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アイドルって宇宙人と戦わないといけないんですか?!  作者: 新萌
一章

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1話 ようこそ「Midnight Phoneix」へ

「では土岐大和(ときやまと)さん.....いえ、規約によるとこの施設の中では神風祝詞斗(かみかぜ しゅうと)さんでしたね。今から入寮前の健康診断と血液検査、管理用チップの埋め込みに向かっていただきます。荷物はこちらでお預かりいたしますので」

「何回聞いてもすごい厳つい名前だな....あ、よろしくお願いします」


 オーディション合格の報告を受け取ってから少し経ったある日、大和、改め「Midnight Phoneix」の新メンバーである祝詞斗(しゅうと)は、一人の職員に付き添われ、真っ白な壁と床で構成された政府のエンターテインメント部門の施設にいた。


「……東京中枢地区に来るのは初めてですか?」

「はい、まあ……大学も横浜ブロックにあるのでそもそもブロック移動すらしませんから……」


 地球外生命体の襲撃を受けてから約200年、日本の情勢は一変した。最後の文民の首相によって制定、発令された国会緊急非常事態総動員法により、日本の総統は軍人が担うことになった。日本だけでなく、世界中で日に日に被害が増し、地球規模での迎撃を余儀なくされた。戦争による死者と少子化によって3000万人にまで人口が減少した日本は、一般国民の管理及び安全確保の効率化のために都道府県制を廃止、主要都市を17個のブロックとし、安全区域を作成した。また、軍事関連施設などの重要な機能を持つブロックは透明な対地球外生命体物質でできた透明なドームで覆い、入出場にも厳重な手続きを踏ませた。さらに、東京は一般国民の住居ではなく、政府機関を集約させ中枢地区とし、政府役員を住まわせた。


「……神風さん、あなたがどのような思いでアイドルグループに加入しようとしたかは存じませんが……前線に出ないとはいえど、アイドルをはじめとしたエンタメは、国民の士気を高め、政府の考えを浸透させるために重要な役割を担っています。その芸名も、一部です。決して軽く見ることのないように、お願いします」

「は、はい……すみません……」

「まあ……皆さん同じようなことを言われますので……じきに慣れますよ、神風さん。では、健康診断はこちらでお願いします。終わりましたら、今後生活する寮にご案内いたしますので、荷物のご確認をお願いいたします」


 職員はでは、私は一旦失礼いたします、と言い、一礼して去った。


「この後はメンバーの人たちとの顔合わせもあるし……オレ、本当に『Midnight Phoneix』に入ったんだな......」

 祝詞斗はしみじみと呟き、案内された部屋に足を踏み入れた。



***********


「以上で、生活棟の説明は終了です。こちらでメンバーがお待ちになっておりますので、後のことはメンバーの皆さまからお聞きください。ああ、先ほど埋め込んだチップですが……何か異常がありましたら直ぐに申し出てくださいね」

「はい。丁寧に説明していただきありがとうございました」

 一連の説明を聞き、遂に「Midnight Phoneix」のメンバー、これから生活を共にする先輩との対面の時間となった。「レッスンスタジオ」と書かれた看板の下の扉を開けると、鏡張りの壁の前で曲に合わせて踊っている4人のメンバーがいた。


 

 ――かっこいい――


 一目見ただけのはずなのに、祝詞斗は途端に引き込まれた。いつもテレビから流れている、何度も何度もパフォーマンス映像を見たはずなのに、指先まで一糸乱れぬダンス、いきいきとした動き、完璧なフォーメーション……何をとっても完璧なパフォーマンスだった。


「みなさん、レッスン中にすみません。予定より少し早くなってしまいまして」

「……ん、ああ、構わない。私たちも今休憩しようと話していたところだ」


 曲が止まったタイミングで職員が4人に話しかけると、センターの内の一人、赤い長髪を一つに結んだ男性が笑顔で答えた。


「彼が先日お話ししたオーディション通過の新メンバーです。『神風祝詞斗』という名前での活動になります」

 職員が祝詞斗に自己紹介するように指示した。


「あ、はい、……この度皆さんと一緒に活動させていただくことになりました、土岐...神風祝詞斗と申します。22歳です。未熟者ですが皆さんに追いつけるように精一杯精進します。どうぞよろしくお願いいたします」

