鈴山 交友関係
「ep.藤澤」の翌日のはなしです。
6月1日、月曜日の1時間目は音楽から始まり、おまけに2時間は体育なので移動が続く。
「渉、諒太、音楽室行こう」
弘和に声をかけられ3人で音楽室に移動していると、廊下で知らない女子が近づいてきた。
上履きが黄色ということは3年だ。
「あれ〜、ヒロにリョーもいる〜」
「おはよ」
「おはようございます」
「おはよ〜。2人友達なの?」
「はい、同じクラスなんです」
諒太が答えた。
弘和と諒太の知り合いらしい。どういう関係だろうか?
よく見るとけっこうタイプかもしれない。
「ヒロは相変わらずコーイチと似てないな〜」
「それ毎回言うよね」
弘和はフランクに話してる。彼女じゃないよな?
「どこかに移動中?」
「音楽室だよ」
「そっか。じゃあね〜。あ、リョーはまた放課後ね〜」
「はい」
諒太とまた放課後ということは生徒会の人か?
まさか諒太の彼女じゃないよな?
「お前ら今の人とどういう関係?」
「あの人生徒会の先輩で副会長だよ」
「へぇ」
だよな。諒太の彼女なわけないよな。
「弘和は?」
「俺はあの人と従姉弟なんだよ」
「あー、だからなんか親しかったのか」
そうか、成程。どちらの彼女でもなかったか。
「今の人けっこう可愛いよな?」
「「え!?」」
あれ?
「なにそのリアクション?」
俺なんか変なこと言った?
「……あの先輩、中身アレだからね」
「あ、諒太も知ってるんだ」
「あー……。昨日ちょっとね……」
「なに? あの人なんかあんの?」
「んー、まぁ、あんまり知らない方がいいんじゃない? そういうこともあるでしょ」
「そうそう、弘和の言うとおり知らない方がいいこともあるよ」
「えー、なんだよそれ……」
結局あの人がどんな人なのか2人共教えてくれなかった。
1時間目の授業は少し遅れて終わった。
2時間目は体育なので急いで教室へ戻ろうとしていると、音楽室を出たすぐの廊下でまた知らない女子が話しかけてきた。
今度は上履きが緑だから2年だ。
「お、藤澤見っけ」
「おはようございます」
諒太の知り合いのようだ。
「なんだ、お前1時間目音楽だったのか。私ら次なんだよ」
「そうなんですか。すみません、僕たち2時間目体育なんで急いで戻らないと」
「まぁまぁ、そう急ぐなよ」そう言うとその2年生が諒太の目の前をブロックし、笑いながら通せんぼし始めた。
「ちょ、なんなんですか!」
「あっはっは」
「俺先行ってるからな」
弘和が諒太を放って2年女子の横をすり抜けていった。
俺は2人の様子が少し気になったので残ることにした。
「邪魔ですって!」
「なら無理矢理通ればいいだろ」
「ほんとに遅れるんで退いてくださいよ!」
「はいはい、退けばいいんだろ。また放課後なー」
「……」
諒太が先輩を無視して教室へ戻り始めたので自分もついていく。急げばまだ大丈夫なはずだ。
もしかしてあの人も生徒会の人か?
「今の人はなに?」
「生徒会の先輩。なんか僕に対して当たりが強いというか、ちょっかいかけてくるというか……」
「ふーん。お前生徒会の先輩と仲いいな」
「でもあの人もちょっとアレだからね……」
だからアレって何だよ……。
急いでジャージに着替え体育館へ向かう。
通常体育は2クラス合同なのだが、クラスの総数が奇数のため俺たち1組だけは他クラスとは合同にならない。
体育はバスケで諒太·弘和とテキトーにチームを組み、テキトーに試合をして終わった。だが試合に連敗したせいで片付けをさせられた。
散らばったバスケットボールを片付け2人と体育館を出ようとしていると、上履きが緑の2人組がジャージ姿で前から向かってきた。
1人は背が小さくて男子のはずだが、少し可愛く見える。
もう1人はイケメンだ。おそらくこの人たちが3時間目に体育館を使うのだろう。
こちらに近づいてくると、今度は諒太からイケメンの方に声をかけた。
「おはようございます」
「おはよう藤澤。そういえば昨日藤澤とだけは会わなかったね」
「そうですね」
あれ、この人……。
「じゃあまた放課後」
「はい」
すれ違いざま、向こうの声が聞こえた。
「今の人って生徒会の後輩?」
「そうだよ。藤澤諒太っていう1年生」
もしかしたらそうかもしれない……。
自分たちも教室へ戻る。
「今の人も生徒会の人?」
先に弘和が諒太に聞いた。
「そう。2年の佐々木先輩」
ああ。やっぱりあの人が例の佐々木先輩か。
そうじゃないかと思ったんだ。
教室へ戻り3時間目が始まった。
その後、4時間目の授業も終わり昼休みになった。
いつもと同じように諒太·弘和と教室で昼飯を食べようとすると、弘和の弁当がおかずだけだった。
「あれ、またかよ弘和」
「またか……」
弘和の弁当がおかずだけだったのは先週の火曜にもあった。そのとき弘和の兄貴の生徒会長が俺たちのクラスに来た。そして弘和の弁当の中を見ると、大笑いして自分の教室へ戻っていったのを覚えている。
「たぶんまた兄貴来るな」
「俺今日もパンだし先に食ってるな」
「ああ」
「一応僕は少し待つよ」
諒太はまだ食べないようだ。
ちなみに先週のときも俺はパンだった。
少しするとまた生徒会長が来た。
「おう藤澤」
「会長またですか」
「ああ。弘和、俺の弁当ご飯だけなんだ。交換してくれ」
「いいけど、これたぶん母さんのミスじゃないよね?」
「そうだ。今朝真衣が入れ替えたんだ」
「あのときと違って俺たちは交換できるんだから意味ないよねこれ……」
「そうだよな」
「あいつ母さんのこと天然とか言ってるけど、真衣自身もけっこう天然でおまけにアホだよね……」
「そうなんだよな……。怒るだろうから本人には言うなよ。とりあえず俺は自分の教室に戻る。藤澤は放課後な」
「はい」
そういえば今日は生徒会の人たちとよく会うな。
同じクラスの菱川さんも確か生徒会だっけか?
