2話 このご時世にアイドルなんて
「あれ、もしかして本当になんにも聞いてない? 珍しいな……前は『三依さんには説明がムズカシーですから~』って言って全部説明してくれたのに」
「な、なんにも聞いてないですよ!!!というか、なんでオーディションの時言ってくれてないんですか!? これ、何らかの罪に問えますよね!? 」
景品表示法違反? いや、詐欺罪?と祝詞斗が考えられうる限りの認められらそうな罪を呟いていると、三依がオマエさー、と呆れた顔をした。
「言う訳ないじゃんそんなこと。あくまでオマエが受けたのはアイドルグループ『Midnight Phoneix』のオーディションだもん。まーその『Midnight Phoneix』がたまたまちょーとワケアリのアイドルグループだったのと、オマエにそのワケアリグループに入るサイノー? ソシツ? があったってだけ!」
「は、はあ……?」
そんなこと素質いらないですよ、と口から出かけたが、流石に理性が勝った。祝詞斗は一旦落ち着こうと努め、一体なぜ戦うことを避け続けた自分がどんな才能があったために「ウチュージンとバリバリ戦う」アイドルグループに入ってしまったのか尋ねることにした。その返答を聞いてから、今後の行動を考えたほうが得策だろうということは十二分に理解していた。
「じゃあ、オレにはどんな才能があって皆さんの元に加入したんですか?」
「祝詞斗君急に落ち着いたな」
「んーとね、それは"センパイの"ボクが今から説明してあげる! あ、リンさんとショーリさん達、ボクが間違ったこと言ってたら教えてね!」
じゃあシュート君、よ~く聞いてね、と三依が前置きし、コホン! と咳払いをした。
「今の日本のアイドルグループって、ぜーんぶ政府のカンカツにあるのは知ってるでしょ?」
「もちろんです」
「その中でも2つのグループに分けることができて……ボク達か、ボク達以外か、なんだけど」
「正確に言うと前者に分けられるのは某たちのみでござる」
「そ! フツーのアイドルの人達の仕事は、歌って、踊って、みんなに笑顔と元気を届けるのが仕事! だけどボク達はちょーと違うんだよね」
三依はそう言うと、ポケットから手のひら大の桃色の小さなキューブを取り出した。それ、何ですか?と祝詞斗が尋ねると、それを軽くたたいた。
「えっ……ガトリング砲……?」
「そー! すごいでしょーこれ!オマエも健診の時に入れたはずだけど、なんかチップ? の力で体を強化して動いてるんだって!」
すると先ほどまでキューブだったものは一瞬で展開され、1メートルは有ろうかという大きさの最新式のガトリング砲として三依の両手に収まっていた。
「ボク達の仕事は、歌って踊るのも勿論なんだけど、こーいう武器を使ってウチュージンと戦うことも仕事なんだ!」
「私たちの所属はエンターテインメント部門ではなく……内閣の防衛戦線統制本部となっている。この本部のトップは首相が務めているから内閣から直接指示を受ける立場にあるということだ」
「内閣!?」
「そうでござる! 某たちは選ばれたエリートでござるよ!……まあ、一般兵が使うのとは少し違う特殊チップの適性が高いだけでござるがな」
一連の会話で自分がとんでもないところに来てしまったことだけは理解した祝詞斗。その後も三依「先輩」によって「Midnight Phoneix」の来歴が伝えられたような気がするが「これから自分は戦場最前線で戦う必要がある」ことが分かった時点で彼の次の行動は決まっていた。
――逃げよう、今すぐに! ここから逃げ出そう!――
祝詞斗は加入初日にして既に逃亡を決意していた。




