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せまい世界のまんなかで  作者: 桜莉 てく
リディア編

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7/20

クヴィスリングはそんな人じゃない!

クヴィスリングによって、チャロアイトがどんどん変わっていきます。



「リディアさんのお父様が山賊に会われた事は、先程もお話しした通りなんだけど、今チャロアイト領全体でも山賊の被害が多くなっているの」


リディアの背中を撫で続けながら、アイリスは痛ましげな表情を浮かべて役員達の顔を順に見比べていく。スコロライトとフローライトはともかく、ナタリーとサリオスには心当たりがあるようだった。


「私も少しだけお聞きしましたわ。ただ、そこまで酷いとは思っておりませんでした…。それに、…そう。確かクヴィスリング様が、山賊を鎮圧なさっているとも聞いたのですが?」


「あぁ。現ヴェルトュ・チャロアイト男爵の弟で人格者だと。率先して山賊から民を守り、チャロアイト領を危機から救った……」


「違います!あの人は……クヴィスリングはそんな良い人じゃない!!」


ナタリーが自分の口元へ片手を添え、少しずつ思い出すように自分が持つ知識を広げると、その後を繋ぐように一度頷いてサリオスが後を引き継いでいく。

話がクヴィスリングに移り変わり、その功績を讃える物へと変わった瞬間、弾かれるようにリディアが顔を上げ、再び大粒の涙を流しながら吼えるようにサリオスの発言を否定する。

その剣幕に背中を撫でていたアイリスが一瞬驚いて手が止まるも、今度は宥めるように背中を軽くポンポンとあやし始めた。

ナタリーとサリオスも、火がついたように泣き始めるリディアにどうすれば良いのか分からない。ただ、自分達の発言が元であろう事は見当がつき、申し訳なさそうに肩を下げて所在無さげに座り直した。


「それがね、どうやらクヴィスリングが山賊を扇動したみたいなの。……あ、リディアさん。そんな風に擦っては目が腫れてしまうわ」


モゾモゾと座り直す2人を困った様に見つめ、アイリスはなんでもない事のように全員に告げた。驚いて目を見張るレオン以外の役員たちを見回すと、視界の端に必死に涙を止めようと袖口で目を拭うリディアが映り、慌ててハンカチを差し出す。何故か役員達の方から妙な視線を感じたが、アイリスは気にせず少しずつ涙を吸い取るように拭ってやる。


羨ましそうな、妬ましそうな視線をリディアに送る役員達を、レオンは苦笑しながら眺めていた。


(我が婚約者殿は、本当に人を惹きつける)


未だに泣き続けるリディアと、慰めるアイリス。それをジッと見つめる役員達の三竦みに、レオンは面白そうに小さく笑った。


「申し訳ありません。皆さんが悪い訳ではないのに……」


ようやく泣き止んだのか、ハンカチから顔を上げたリディアの瞳は何かを決意したようだった。

顔を上げた瞬間の奇妙な視線に引っ掛かりを覚えたが、改めて見直した役員達の表情も各々痛ましげな物だったので、特に気にかけないことにした。


「元々チャロアイト領はそんなに裕福な領ではありませんでした。…それでも、領のみんなは本当に優しい人達ばかりで、母と私がいきなり嫁いで来ても嫌な顔せず、むしろ歓迎して下さいました。弟と妹が出来た時も、畑で採れた野菜や、お店で売るはずのパンなんかも、自分のことのように嬉しそうに持ってきて下さって。…そんな領に恥じないために、私は一生懸命勉強しました。領を継ぐことは出来ませんが、それでも何かしらのサポートが出来るならって…」


ポツリポツリと唇から零れ落ちるように話し始めると、時折その光景が思い出されるのか懐かしそうに、リディアは幸せそうに微笑んだ。

それは今までに散々見てきた媚びた様な偽りの笑顔ではなく、見る者の心がほんわり暖かくなるような、そんな優しい笑顔だった。


「それが、いつの頃かクヴィスリングが屋敷に訪れるようになって…。最初は2ヶ月に1回とかだったのに、段々頻度が増してきて…最近では屋敷に住み着くようになりました。お父様は弟だからと優しく接していましたが、鎮圧の為に帰ってこれなくなると、クヴィスリングは屋敷内も掌握してしまいました。私たち家族は自分の家だというのに、クヴィスリングが指定した場所でしか生活が出来ず、機嫌を損ねればご飯が出ない日もありました。使用人の中には、助けてくれようとした人もいたのですが、クヴィスリングに解雇されてしまって…。そこからは、私たち家族に関わらないようお願いしたんです」


幸せそうな笑顔がだんだん曇り始め、苦痛に顔を歪ませながら、それでも一生懸命リディアは話していく。話を聞いていた生徒会の役員達も、膝の上で両手を握り締める者や、憤慨する者など反応は様々だった。


「お父様が居ないのを良いことに、クヴィスリングはやりたい放題していましたが、お父さまには全く逆の報告をしていたようです。久しぶりにお父様が屋敷に帰ると、それまで好き放題していたクヴィスリングが時々失敗することがあり、それで喧嘩になっていました。王太子殿下に突撃する少し前、突然山賊達の暴動が起こって、お父様は再び鎮圧しに行かざるを得ませんでした。そしたら、クヴィスリングは私を……山賊の鎮圧の為に嫁がせると言い始めたのです」


段々と怒りからなのか悍ましさからなのか、震えてくる体を自分の両手で守るようにギュッと抱き締め、時々鳴りそうになる奥歯をグッと噛み締めた。


「散々拒否したのですが、そうしたらお父さま含め家族が犠牲になると。小さい弟と妹がいるので遠くまで逃げられず、4人で街中にある古い小屋に避難しました」


「チャロアイト男爵はどうなさってたの?」


痛ましげに眉を寄せ、同じ女性だからこそ分かる悲しみにナタリーは心の底から同情した。

フローライトも、その方面で平民が故の断れない苦しみを散々味わってきた。リディアの話は過去の自分に重なるものがあり、聞いていて苦しくなってくる。けれど、リディアと違い自分には「生徒会広報」という立場をくれたアイリスがいた。自分でも知らない内に流れていた涙を乱暴に袖口で拭い、フローライトは再び聞く姿勢へと正す。

すみません、2話ぐらいすっ飛ばして先のお話を投稿してました(土下座)

眠気に誘われるまま投稿、ダメ、絶対(´;ω;`)

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