15話 ツアー、またの名を
「こ、これが、最新の技術の結晶、超高機動電導式高速鉄道……! 心の中の少年が刺激される……!」
「……シュート君何変なこと言ってんの?」
「まあまあ、きっと興奮してるんだよ……」
迎えた出発日当日、札幌行きの電車が止まるホームに到着した祝詞斗は自分たちが乗るであろう、洗練された外装を持つ車両に目を輝かせた。
「まだ一般用に量産はされていないでござるから、物珍しいのは仕方ないでござる。祝詞斗殿は電車が好きでござったのか?」
「うーん……特別電車が好きって訳じゃないんですけど、カッコいい物は好きなので」
祝詞斗がまじまじと車両を眺めていると、スタッフと思わしき男性が車両からホームに移動し、5人に声をかけた。
「皆様お揃いですね! 今回の遠征の同行責任者を務めます内閣作戦情報員の三浦と申します。ツアーに関することも、制圧作戦に関することも両方担当しておりますので、ご不明な点があれば何でも聞いて下さい」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
「では出発時間も近いですので皆様車内へ。札幌への移動中に今回の地方制圧作戦についてご説明いたします」
三浦に促され、貸し切られた車内に入る。流石政府関係者のみ使用が許された特殊装備である。車内は想像よりもかなり快適なつくりをしており、さながら動く会議室といった具合だった。
スクリーンが設置されている近くの席にそれぞれ着くと、機械音のアナウンスと共に扉が閉まり、列車は北へと音もなく動き出した。
「うわっ、もう発車したんだ……全然振動とかないですね」
「そりゃあ、な。それにこの列車はアメリカで開発された対地球外生命体用の特殊素材が使われているから、万が一襲撃されても大丈夫、って訳だ」
隣に座っていた麟の解説を祝詞斗が聴いていると、三浦がスクリーンにパソコンを接続し、今回回る札幌、盛岡、名古屋、広島、高松の5か所がピックアップされている画面が表示された。
「では今回の作戦について軽くご説明をさせていただきます。各ブロックでの滞在時間は4日間、その内1日はツアーの日となります。残りの時間で政府の地球外生命体出撃予測AIに基づいて算出された潜伏危険度の高い地区……主に放棄された一般人進入禁止地区にて地球外生命体を制圧していただきます」
「放棄された地区か……まあ、あそこなら隠れるにもってこいだが」
「次は具体的な行動についてです……2チームに分かれて行動していただく予定ですが、安全面の観点から、決して1人になることがないようにお願いいたします。仮にも皆様はツアー中のアイドル……何かあれば然るべき対応をしなくてはならなくなりますので。また、地球外生命体を発見した場合は規模に関わらず、私も含めた全員に連絡をお願いいたします。総合科学研究所のほうから地球外生命体の一部を研究材料として採取したいとのことでしたので、専門の職員を向かわせます」
「前のあれでは足りなかったのか……承知した。では、組み分けだが……何か希望がある者はいるか?」
晶理は4人に尋ねるが、特に希望はないという意思表示を読み取ったあと、少し考えた。
「それでは私に一任させてもらおう。……私と元康、麟と三依君と祝詞斗君でいいだろうか」
「りょーかい! シュート君がんばろ!」
「俺も賛成です。バランス、戦力的にも問題ないと思います」
「某も承知したでござる!」
「了解です。全力を尽くします!」
5人の会話を聞いた三浦は満足気に頷き、パソコンに打ち込んだ。
「私からの説明は以上となりますが……何かご質問はありますか? 特に神風さんは初めてとのことですので、何でも聞いていただいて構いません」
しかし、いつだって質問は出てくるわけではない。わからないことのほうが多い祝詞斗は考えるふりをしながら口ごもるしかなかった。
そんな祝詞斗を見たからなのか、三依が元気よく右手を挙げた。
「はいはいはい! ボクが聞いてもいいですかー?」
「ええ、構いません」
「もしー、ウチュージンを早く全滅させちゃったら、ジユ―ジカンってありますか?」
「ふふ……美笠浜さんらしい質問ですね。勿論、滞在時間内であれば、自由に観光や吸気をしていただいて問題ありません。ただし、いつでも連絡できるようにしてくださいね」
「やった!……あ、わかりました!! ありがとうございます!」
「……他に質問がないようですので、私はこれで失礼いたします。ごゆっくりと列車の旅をお楽しみください」
5人の反応を確認した三浦は、一礼して去っていた。
「あと数時間もしたら札幌……これからホントに始まっちゃうのか……」
あまり実感がわかないが、これから大きなことが始まることだけは理解してる。ライブはうまくいくだろうか、地球外生命体とはうまく戦えるだろうか、麟と三依に迷惑をかけないだろうか……というか、3人いるなら1人ぐらい戦ってなくてもばれないのでは?……そんなことを頭の中でぐるぐるとさせていると、緊張していると思ったらしい麟がそっと祝詞斗の肩に手を置いた。
「心配することはない。祝詞斗は今までしっかり練習してきたし、戦闘訓練だってどんどん上達してる。何かあったら俺達を頼ってくれ」
「麟さん……! あ、ありがとうございます」
「そーだよシュート君! そんな暗い顔しないで、外でも見てみたら? それとも、ボク達と一緒にババ抜きでもする?」
「負けたらジュースの奢りでござるよ!」
「君が負けたら善処することを約束しよう。どうだ? 参加してみないか?」
トランプをもってニコニコしている三依に逆らえるほど肝は座っていない。やるからには勝って見せよう。頭の中の悩みなどどこかに消えた祝詞斗は負けませんよ! と麟と共に三依らがいる5人席へと移動した。
風を切り進む列車に揺られ、祝詞斗の初めてのドームツアーは始まろうとしていた。




