佐々木 2
真島君とカラオケに行った2日後の夕方、真島君から、明日俺ん家で遊ぼう、という誘いの連絡がきた。
待ち合わせはこの前行ったA駅だ。
真島君の家はA駅が最寄り駅で、そこから電車に乗り学校に通っていると聞いた。
次の日の昼過ぎ、真夏の太陽が照りつける中A駅に行くと真島君が先に来ていた。
徒歩で来ていたようで自分に合わせてくれたのだろうか?
「暑いから中継していこ〜」と、途中コンビニに寄ってアイスを食べながら初めて来た住宅街を数分歩いていると真島君の家に到着した。
歩いている最中、今日は真島君以外の人は出かけていると言っていたけれど、これも自分に気を遣って今日にしたのだろうか……。
真島君に家の中を案内される。友達の家に上がるのは何年ぶりだろう?
「俺お菓子とか用意していくから先に行ってて〜。2階の手前の部屋〜」と、真島君の部屋の場所を教えてもらい、先に部屋へ入ると知らない男子がくつろいでいた。
「お前が佐々木?」
物が乱雑に置かれた8畳の畳部屋で、座布団に座りながらテレビゲームをしていた。冷房がついておりお菓子と飲み物もある。まるで自分の部屋かのようにくつろいでいる。
「……そ、そうだけど、君が真島君の友達の宮本君?」
「そう、宮本夜長。禄斗から俺のこと聞いてるよな?
一緒にゲームすんだろ?」
「う、うん……」
「なら早く座れ。やるぞ」
宮本君のことは真島君から先に聞いていた。クラスは違うけれど、真島君と家が近く幼馴染だと言っていた。
強い口調だけれど嫌がられている感じではない。
すでに座布団とコントローラーが置いてあり、自分もよくやっている格闘ゲームだったので、真島君はまだだけれど先に一緒にやることにした。
「うわ、お前けっこう強いな」
「……宮本君の方が強いよ」
「いや、それはそうだけど、禄斗がクソ雑魚だからお前ぐらいの強さの方が相手してて面白いわって意味」
「……真島君弱いんだ?」
「ああ、ゲームは全部俺より弱い。なんならあいつの姉ちゃんの方が強いぐらいだ」
真島君にお姉さんがいることも事前に聞いていた。理香さんというらしい。
そのお理香さんは真島君曰く『女子らしくない姉』のようで、真島君と宮本君が自分に対してあまり抵抗がないように感じたのは、その理香さんのおかげなのかもしれないと思った。
でも宮本君の前で理香さんの話はあまりしないでと頼まれていたけれどなぜだろうか? 疑問には思ったけれど理由は聞かなかった。
「あー、なんでもう始めてるんだよー」
真島君がお菓子と飲み物を持って部屋に入ってきた。
「こいつお前よりよっぽど強いぞ。お前COMに負けるくらい弱いんだから1回俺達のプレイ見て勉強しろ」
「えぇぇ……」
「お前重いキャラ使い過ぎなんだよ。もっと軽いキャラ使え」
「でも軽いキャラはパワーがないじゃん」
「それが弱いやつの悪いとこだよ。佐々木もそう思うよな?」
「ど、どうだろ……」
急に話を振られ、曖昧に答えてしまった。
正直自分は重いキャラも強い人が使えば強いのではないかと思っていたけれど、初対面ということもありあまり強く反論できなかった。
「でも俺は負けてもいいから好きなキャラ使いたいな〜」
「だから弱いんだよ。あっ、やりやがっな佐々木!」
「ご、ごめん……」
「謝らなくていいでしょ。夜長倒してよ。俺夜長に勝てないんだよぉ」
「いや、佐々木より俺の方が強えから」
結果は宮本君の勝利で終わった。
その後、真島君も混ざって何回もプレイした。結局真島君はCOMに負けることも多く、ほとんどが最下位争をしていたのにもかかわらず、真島君は楽しそうにプレイしていた。
宮本君とは初対面だった割に、ゲームをしながらだったおかげかその後は普通に雑談することができてはいた。
真島君から自分のことは先に聞いていたとは思うけれど、それでも実際に自分と関わってみて宮本君がどう感じていたのか、そこはやっぱり不安な気持ちのままだった。
「よし、次やったら1回休憩な」
「オッケ〜」
「うん」
キャラを選びステージを決めバトルがスタートすると、宮本君が声のトーンを落とし話しかけてきた。
「……佐々木、お前って虐められてんのか?」
そういう話か……。
「……虐められてはない、と、思う……」
多分ゲーム中の方がお互いテレビを見ていて話しやすいと思ってくれたんだろう……。
「……悪口とかは?」
「……言われてる。……女子からも男子からも」
「……俺のクラスでもお前のことを悪く言ってるやつがいるんだよ。……でもお前と今日会って一緒にゲームしてみてさ、俺は別にお前は普通だと思うよ」
「…………」
真島君は黙ったままだ。
「……佐々木が良かったらだけど、クラスにいるとき禄斗と一緒にいろよ。こいつ問題児で多分お前より目立つから壁役にできるだろ。そんでこいつは周りの声とか態度とか完全に無視できるからな。……あと学校始まったら昼休みそっちの教室で3人で一緒に昼飯食うからな。それと俺軽音部なんだけど、そこに越後と奥井ってやつがいてさ。そいつらもいいやつだから、学校始まったらそいつらも紹介するわ」
宮本君は子供の頃虐められていたことがあって、そのとき真島君に救われたらしい。大人になって一緒にお酒を飲んでいたときに口が滑って話してくれた。
具体的な話はしてくれなかったけれど、だからこんな自分を放ってはおけなかったと言っていた。
「それと休みの日とか放課後こいつのカラオケに付き合ってくれ。俺は軽音部だけど歌うのはそこまで好きじゃないし、わざわざこいつの音痴の被害に遭いたくねぇ」
これもそのときに聞いたことで、自分と真島君を一緒に遊ばせている間に理香さんに会いに行くための方便だったと宮本君は言っていた。
もちろんこちらを思ってのことが前提ではあったのだろうけれど。
「……うん、ありがとう」
「……俺もお前と友達になってやるよ」
「……うん」
「隙ありーー!」
「はぁ!? お前ふざけんな!!」
真面目な話が一段落したと思った瞬間、真島君が宮本君のコントローラーをゲーム本体から引っこ抜いた。
「あはははは、夜長隙だらけだ〜」
「ふざけんなよ!! それはさすがになしだろ!!」
真島君が笑いながら宮本君のキャラをボコボコにしているのを見て、いつの間にか自分も大きな声で笑っていた。
2人目の友達ができた。