 少し上ずった声で言い終わると、職員がそれでは私の職務はここまでですので、と言い残し、赤髪の男性に数枚の紙を渡して去っていった。


 一体何を話したらいいものかと祝詞斗が思案していると、背の高い金髪の男性が近づいて来た。

「君が新人か! 神風……祝詞斗君、だったね。俺は寿驎(ことぶき りん)、27歳だ。知ってると思うけど……イメージカラーはイエローで、『Midnight Phoneix』のサブリーダーを務めている。分からないことがあったら何でも聞いてほしい!」

 爽やかに笑った左目を前髪で隠した短髪の男性――麟は気軽に麟さん、って呼んでくれ、と祝詞斗に手を差し出した。祝詞斗がこちらこそよろしくお願いします!と緊張しながらその手を握っていると、先ほど麟の後ろで踊っていたさらに背の高い緑色の髪のメンバーもこちらに近づいてきた。


「お初にお目にかかるでござる!(それがし)健元康(たける もとやす)と申すでござる!担当は見ての通り、緑色でござる! 祝詞斗殿は今日から生活を共にする仲間!どうぞよろしく頼むでござる! 」

「ござ?……よろしくお願いします!」

 彼は独特な口調が人気であることは知っていたが、テレビでは聞き慣れていたものの、目の前でいざ聞いてみると不思議な気持ちだ。この口調はキャラ作りじゃなかったんだ、と思いながら頭を下げていると、先ほどの赤髪の男性が初めまして、と口を開いた。


(わたし)晶理暁良(しょうり あきら)。年齢は……ふむ、伏せさせてもらおう。この『Midnight Phoneix』のリーダーで、赤色がイメージカラーとなっている。ようこそ、『Midnight Phoneix』へ。君のような有望な若者に選んでもらえて光栄だよ」

「あ、は、はい! ご期待に添えるよう、全力を尽くします!」

 美の化身、神、最高峰のアイドル、などの称号からは想像できないほど柔らかく微笑む晶理とドキドキしながら握手を交わしていると、職員が渡していた紙を持った桃色の髪をハーフアップにした小柄な少年がこちらを見ながら近づいてきた。


「シュートくん、だっけ。ボクは美笠浜三依(みかさはま みい)って言うんだー♪ピンク担当で、ファンのみんなはみーくん、って呼んでくれるの! あ、でも、オマエは年上だけど……ボクのコ・ウ・ハ・イ、なんだから、センパイってつけてよね!センパイとして しっかりシドーするから!よろしく!……あと、ボク、17歳のミセーネンだから! お酒とか飲めないから!」

「えーと、じゃあ、三依、先輩。ご指南のほどよろしくお願いします」

「そう! それでいいの! でもボクガッコーあんまり行ってないから、ムズカシー言葉使わないでほしいなあ」

「わかりました……気を付けます」

 祝詞斗が頷くと、三依がねーねーシュートくん、と上目遣いでこちらを見上げた。


「シュートくん、ヘーエキ行ったことない、って聞いたけど、ホント?」

「え、なんでそれを……?」

「オーディション受けた人の情報はボクたちも見るから。カンケーシャだし」

「ああそうか……はい、理系の大学付属高校に進学したので、特例で免除されまして」


 そのために猛勉強して進学したんだけど、と心の中で呟くと、三依はふーん、と言った後さらに続けた。




「じゃあ、センパイがいいこと教えてあげる…………ボク達、バリバリウチュージンと戦うけど、大丈夫そ?」

「え……え?」

「あれ、聞いてないの? ボクら、っていうか、『Midnight Phoneix』がそーゆーグループなんだけど……」

「え、ええええええええええ!?」


「センパイ」から突然告げられた現実に祝詞斗は驚愕と混乱のあまり思わずオーディションに合格した時よりも大きな声で叫ぶことしかできなかった。


 

 

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