11話 剣客と拳闘士、そして終演
「行くでござるよ麟殿!」
「元康さん、晶理さんの糸だけ斬らないようにしてくださいね!」
「了解でござる! 超高機動モード、起動でござる!」
元康は言うが早いか刀を構え、地球外生命体が集まる無人の客席に飛んでいった。
「……さて、じゃあ俺も行こうかな」
麟の目線の先にはまるでステージ道具の一部のように張り巡らされた糸で固定された数多の地球外生命体。もちろん配信用のカメラには 映っておらず、映ったとしてもディレイタイム中に編集可能だ。
「次は5人で踊る曲だ。早めに終わらそう」
暗転したステージをちらりと見ながら、左手にナックルを装備した麟は地面を蹴って跳躍した。
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「……すごいな。麟さんも、元康さんも」
暗転しているにも関わらず縦横無尽に駆け回る2人を見ながら祝詞斗はついそうこぼした。
「……いや、今は次に集中だ」
しかその暗転もすぐに終わる。次は晶理と三依とのパフォーマンスが待っているのだ。左にはがんばろ! というように自身に目線を送る三依が、右には舞台に立ってもなお地球外生命体の制圧を行う晶理がいた。
ステージにピアノの前奏が鳴り響く。徐々に明るくなるステージの上で、晶理の息を吸い込む音が聞こえた。
『――離れていても 届けよう』
練習、いや直前リハーサルよりもさらに磨かれた透明な歌声。いずれ超えなければならない、しかし今は圧倒されることしかできないその声に、かわいらしい、しかし心のこもった声が続く。
『――キミに贈る この言葉』
そして祝詞斗も、しっかりと息を吸い込んだ。
『――南風に乗せて』
爽やかな風の中に一抹の切なさが混じる曲が流れる背後で片っ端から無駄のない動きで刀を振るう元康、持ち前のパワーを生かして数体まとめて葬る麟、そして張り巡らされた糸で命懸け撮影を続行するスタッフに近づこうとする地球外生命体を瞬間的に地理にする晶理。地球外生命体の数も徐々に減り、付近の分隊も到着したとの連絡が入った時、「南風の魔法」も終了を迎えた。
「みんなーー!! 今日は見てくれてありがとー!」
「今日は楽しんでもらえただろうか?」
「これからも皆と一緒に、どこまでも進んでいくでござるよ!!」
「俺達のステージもこの曲で最後だ!」
「聞いてください。『Midnight Phoneix』!」
ステージ付近の地球外生命体を一掃し、あっという間にステージに戻った2人を加え、熱意を沸き 立たせるようなドラムの音と共に最後の曲が始まった。
――楽しい、熱い。
祝詞斗も自身の中で高ぶる熱意を感じながら、グループの名を冠したその歌を歌う。
そのさなか、晶理の指示がインカム越しに届く。
『……一般人の避難は完了したのか。ならば、今から会場全体の糸を破裂させる。それが終わったら地球外生命体の生体反応を確認してほしい』
『了解』
それを聞いた晶理は、サビに差し掛かる直前、あたかも振りの一部のような動きで右手を軽く握りしめた。
「……!」
その瞬間、ステージを囲むように張り巡らされた細い糸、そして控室、会場をも覆っていた、常人には見えない細さの糸の全てがパンッと弾け、地球外生命体を一体残らず塵に変えた。
『……こちら防衛戦線本部。全ての地球外生命体の消滅を確認。これをもって本作戦は終了とする。報告の件は追って通達する。難しい中での対応、感謝する』
『了解』
時を同じくして、スピーカーから流れてた彼らの最後の曲も終わりを告げた。
「はい、カメラ切りました! 『Midnight Phoneix』の皆さん、本当にお疲れさまでした!……それと、ありがとうございます!」
「某らは当然のことをしたまででござる。さあさあ、祝詞斗殿、麟殿、三依殿! 控室に戻るでござるよ!」
「終わっ、た……んですね?」
「そ、どっちも大成功だよ、シュート君!……あー、疲れた! 帰ったらレイゾーコのプリン食べちゃおーっと!」
「俺は非難用シェルターに行ってきます。あ、事後連絡もしないと」
「私はまだここでやることがある。先に戻っていてくれ」
ライブも、地球外生命体との戦いも無事に終了した。祝詞斗は安堵と緊張からの解放で、すぐにでも倒れこみそうな体を支えながら、頼もしい「先輩」達の後を追い、未だ光り輝くステージを後にした。




