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佐々木 7

 地域のゴミ拾い活動があった翌日の放課後、生徒会室のドアをノックし「失礼します」と一言添えてから生徒会室に入ると常盤以外の5人がすでに来ていた。


「ササッキー6位ー!」

「いいからさっさと解け」

「はーい」


 菊池先輩はいつも生徒会室に来た順番に順位をつける。「毎回だから無視していい」と会長に言われているので、自分も千葉さんも1年生の2人も基本スルーしている。これは今年始まったことではなく菊池先輩が生徒会に入った時点からすでにやっていたことらしい。

 すでに来ていた先輩2人と後輩2人に軽く挨拶を済ませると「常盤が来るまで好きにしてていいぞ」と会長に言われた。どうやら全員が揃ってから生徒会の仕事を始めるようだ。

 それぞれが何をやっているか見渡すと、副会長は机に教科書とノートを広げ会長に勉強を教えてもらっている。さっき会長が「さっさと解け」と言っていたのでおそらく数学だろう。この光景は去年から何度も見たことがある。テスト前になると副会長が会長に「数学教えてくれ〜」と泣きつくのも恒例でこの前も見たばかりだ。

 1年生2人の方を見ると、菱川が藤澤にスマホで動画を見せながら話しかけている。音量は抑えられていたが画面をチラッと見たらデャバロームの動画だとわかった。自分も見たことがある。デャバロームは自分も好きだけれど、1年生2人の間に入って邪魔するのもあれなので話しかけないでおく。

 隅の椅子に座っている千葉さんの方を見ると本を読んでいた。おそらくまたホラー小説だろう。しかしこの間まで読んでいた小説とは違う作品だ。


「前読んでたやつは読み終わったんだ?」


 千葉さんに話しかけた。千葉さんが読書中に話しかけられても平気なのは生徒会の人なら皆知っているので、奥井のときのように迷うことはない。


「うん。……あれは最後主人公が島民に呪われて…………臓物吐き散らして死んだ」


 可愛らしい見た目の女子からは似つかない言葉が飛び出した。


「うわぁ……」

「ちょっとー! 怖いからやめてー! なっちゃんわざとアタシに聞こえるように言ったでしょー!」

「いいからさっさと解けっての!」

「痛ぁ!」


 会長が副会長の頭を叩いた。

 

「そして島民全員で隠蔽して主人公の死が誰にも知られることなく終わり。……でも主人公の自業自得だから」

「そういえば主人公がクズだって前に言ってたね」

「うん」


 千葉さんは奥井と同様に小説を読むのが趣味で生徒会室で読んでいることも多い。しかし千葉さんの好みはホラー小説なので奥井とは趣味が合わないだろう。

そもそも奥井と千葉さんが会話しているところを見たことがない。千葉さんは自分から積極的にコミュニケーションを取る性格ではないし、奥井も女子が苦手なので何か特別な用がない限り話すことはないかもしれない。

 そして2年3組の教室内では自分も千葉さんとはほとんど話さない。自分が男子達とグループを作っているし、千葉さんも同様に女子のグループにいるからだ。

やはりそういった状況ではお互い話しかけづらい。    

 生徒会室で千葉さんと普通に会話ができるのは生徒会には男女の垣根を感じないからだろう。その空気感は去年から続いているように思う。もしかしたら自分の存在とは関係なく、以前から邦南高校の生徒会自体がそういったものなのかもしれない。


 コンコン


 生徒会室のドアがノックされた。どうやら常盤が来たようだ。全員揃ったので生徒会の仕事が始まるかと思ったのだがそうはならなかった。


「失礼しまーす」

「はいトッキー最下位ー! ビリー! 遅っそー!」


 常盤が一番最後に来たことを副会長が明らかにおちょくり始めた。こうなってしまってはしばらく収拾がつかないだろう。何故なら副会長の順位付けに対して常盤だけは毎回反応するからだ。


「はぁ! 掃除当番なんだからしょうがねえだろ! それに最下位はそっちだろ。成績最下位副会長が!」

「ちょ、アタシそこまで酷くないんですけどー!」

「いやいや、学年じゃなくて生徒会の中ではって意味だよ。どう考えてもこの中で成績最下位なの副会長でしょ」

「じゃあこの前のテストトッキー学内何位よ?」

「9位だよ」

「えー!? ウソだー!?」

「ホントだっての!」

「なんかもっと頭悪そうに見えるけどなぁ?」

「は? 人のこと言えた見た目じゃなくね?」

「えー? 顔面偏差値ならアタシの勝ちじゃない?」

「今顔面偏差値の話してねぇから。勉強偏差値の話だから。ほら、何位なんだよ?」

「……コハルンは何位だった?」


 副会長が他の人にも順位を聞き始めた。自分より順位の低い人を見つけるつもりのようだ。


「私は24位でした」

「リョーは?」

「僕は確か38位でしたよ」

「なっちゃんは?」

「……50位」

「ササッキーは?」

「佐々木も俺もお前より低いわけないだろ、諦めろ」

「一応だよ一応。みんな言ったんだから言えよ〜。ササッキー何位?」

「えーっと、……2位でした」


 自慢しているようであまり言いたくなかったけれど、常盤が9位ならそこまでは目立たないだろう。


「マ、マジか……コーイチは?」

「4位だ」

「くっ……お前ら頭良過ぎだろーー!!」

「んで副会長様は何位でございますか?」

「…………」

「言えよ!」

「こいつは152位だ」

「ちょっと!! なんでコーイチがアタシのテスト順位知ってるのよ!」

「真衣が言っていた。自分と同じくらいの順位でも生徒会副会長できるんだって感心してたな」

「あんの、はくまいがーー!! あいつだって156位だからねー!! しかもあっちはこっちより人数少ないしー!!」


 真衣? はくまい? 誰だろうか?


「真衣って誰すか会長?」

「俺の妹だ。今中3で菊池とも仲がいいんだ。弟も2人いて次男の弘和は藤澤と同じクラス、1番下の晴久は中1だ。ちなみに真衣は母が作った弁当の中身が上下ともご飯だったせいでつい最近あだ名が『はくまい』になったらしい」

「あぁ、だからこの前の弘和の弁当……」


 藤澤がボソリと独り言を囁いた。何か思い当たる節があるらしい。


「はくまいの来年の誕生日プレゼントおにぎりにしてやる!」

「ハハハ、好きにすばいいが喧嘩だけはするなよお前ら。お前らが喧嘩すると俺が大変なんだからな」

「てか副会長殿152位って、プププ、3桁ですか? あっはっは、2桁ですらないんですか? 3桁副会長殿、よくそんな順位で勝負しましたね」

「なんだとー! 全校生徒の3分の2は3桁順位なんだからなー!」

「もしかして数学の点数が1桁だったりします?」

「2桁に決まってるだろー!」

「あら、そうでしたか。(わたくし)恥ずかしながら数学の点数が3桁だったんですよ」

「それ100点じゃねーかコノヤロー!」

「もしかして副会長閣下は1年のとき赤点行列にご参加なさいました?」

「そうですー、参加しましたー。それが何かー?」


 パン


 会長が手を叩いた。雑談はここまでのようだ。

 赤点行列が何なのか気になるが……。


「そろそろ始めるぞ」

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