13話 初陣の次は
「よっ、と……これで、おしまい!」
「お疲れ様、祝詞斗君。動きもだいぶ良くなってきたな」
ある日の未明、政府からの応援要請に応えて出撃した祝詞斗と晶理。薄暗がりの中5、6体の地球外生命体をしっかりと撃破した祝詞斗を見た晶理は小さく拍手を送る。
「そう言ってもらえるのは嬉しいんですけど……晶理さんひどくないですか?! せっかく後方にいたオレを糸で前線に引っ張り出すなんて!」
「それは……どちらかというと私が後衛だからだ。それに、いつまでも後ろにいては何も学べない。こういう危険度の低い相手の時に崖から突き落としておかなければ」
「はあ……せっかく逃げられると思ったのに……」
ブツブツと恨み言をいう祝詞斗に、晶理はふふ、と微笑んだ。
「自分の信念を諦めないことは大切だが……時には環境に順応することも大切だぞ?」
「はあ……でも今日はこれで終わり、ですよね」
「ああ。報告は私がやっておこう。……そうだ、今日は10時から共用ルームで軽いミーティングを開催するから、君も忘れずに出席してほしい」
祝詞斗はわかりました、と答え、夜明けを見つめながら東京中枢区へと帰還した。
「おはようございます!」
「『♪――♪――――』……お、おはよう!」
「リンさんおはよー! ……聴いたことない曲だけど新曲?」
三依と共に時間通り会議室に入ると、既に到着していた麟と元康がいた。
「おはようでござる! これは麟殿と晶理殿の新曲でござる! レコーディングが近いゆえ、某と共に練習をしていたでござる」
「『Apple in the Eden』っていうんだ。時間があったら祝詞斗たちも聞きてくれないか? 晶理とのデュエットなんて久しぶりすぎてさ……」
「え、いいんですか?」
「楽しみにしてるね!……あ、ショーリさん、おはようございます!」
三依の挨拶に扉の方を向くと、晶理がおはよう、と挨拶を返しながらこちらに歩いてきていた。
「急に集まってもらってすまない。私も昨日の夜聞いたばかりで……今後のスケジュールに関わることだから、詳細は追って連絡が来るそうだがまずは君達にも伝えなくてはならないと思ったんだ」
いつになく真剣な晶理の表情に、全員が固唾をのみながら次の言葉を待つ。
「昨夜防衛本部定期会議で札幌、盛岡、名古屋、広島、高松の5ブロックに地球外生命体の襲来予兆がでたそうだ。……それに伴い、我々に対処にあたってほしい、との要請があった」
「「「あー……」」」
祝詞斗を除く3人は何とも言えない表情で顔を見合わせる。
「……今聞いている情報は以上だ。詳細は夕方の定例報告で麟に通達するとのことだ。各々準備をしておいてほしい」
「それだけ?!……ですか?!」
ここでは重要度に反比例して伝達事項が短くなるのだろうか。そんな祝詞斗を見た三依が声をかけた。
「なんかよくわかってない、って感じだね、シュート君?」
「わかるわけないじゃないですか……オレ達が対処するって、ここ東京中枢区ですよ? スケジュールも埋まってるのにどうやって……」
「そーだね、いくらボク達でも、東京にいながらいろんなところのウチュージンをやっつけるなんてできない。でもボク達はアイドルだから、集団で地方に行くには表向きのタイギメーブンが欲しい。 じゃあ、どーすると思う?」
三依のいささか意地悪な問いかけに、祝詞斗は頭をフル回転させて考える。
「普段都心部に拠点を置くアイドルが地方に向かう大義名分……………………あ、地方ロケ!」
「おしい! 1箇所とか2箇所なら確かにそれでもいいけど、さすがに今回はキョリが離れ過ぎなんだよねー」
「た、確かに?」
「だ、か、ら! ボク達はいつもドームツアーやってるの! 会場の最優先使用権はボク達にあるし? ……まあそもそもあんまり使われてないけど……スタッフさんも会場の人出があるから最低限で大丈夫だから!」
「なるほど……ってドームツアー?! 今から急に?!」
なぜ3人が何とも言えない表情だったのか十分過ぎるほど、いや十二分に理解した。
「そ! だからショーリさんが『今後のスケジュールに関わる』って言ってたでしょ? これから忙しくなるよ〜? 撮影とインタビューのスケジュールは前倒し! 曲の練習も、旅行の準備もしなくちゃいけないからね!」
言葉とは裏腹に楽しそうな笑みを浮かべながら、三依は恐らく前倒しされたであろう撮影のスタッフに呼ばれて会議室から駆け出していった。
「はっ……いや、ええ……?」
祝詞斗の手帳にはデビュー直後ならではの膨大な量のスケジュールが記されいる。それを思い出しながら祝詞斗が頭を抱えていると、神風さん、今後の予定なんですけど……とスタッフが申し訳なさと憐れみの表情を浮かべながら、三分の一程の日程に圧縮されたスケジュールを手渡した。




