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テンプレ異世界はバグばかり?異世界を救ったら家計が赤字になったので、配信業をはじめます  作者: ニャルC


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第9話:暴力的な苦味と理外の理

ハッカーとしての論理――「正しい情報を提示すればエラーは修正される」という希望は、

シン新宿の悪意に満ちた群衆心理の前で完全に無力化された。

戦略は詰み、ミントは人生で初めて「計算不能な絶望」の淵に立たされる。


退屈そうに膝にいたラムが、瞳を細めて口を開いた。

「敵の城が分かっているなら、落城させる?」

ラムの真の姿、ドラゴンの力ならビルの破壊くらい容易いだろう。


その言葉に、影に潜んでいたニクスが静かに同調するように姿を現す。

彼女の足元には、いつの間にか暗器がずらりと並べられていた。

「ミント様、暗殺……いえ、不慮の事故が必要であれば、いつでも」


ミントは無言で首を横に振った。

夜明け前の深い闇がポッドを支配した。


「リリの事務所の入ったビルを破壊する、痛快ね。でもテロリストじゃあるまいし」

ガラにもない空想。暗いモニターの前で最適解を求めて思考の迷宮を彷徨っていた。


「ミント様、お疲れのようです。……その、少し濃いめに淹れてみました」

生真面目な顔をしたヘレンが、湯気の立つマグカップを差し出す。

ミントは思考の糸を解かぬまま、無意識にそれを受け取り、深く啜った。


「――ッ!? ごふっ、げほっ!!」

脳を直接殴られたような暴力的な苦味。ミントは思わずコーヒーを吹き出した。


「苦すぎよヘレン! 豆の分量、完全に間違えてるよ!」

「も、申し訳ございません! インスタントとレギュラーを間違えてしまい……!」

激しく狼狽するヘレンの姿。


そして、飛び散ったコーヒーの飛沫が、膝の上のラムを濡らす。

「……ミント?」

「鱗の王」としての威厳など微塵もなく、ラムが瞳を不機嫌そうに細め、小さな手で顔を拭う。


そのあまりに非論理的で、低次元なミス。

しかし、その強烈な感覚が、オーバーヒートしかけていたミントの脳を強制的にリセットした。


苦すぎるコーヒー、そして不機嫌なドラゴンが結びつく。

「……苦すぎるコーヒーの刺激で、謝罪のことなんて一瞬で忘れた。

だとしたら――これより大きな、圧倒的なインパクトを世界に叩きつけたらどうなる?」


ミントの思考が、ハッカーとしての冷徹な演算を超え、

現実を捻じ曲げるプロデューサーとしての直感で再起動(リブート)する。


「……そうよ。

言葉のロジックでアンチを言い負かす必要なんてない。理性、理屈でダメなら、理外の理で対応すればいい。

圧倒的な物理でデジタルなノイズを上書きしてしまえばいいのよ」


ミントはミラーグラスを中指でクイと押し上げ、モニターに映る「旧新宿廃棄区画」の地図を睨みつけた。


ミントは即座に行動した。

解体業者経由で当局へ旧新宿廃棄区画の使用許可を申請する。

ヘレンの勝利に全額ベットして得た配当金を「袖の下」として添えて。


「ハッカーがギャンブル、なんてね」

シニア・プロデューサーKに対し、生公開の謝罪動画のオファー(罠)を送る。

和解金を即金で支払えるほど、新興のウチに余裕はない。

ならばプロデューサーKは『旧新宿廃棄区画という過激なロケーションでの生謝罪』なら再生数が稼げると考える。

わざわざ廃墟のCGやARを作るのはコストに合わない、ロケの方が安くて珍しい映像になる。

そう判断するはず。


※

件名:【回答】損害補填に関する合意の提案および「公開謝罪配信」の実施について

シニア・プロデューサーK様


提示いただいた条件を精査いたしました。

現状、弊所にはご指定の賠償金を即時一括で支払う余力はなく、またヘレンおよびニクスの移籍についても、

彼女たちの特性上、貴社の既存の運用フローでは管理コストが見合わないと判断しております。


つきましては、賠償金全額を相殺し得る、

以下の「一発逆転」のプロモーション企画による和解を提案いたします。


企画:シン・新宿 崩壊の目撃 ―― P自らによる対面謝罪配信


実施内容: ミントP本人による、リリ様への直接的な対面謝罪および和解のライブ配信。

ロケーション: 旧新宿廃棄区画・第4エリア(未浄化廃墟群)。

企画趣旨: インフルエンサーの頂点であるリリ様が、自分を貶めた「バグ」を、

逃げ場のない廃棄区画で直接断罪する。


期待効果:

 超過激なロケーションによる、シン・新宿史上最大の同時接続者数の獲得。

 リリ様の「寛大かつ圧倒的な勝者」としての地位の再確立。

 広告収益および投げ銭による、賠償額を大幅に上回る収益の確保。

この配信の収益権をすべて貴社に譲渡することで、本件の賠償とさせていただきたく存じます。


ミント

※

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