私はリディア・チャロアイト
本編を、リディア側から見たおはなしになります。
リディアが必死に頑張ってた理由が、少しでも伝われば良いなと。
sideリディアは、少し過去から始まります。
私の名前はリディア。
リディア・チャロアイト。
でも、5歳までは、ただのリディアだった。
私が住んでいたのは、とても小さな村だった。
村の人たちはみんな温かくて、私の家族はお父さんとお母さんだけだったけど、村の人たちもみんな家族みたいだった。
お父さんや村の男の人たちは、近くの森や山で狩りをしたり、そのついでに木の実や果物なんかも採ってきてくれた。
その木の実や果物を使って、お母さんと一緒によくパンやクッキーを作った。
お父さんは、いつも「最高においしいな」って頭を撫でてくれていた。
裕福ではなかったけど、楽しくて幸せな毎日だった。
だけど、私が5歳の秋、村に山賊が来た。
村のおじさんたちは、手に色んなものを持って戦ったけど、次々に命が刈り取られていった。
お父さんも、お母さんと私に「逃げなさい」と言って、戦いに行ってしまった。
私はお母さんに抱かれて、片手で肩口に顔を押し付けられていた。
苦しかったけど、周りから悲鳴や怒号がたくさん聞こえたから、怖くてずっとそのまま震えていた。
途中で、お母さんが「あなた!」って叫んでからは、お母さんも小刻みに震えていた。
今思えば、泣いていたんだと思う……。
そこからはあまり覚えていないけれど、住む場所が村から綺麗な街に変わったのは覚えている。
色々なお店や、村よりたくさんの人たち。
たくさん人はいるのに、なぜかお父さんはいなかった。
毎日、色んなところでお父さんを探していたら、私は7歳になっていて、お母さんと一緒に新しいお家に行くことになった。
「新しいお父さんの所に行くのよ」
お母さんがそう言ったから、
「リディアのお父さんなら、村にいるよ」
って答えた。
お母さんは、困ったような、それでいて悲しそうに笑った。
チャロアイトに来てからは、男爵がとても優しくしてくれたけど、なかなか「お父さん」って呼べなかった。
だって、リディアのお父さんは、お父さんだけだもの。
そうしているうちに、弟と妹ができて、私はお姉さんになった。
可愛くて、ふにゃふにゃしていて、一生懸命守ろうって思った。
だって、もう8歳のお姉さんだもの。
それには、私には絶対にやらなくちゃいけないことがあった。
お母さんと男爵に内緒で、こっそり料理長に頼んで厨房を貸してもらった。
あの時の木の実や果物はないし、お家の台所よりも断然広いから大変だったけど、精一杯思い出しながらパンを作った。
料理長が「オーブンはやりましょうか?」って聞いてくれたけど、最後まで自分でやりたかったから断った。
危ないから料理長に見守ってもらっていたけど、やっぱりオーブンの火加減は難しくて、ちょっと焦げてしまった。
泣きそうになった私の頭を、料理長が撫でながら「きっと、大丈夫ですよ」って慰めてくれた。
パンを1つだけ持って、お母さんと男爵の所へ走った。
ベッドに座っているお母さんの膝に弟を座らせて、2人でベビーベッドに寝ている妹を見ていた。
男爵はすぐに私に気付いてくれて、優しく「おいで」って言ってくれた。
モジモジしながらそばに行くと、男爵が私の持っているパンに気付いてくれたから、無言で差し出した。
驚いて目が丸くなった男爵の顔が面白くて笑ってしまったけど、なんとか男爵に「あげる」って言えた。
一瞬、男爵の顔がくしゃっとなったけど、すぐに大事そうにパンを持って、宝物みたいにそっと食べてくれた。
不格好で、ちょっと焦げたパン。
男爵は、涙をぽろぽろ流しながら一口食べ終えると、私の頭を優しく撫でてくれた。
「最高に美味しいパンだね」
その瞬間、私は胸がぎゅーってなって、赤ちゃんみたいにたくさんたくさん泣いた。
そしたら、パンを持ったままの男爵がそっと抱きしめてくれて、背中を優しく撫でながら「大丈夫、大丈夫」って、何度も言ってくれた。
「あ……ありがとう、お父……さま」
泣きながらだから上手く言えなかったけど、やっと言えて、すごく嬉しかった。
でも、お父さまはそこから、すごくすごく泣いた。
「ありがとう……ありがとう……」
って何回も言いながら泣くから、私も一緒にまたたくさん泣いた。
ふと見ると、お母さんも静かに泣いていた。
弟だけは不思議そうにしていたけど、やっとこれでちゃんとお姉さんになれたと思った。
これからは、私がみんなを守ってあげるからね。
薄々、お父さんがいなくなった事は理解しているものの、感情が追い付かなかったリディアですが、守りたいものが出来ました。
ここまで、お読み頂きありがとうございます




