【完】知っているつもりは、所詮「つもり」
全員が退室するのを見送り、レオンとアイリスも身支度を始める。
ティーセット等は、予めアイリス付きのメイドが片付けておいてくれたので、簡単な身支度だけで済むのがありがたい。
「アイリス、今日は助かった。ありがとう」
ふと隣から優しく名前を呼ばれ、アイリスは身支度する手を一旦止めて、レオンがいる方へ顔を向ける。見守るような、それでいてどこか情けない表情を浮かべているレオンに、アイリスはゆっくりと首を振る。
今回の件に関して、レオンが酷く動揺していたのを知っている。アイリス自身、授業や王妃教育などでこの国の歴史や、闇と言われる黒い部分も学んできた。だから、レオン同様少しは自分も分かったつもりでいたのだ。
それでも、実際にリディアの事情を聞いた時、アイリスは自分が全然分かっていなかった事を知った。沢山学んできたけれど、所詮は暖かい場所での対岸の火事だった。
公爵令嬢である自分ですらそうなのだ。
将来国を背負うレオンは、もっと衝撃的だったのだろうと思う。
--知っているつもりは、所詮「つもり」--
それは、今まで築き上げてきた自信や、知識の量など一瞬で壊した。今回の件に関して言えば、いくら王太子と公爵令嬢と言えど、自分達がどうにかするには手に余った。
まだ学生の身である自分達が、領の問題に手が出せる筈もない。だから、2人は連日深夜まで調べ回り、大人へ奏上する結果となった。
アイリスは、宰相である父親へ。
その父親の力を借りて、レオンと共に国王へ
段階的にはなるし、もしかしたら時間も掛かるだろう。それでも、これ以外に解決方法が見つからなかった。
悔しかった。
自分達を頼ってくれたのに、助けられなかった
生徒会長・生徒会副会長・王太子・公爵令嬢
呼び方など沢山あるが、所詮は子どもに変わりはない。
悔しかった。
自分達が普通に生活している間に、命を削られるような思いをしていたリディア
他の役員達の前では決して見せないが、レオンは何度も悔しさで溺れそうになっていた。
朝の剣の稽古以外に、何かを振り切るように夜中も素振りをしていた事を、アイリスは王宮の騎士から聞いていた。
悔しかった
レオンの事は分かっていると思っていた。
でも、結局アイリス自身も本当の意味ではレオンを守れていなかった。
隣に立てていなかった。
「今日、お父様からクヴィスリングの件について会議が開かれると聞きました。山賊を煽り民の命を奪った事、アロチャイト男爵の命と、継承権を奪おうとした事についての処罰を決めるそうですわ」
少しだけレオンに近付き、その表情をそっと伺う。そうか、とだけ呟き、少しだけホッとしたようなレオンにそっと腕を回す。
「僕は、知らなさすぎた」
「ええ、私もです」
「情けないけれど、それでも一緒に居てくれる?」
「私だって、沢山皆さまに助けていただきましたわ。情けないのは、同じです」
「アイリス」
「はい、ずっとお傍におりますわ」
抱き締めた腕にそっと少しだけ力を込めれば、レオンの方からも恐る恐る抱き締めてくれた。
暫くの間そうしていたが、流石に気恥ずかしくなってきたのか、少し赤い顔のレオンが離れた
「そ、そろそろ帰ろう」
「そうですわね。最近は帰りが遅くなってしまいましたし、今日くらいは早く帰って読書でも楽しみますわ」
レオンからスっと差し出された腕に掴まり、エスコートされたまま生徒会室を出た。
まだ自分達は学生なのだ。まだ十分成長できる。そう、アイリスは決意を秘めた。
これにて、「リディア編」は完結となります。
次回からは、この本編に至るリディアのお話「リディアside」を投稿いたします。
ご興味頂けましたら、またよろしくよろしくお願いいたします。
ここまで、お読み頂きありがとうございました。




