12話 これからはオマエも
今回で一章完結となります
「それじゃ、シュート君のジュンプーなデビューを祝って!」
「「「かんぱーい!」」」
ライブの翌日、共用ルーム。机の上には、麟の作った料理と、全員分のソフトドリンク。やや大きめのパーカーに身を包んだ三依の音頭で5人はグラスを掲げる。
「これ全部麟さんが作ったんですか?! 美味しすぎる……」
「それはよかった! まだ沢山あるから好きなだけ食べてくれよ!」
「あ、祝詞斗殿、某のコップのオレンジジュース、飲んでほしいでござる。アンドロイドには食事機能はついていなかったでござる……うっかりしていたでござる」
「オレでいいんですか? ありがとうございます!」
こちらも高校時代のジャージと、カジュアルな服装の祝詞斗がありがたく受け取っていると、三依がスマホとサンドイッチを両手に持ちながらあたりまえでしょ! と言った。
「今日はシュート君のためのお祝いなんだから!SNSのトレンドもボクらの話題で独占! 特別公開のライブ映像も20万再生突破!デジタルリリースの新曲も上々!カンペキにいいカンジのデビューでしょ? 」
「え、そうなんですか? 怖くてまだ見れてないんですけど……」
「まあ、見ないほうが精神衛生上はいいんだけどな……今回は目を通すだけ通したらどうだ? みんな、君のことを祝福しているぞ」
ほら、と麟に差し出された画面を見ると、「デビューおめでとう!」「これからが楽しみ」「応援してます!」と自分のデビューを喜ぶ声に溢れていた。
「あ……よ、よかったぁ……!」
「だろう?」
祝詞斗は心から安堵の表情を浮かべた。
その後ろで元康と晶理はとある匿名掲示板を眺めていた。
「麟殿も優しいでござるな。変なこと書けば一発特定される政府運営のSNSで、変なことを書く輩などほとんどいないでござるよ……しかし匿名掲示板で刺激が強すぎるでござるからな……むむ、どれどれ……」
物理的に鋼の心を持つ元康と、アイドル歴20年で培った強靭なメンタルを持つ晶理がゆっくりとスレッドをスクロールする。しかし、まだ未熟だの動きが甘いだのという言葉は強いが至極まっとうな批判以外はこれと言ってネガティブな意見は見当たらなかった。
「おや、思ったよりも平穏だな。私たちがデビューしたときは、それはそれは色々言われたのだが」
「まだ日が浅いということもあるかもしれぬでござるな……祝詞斗殿は『ROM専鍵運用』と行っておったでござるから、過去のあれやこれやを掘り返されて、というのもなさそうでござるな!」
「ろ……? よくわからないが、悪いことではないようだな」
ニコニコしながら言う元康に、晶理も頷いた。
「でもー、まだダンスもキレがないねえ~。歌もちょっと外れてるし?」
2人の会話など露知らず、ライブの映像を見ている3人。三依の煽るような批評に、祝詞斗も負けじと食い下がる。
「……今に追い越して見せますよ。見ててください」
「うんうん、いいねえ!……期待してるよ? シュート君?」
「高め合うのはいいことだけど、無理はするんじゃないぞ?」
「「はーい!」」
窘めながらもどこか嬉しそうな麟に元気よく返事をした後、三依は祝詞斗のほうを見て笑顔で手を差し伸べた。
「ま、これでオマエも、闇夜を照らす不滅の炎、『Midnight Phoneix』の一員ってワケ。だから、さ、……しっかりやってよ?」
「はい!」
その手をしっかりと握り返し、祝詞斗は力強く頷いた。




