僕はクヴィスリング。クヴィスリング・チャロアイト。
初めてクヴィスリングに会ったのは、11歳の春。
お父さまからは、チャロアイト領の為に新たな産業のヒントにならないかと、1人で隣国に行っていたって聞いた。
その日は、隣国から定期報告の為に帰国したんだって..
「初めまして、小さなお嬢さん。僕はクヴィスリング。クヴィスリング・チャロアイト。お父さんの弟なんだ。これからよろしくね」
ヒョロっとした長身の体に長い手足。
笑顔で挨拶してくれたけど、薄灰色の瞳は笑ってなくてどこか怖かった。
その時は3日くらいの滞在で、すぐにまた隣国へ帰っていった。
自分でもよく分からないけど、ずっと胸がグルグルして嫌な気持ちだった。
なぜ?って聞かれても説明出来ないし、お父さまやお母さんに心配かけたくないから、その時は気のせいだと思うことにしたの。
その頃から、少しずつ山賊の被害が少しずつ少しずつ領内に広がって行った。
まるで、黒いインクが水の中で少しずつ滲んでいくように。
お父さまは連日のように届く被害報告に頭を悩ませて、家令に相談したり、他の領主にも手紙を送って被害状況なんかを確認したりしてた。
でも、手紙は1枚も返ってこなくて、実際に確かめに行かせた使用人は、3日後に川の中で見つかった。
多分、山賊にやられたんだろうって、「行かせるべきじゃなかった。彼には申し訳ないことをしてしまった」って、お父さまは痛ましげに言ってた。
後から分かったけど、そもそも手紙は1枚も届いたなかったんだ。
家令から手紙を受け取った配達員は、既にクヴィスリングに買収されていた。
だから、受け取った後に直ぐ灰にしてしまっていて、その後クヴィスリングに報告していたらしい。
そんな状況の中帰国したクヴィスリングは、お父さまを心配して雑務なんかを進んで代わっていた。
お父さまはとても感謝していたけれど、その時に男爵領のお金の動きや資産、流通なんかも把握したんじゃないかって、警備隊の人達は言ってた。
そして、私が12歳になる頃には山賊の被害はどんどん酷くなって、領内の騎士団では追い付かず、お父さまも鎮圧に出なければならなくなっていた。
段々とチャロアイト領が不穏な感じです。
数ある中から、見ていただきありがとうございました。




