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せまい世界のまんなかで  作者: 桜莉 てく
リディア編

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小話 アイリスは女神様

レオンとアイリスから「今日はもう帰りなさい」って言われた後の、生徒会役員達のお話です。

役員たちは悶々している。

時は戻り、アイリスから今日の仕事は終わりだと生徒会室から出された他の役員達は、疲れを表情に浮かべながらも生徒会室に残った2人の事を気にしていた。


「ねぇ、サリオス。やっぱり戻ってお仕事をした方が良いのではないかしら?きっとお優しいアイリス様のことだから、私達が帰った後も残ってお仕事される気がするの」


ナタリーは後ろ髪を引かれるように、何度も生徒会室の扉を振り返りながら、重い足取りで校舎から出る為に扉へ向かう。その隣を歩くのは、2年生のスコロライト。

平民でありながら、商才と算術の才を買われて会計を任されている。黒髪ショートで細身の体躯だが、その実護身術を習っているそうで、意外と強いことをナタリーは知っている。


本人は穏やかな顔つきで一見、優男に見えるからか、平民なのに成績上位者だからなのか、よく下級貴族の呼び出しに「貴族からの呼び出しは断れないから」と肩を落として応じては、嬉々として返り討ちにしているらしい。

(というのは、平民に負けたなど口が裂けても貴族が口にすることはないので、真偽が分からない。また、スコロライト曰く、あんなの口先だけで勝てるらしい)


銀縁のメガネをスっと上げると、こちらも心配そうな表情で生徒会室の扉を振り返っていた。


「ナタリー様が仰ることも分かります。殿下とアイリス様は、こんな平民の僕にすら分け隔てなくお優しい。」


「本当に。平民の私達が、こんな栄誉ある生徒会の一員になれるなんて…。殿下とアイリス様には感謝してもしきれません」


朝焼け色の瞳を潤ませ、感動したように両手を胸元で祈るように握り締める女性。

光の加減で薄青にも見える柔らかな銀髪を靡かせ、貴族すらもハッとさせる美貌を持つフローライトは、この容姿のせいで学園の中でも目立っていた。

「暁の妖精」と呼ばれた彼女は、貴族達が戯れに愛人や遊び相手にしようと、連日2年のフローライトがいるクラスに押し寄せる為、せめてクラスの迷惑にならないようにといつも隠れるように一人でいた。


あの頃は幾度も自分の容姿を呪い、前髪を伸ばして出来るだけ顔が見えないようにしていた。

そんな辛い学園生活だったところに、アイリスから声を掛けられたのが始まりだった。


「貴女、とても綺麗なのに勿体ないわ。私が貴女に前を向くための立場をあげる。だから、私を助けてくださらない?」


今でも正確に一言一句言えるこの言葉は、フローライトが変わるキッカケとなり、大切な魔法の言葉となった。

今でも、この言葉をお守りにアイリスの為に生徒会広報として色々動いている。


忌まわしかった容姿は、広報活動をする上でこの上ない武器になった。

フローライトが少し着飾るだけで、貴族はこぞって関心を引く為にフローライトの話を聞いてくれたり、質問に答えてくれる。

立場だけでなく使命まで与えてくれたアイリスは、フローライトの中で女神にも等しい存在となり、崇拝の対象でもあった。


-余談だが、アイリスの為にハニートラップまで仕掛けようとした時は、アイリスだけでなく生徒会役員全員で止められた。


スコロライトにも似たような事があり、その時もアイリスに助けられた事から、2人共にアイリスを敬愛して役員生活を楽しんでいる。


だからこそ、今日起こったリディアの件は2人にとって唾棄すべき案件であり、こうしてアイリスを残して生徒会室を出なければならないという事実に、申し訳なさで押し潰されそうだった。

ただ、いつもの視察に加え、今日はリディアからの突撃もあった。その為、自分達同様アイリスとレオンも疲れているだろうと考え、当然直ぐに帰るものと思っていた。


「本当に、あのリディアという令嬢はどうかしてます。生徒の為に親身になってくださっているアイリス様の邪魔をするなんて!しかもあまつさえ、あの女神の如きアイリス様をわ、悪者扱いするなど!!」


思い出したリディアの傍若ぶりに、あまりの怒りでフローライトの目の前が真っ赤に染まるような感覚さえあった。

両手をグッと握り締めて怒りを耐えれば、隣でスコロライトも同じように頷きながら両手を握っている。

ナタリーに至っては、両手を組んだまま凍るような視線で床を睨みつけている。

一番落ち着いているように見えるサリオスも、片足を細かく踏み鳴らしていることから苛立っている事が見て取れた。


ただ、「名も知らぬ方」として扱ってしまった以上、こちらから介入することも出来なくなってしまった。アイリスの慈悲深い心で、喧嘩を売られた相手すら守ってしまうと感動と苦悩でジレンマを感じていた4人は、実際には早く視察を終えたかっただけのアイリスの思惑など一切気付くことなく、悶々とした気持ちを抱えたまま寮へと帰ることになった。


翌日になっても苛立ちは消えなかったが、生徒会室に着いた途端、レオンとアイリスがあの後仕事を全て片付けてしまったことを知り、また違った意味で震えることになる4人だった。

役員達の中では、「アイリス>レオン」です。

でも、レオンもアイリスが好きなので、「まぁいっか」で済ませてます(笑)

読んでいただいて、ありがとうございました。

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