貴族にしてしまってごめん
「お父さま」って呼ぶようになってから、私もお父さまも少しずつ遠慮みたいなものが無くなってきた。
悪いことをすれば、ちゃんと怒ってくれたし、もちろん褒めてもくれた。-大袈裟なくらい。
それから、少しずつ貴族になるためのお勉強も始まった。
元々読み書きや計算は、簡単なものならお父さんやお母さん、村に来る行商人の人から教えてもらっていたからすぐにできたけど、礼儀作法は全然ダメだった。
カトラリーの順番やナイフの使い方。紅茶の飲み方や歩き方。果ては姿勢まで、覚えることがたくさんありすぎて、その頃はよく熱を出した。
きっと、オーバーヒートしたんだと思う。
何度やっても全然出来なくて、悔しさといら立ちから何度も泣いた。
ある時、癇癪が爆発してうっかりお父さまに
「こんなことばかりさせるお父さまなんて嫌い!」
って言ってしまったことがある。
その時は、「そうか、ごめんね」って寂しそうに笑ってたお父さま。
その日の夜中、私がトイレに向かって廊下を歩いていると、ふとお父さまの執務室から細く光が漏れてるのが見えた。
まだ起きていたことにびっくりして、そうっと近付いて中を覗いたら、ソファに座ったお父さまが、1人で静かに泣いていた。
「ごめんね、リディ…。辛い思いさせてごめん。貴族にしてしまってごめん」
そう言って、お酒を片手に泣いているお父さまを見て、私は酷く後悔した。
あんなに愛してくれているお父さまに、自分はなんてことをしたんだろうって。
ベッドに戻ってからもお父さまの姿が焼き付いて、私も泣きながらいつの間にか眠ってた。
翌日から、今までが嘘みたいに頑張った。
出来ない所は何度でも挑戦したし、分からない所は何度でも礼儀作法の先生に聞いた。
お父さまがビックリして、毎日無理はしていないかとか、体調は大丈夫かとか心配してくれたけど、出来た時にはギュッと抱き締めて沢山褒めてくれた。
そのまま抱き上げてクルクル回るのは怖かったけど、お父さまやお母さんが笑顔だったから、それが1番嬉しかったんだ。
そうして、ある程度礼儀作法やマナーが身についた11歳。
あの男が-クヴィスリングが少しずつ我が家に入り込んできたんだ。
リディアが平民から貴族になった為に、作法やマナーなど覚えなければならないことが、どうしても増えました。
男爵は、必死に頑張っているリディアを褒めたいけど、同時に追い詰めてしまっている原因が自分であることも理解して葛藤します。親心って複雑ですよね…。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。




