ副会長のせいだろ」

「昨日何かあったの?」


 ゴミ拾いの最中に何かあったのだろうか?


「聞いてくれ佐々木、昨日はアホ副会長のせいで菱川が」

「あーーー!!! 昨日のことはもういいじゃないですか!!!」


 急に菱川が大声を出し常盤の説明を遮った。


「なんだよ急にうるさいな」

「言わないでくださいよ!!!」


 菱川が常盤に詰め寄る。


「別にお前だけじゃなくて夏実と藤澤以外全員言っただろ」

「それでもですよ!!!」


 菱川がかなり必死になっている。

 一体何があったのだろうか?

 千葉さんと藤澤以外全員言った?


「わかった、わかった、言わなきゃいいんだろ」

「当たり前ですよ!!!」

「わかったっての。……テリテリーヌーヌ」

「……フフフ……そ、それやめて詩音」


 常盤が意味不明な言葉を発すると、何故か千葉さんが笑い出した。


「テリテリーヌーヌ」

「テリテリーヌーヌ」


 藤澤と菱川も続いた。


「フフフ……やめて……フフフフフ」

「テリテリーヌーヌって何?」

「夏実を笑わせる呪文だ」

「いや、そういうことじゃなくて……」

「佐々木先輩、テリテリーヌーヌっていうのは」

「おい!」


 今度は藤澤の説明を常盤が遮る。


「私がお前に問題の答えを教えなかったんだから、お前も佐々木にテリテリーヌーヌが何なのか教えるなよ」

「その言い分はどう考えてもおかしいでしょ……」

「ですよね」


 藤澤が賛同した。


「わかった、わかった、説明してやる。でもテリテリーヌーヌが何なのか説明するなら昨日のことを最初から説明しないとな。ってことはまず菱川が副会長のせいで」

「あああーーー!!! だから昨日のことはもういいって言ってますよね!!!」


 再び菱川が大声で常盤の説明を遮る。


「だとよ」

「えぇ……」

「テリテリーヌーヌはテリテリーヌーヌです! それ以上でもそれ以下でもないんです!」


 菱川が熱弁してくるが意味はさっぱりわからない。


「フフフフフ、や、やめて……」

「佐々木先輩!! テリテリーヌーヌが何なのか含めて昨日のこと聞くの禁止です!! 藤澤君も常盤先輩に問題の答え教えてもらえなかったんだから我慢してください!!」

「えぇ…………」


 いつの間にか菱川もヘンテコな言い分を振り回し常盤の味方になってしまっている……。


「藤澤君も昨日のこと誰にも言っちゃダメだからね!!」

「わ、わかったよ……」

「ならやっぱり私は藤澤に答えを教えなくていいってことだな」

「はぁ……結局教えてくれないんですね……」


 今日は皆常盤に弄ばれてしまった……。被害に遭わなかったのは会長ぐらいか。

 千葉さんが笑い続けたまま下駄箱に着き、そこからはバラバラのため「またね」と挨拶を交わしそれぞれの帰路に就いた。

 電車の中で『テリテリーヌーヌ』をスマホで調べるが、いくら検索しても『テリーヌ』しか引っかからない。

 

 テリテリーヌーヌって何???

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