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佐々木 4

 夏休み明け2日目、昼休みになると自分達のクラスに宮本君と越後君がやってきて、自分と真島君を含め4人でお昼ご飯を食べることになった。

 その光景を見て、周りがこちらに視線を向けひそひそと話し始める。まただ。

 それを宮本君も感じ取り「いいから無視しろ」と、耳元に小声で伝えてきた。

 真島君はそれらを一切気にすることなくお弁当を食べ始めた。越後君も同様だ。

 それでも自分のせいで不快な目に遭わせているような気がしてならない……。

 そんな空気を吹き飛ばすように、真島君が宮本君のお弁当の唐揚げを勝手に食べ、宮本君が怒鳴り散らかす。その隙に越後君まで宮本君の唐揚げを食べた。すると今度は自分のお弁当の卵焼きを宮本君が奪って食べ始めた。

 普通お弁当のおかずを勝手に食べられたら怒るのだろうけれど、自分にとってはそんなことですらありがたいと思えた。

 クラスでは真島君と行動し、昼休みになると4人でお昼ご飯を食べる。そんな日が何日も経過していく。

 すると周りの反応も少しずつ和らいでいっていたように思う。

 それでも悪口や陰口は尽きない。自分のことはいい。友達に迷惑がかかっていることだけが心配だった。

 それでも真島君も宮本君も越後君も自分と離れることはなかった。

 何故こんな自分と関わってくれたのか。これも大人になってから知ったのだけれど、「真島が面白いから真島と一緒にいるお前とも話してみることにした」と越後君は言っていた。

 友達がいる学校生活は楽しく過ぎていく。

 周りの反応ももちろん気にはなるけれど、他の3人があまり気にしていないようだったので、自分もできるだけ気にしないようにすることにした。


 そんな日が続いたある日、生徒会の仕事があるため生徒会室で雑務をしていると名前の話になった。

 というのも菊池先輩が皆をあだ名で呼んでいるからだ。

 菊池先輩は生徒会長のことを「ミフユン先輩」と呼び、副会長のことを「ヒナヒナ先輩」と呼んでいる。そして2人は自分の下の名前が好きだと言っていた。

 逆に常盤さんは下の名前の詩音が自分に合っていないからと「トッキー」と呼ばせることで落ち着いたらしい。

 隈坂先輩は下の名前が薫なので「カオルン先輩」と呼ばれているけれど「女子みたいだからやめてくれ」とずっと前から抗議している。それでも菊池先輩がそう呼び続けているせいで、たまに隈坂先輩にイタズラされたりおちょくられたりするのは生徒会では見慣れた光景だ。

 自分は「ササッキー」と呼ばれている。そこはやはり気を遣ってくれたのだろう。

 その日の帰り際、他の人達が先に帰り元木先輩と2人きりになったので、少し名前の話をしてみることにした。


「元木先輩は自分の名前好きですか?」

「さっきの話の続きか?」

「……はい」

「……菊池は自分の苗字があまり好きじゃないからな。だから名前で呼んでほしいんだよ。あだ名を付けるのはただの趣味だろうが」

「そうなんですか?」

「ああ。ちなみに俺は好きも嫌いもないな」

「そうですか……」

「……佐々木は自分の名前が嫌いだろう」


 当然だ。


「……はい」

「だがな……」


元木先輩がいつにも増して真面目な表情で語り始めた。


「佐々木、お前のその 百合 という名前はお前の親が一番最初にお前に与えたものだ。ネットで調べたことではあるが、百合は純潔や威厳、無垢という意味がある。それは男も女も関係ないものだ。名前自体は嫌いでも、親がお前にその名前を与えた意味は絶対に大切にしなくては駄目だ。お前が将来改名することがあってもそれだけは忘れるなよ」


「……はい」


 それでも嫌いなものは嫌いだ。そのせいで100という数字自体も嫌いなくらいだ。

 それでも元木先輩が言ったことは正しいのだろう。

 そして気付いたこともあった。自分の苗字や名前が好きではない人はそれなりにいるということだ。自分とは理由は違うかもしれないが、そういう人も世の中には多少なりともいるようだ。

 そういえば奥井君も自分の名前が好きではないと言っていた。

 逆に真島君と宮本君はお互いのことを名前で呼び合っていた。幼馴染だからだろう。

 あの2人や越後君ともっと仲良くなるのに下の名前で呼ぶべきだろうか……。でも自分は下の名前では絶対に呼ばれたくない……。

 どうするべきか数日迷っていると、とある休日真島君にカラオケに誘われた。そこで真島君に相談してみることにした。


「あ〜、喉渇いた〜。次佐々木歌っていいよ〜」

「あ、あのさ、急に変な話なんだけど、……オレも真島君や宮本君のこと名前で呼んだりした方がいいのかな?」

「ん〜? なんで〜?」

「えっと、も、もっと仲良くなりたいと思って……」

「……俺は別に名前でもいいけど、それでも佐々木は苗字呼びだよねぇ?」

「そう……だね……」


 それはしょうがないことだし、真島君がこちらの気持ちをわかってくれていたことは嬉しかった。


「それに奥井も自分の名前あんまり好きじゃないって言ってたしなぁ」

「うん……」

「……いっその事全員苗字呼びでいいんじゃない?」

「え?」


 全然思ってもみなかった提案だった。


「俺と夜長……じゃなくて宮本が苗字呼びにすれば全員同じでしょ。それならいいんじゃないの?」

「で、でも、真島君と宮本君はそれでいいの?」

「俺は別に呼び方なんてどうでもいいよ〜。あ! そのかわり佐々木は君付け禁止だからね〜」

「え!」

「全員苗字の呼び捨て、これで無問題だね〜」


 結局真島君のこの案は採用され、真島君と宮本君はお互いを苗字で呼び合うことになった。

 そして自分も苗字の呼び捨てで呼ぶことになり、真島君と宮本君が間違って下の名前で呼んだり、自分が君付けで呼んだ場合、しっぺやデコピンをされるルールを真島君が勝手に作った。

 そして越後君が一切関係ないルールなのに、何故か越後君が率先してしっぺやデコピンをしてくるため、宮本君はそこに関しては不満そうだった。

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