「弘和の妹ってアホなの?」
そこ掘り下げるのか諒太……。
「アホだね。少なくとも自分がアホだって自覚がないくらいにはアホだね」
「お前けっこう酷いこと言うな……」
俺はひとりっ子だからよくわからないが、そういうもんなのか?
「会長はアホとか天然ではないけど変わってるよね」
「そうだね。母さんも天然だし弟もけっこう変わってるよ。俺が4兄弟で一番マシ」
でもお前はお前でけっこう勝手なとこあるよな、とは思ったが、それを言うのはやめておくことにした。
雑談しながら昼飯を食べ終え、5時間目、6時間目の授業もこなし放課後になった。
俺は軽音部所属なので軽音部の部室になっている空き教室へ行くと、2年生の宮本先輩が先に来ていた。
設備が限られているので、今日は主に2年生が使う番だ。
でも俺は自分のギターで自主練するので問題ない。
「よお、鈴山」
「お邪魔しまーす。他の先輩たちは?」
「今日俺たちの番だから3年はたぶん来ないだろ。3組寄ったら奥井と越後は掃除当番だったから、もう少ししたら来るんじゃね? 森原は?」
「あいつも今日は来ないですよ」
森原は俺と組んでいる1年だ。俺がギターで森原がベースをやっている。しかし今のところその2人しかいないのでメンバーが足りていない。
2年生も3人で組んでいるが、今はボーカルがいない……はずだ。
3年生は4人いて、その4人でバンドを組んでいる。
「お前らとりあえずどっちか歌う練習したらどうだ?」
「俺歌いたくないんですよね。歌下手だから。森原は歌いながらやるのは無理って言ってるし……。それに先輩たちだってボーカルいないじゃないですか」
「俺たちはいいやつ見つけたから今交渉中だ」
「え、マジすか」
「マジだ。おまけに歌うの上手いからな」
「うわー、いいなぁ……」
少しギターの練習をしていると、奥井先輩と越後先輩がやってきた。
「あ、鈴山いるじゃん。ちょっと教えてほしいことがあるんだけどさ」
「奥井先輩、後輩の俺に教えてもらい過ぎじゃないすか?」
俺は中学1年生からギターを始めたので、高校から始めた奥井先輩よりもギターが上手い。なので奥井先輩はわからないことを毎回俺に質問してくる。
「だって俺より詳しいし、3年の先輩ちょっと怖いんだよ……」
「まぁ奥井先輩ビビリですからね」
「ハハハ、奥井後輩に馬鹿にされてるぞ」
「俺ビビリじゃないってば」
「越後先輩も下手くそでしょうよ」
「俺は下手で当たり前だろ。なんせ奥井や宮本と違ってここでしか楽器使って練習できないからな」
「おい、ドラムだって楽器が無くても家で練習できるだろ。言い訳すんな」
「ハハハ、確かにそうだな。それに文化祭で演奏することになるようなら流石にもう少し上手くならないといけないか。いくら小さい仮設ステージでも恥かくのは嫌だからな」
「いや、今年は軽音部体育館だぞ」
え!?
「あれ? 軽音部って体育館使えないんじゃないですっけ?」
確かそんな話だったような……。
「だよな。俺もそう聞いてたけど……」
「俺も……」
越後先輩と奥井先輩も初耳のようだ。
「なんか演劇部が体育館じゃなくて武道場使うらしくて、その代わりに軽音部が体育館使えるってよ」
「宮本、それホントか?」
「演劇部が体育館使わないってのを同じクラスの高橋から聞いて、それを3年の先輩たちに言ったら速攻で生徒会室行って生徒会長から許可取ったらしい。空いた時間だから早いもの勝ちだったのかもしれん。だから俺たちが文化祭で演奏する場合は、設備移動大変だろうから体育館ってことになる」
「うわぁ……。俺体育館でやりたくないよ……」
「奥井先輩やっぱりビビリでしょ」
「ハハハ」
「ま、俺たちがやる場合はだけどな」
「でも今ボーカル交渉中なんですよね? 練習したほうがよくないですか?」
「……だな。俺家でも少し練習するようにするわ」
「ああ、そうしろ」
「だから俺は練習するために鈴山に聞きたいことがあるって言ってるじゃん」
「はいはいなんですか奥井先輩」
結局文化祭では2年生と3年生は演奏したのだが、俺たち1年生はメンバーが足りなくてステージに立つことはできなかった。




