9話 勝利の糸
「うっわあ……ここにもいるじゃん、ウチュージン……」
ステージに移動するための広い廊下に出た5人は、警報が鳴り響く中、既に侵入していた地球外生命体を確認した。
「慌てないでください! 落ち着いて、分隊の皆さんの指示に従って安全シェルターへ避難してください!」
「安全シェルターってどこだよ! 助けてくれ、死にたくない!」
「押さないでよ! 死にたくないのはこっちも同じよ! 」
「まあ予想はできたでござるが、パニックでござるな」
「……出番まで時間がある。三依君、祝詞斗君、元康、お願いしてもいいだろうか」
「はーい!」
「オレもですか?!」
「ちょっと急だが、実地訓練だと思ってくれ。行くぞ!」
有無を言わさず始まった実地訓練と言う名の初陣に、祝詞斗は戸惑いながらも腹をくくった。
「じゃあおさらいね!ウチュージンのジャクテンはどこだったかなー! 」
「な、内部に収納されている生命核です!うわあっ!」
「せーっかい! あ、ボクの弾は人間には効かないから。慌てないでね」
「先に言ってくださいよ!!!」
人にはクイズを出しておきながら、本人は質より量のガトリング砲を撃ちまくる三依。祝詞斗も向かってくる地球外生命体の核に狙いを定め、最初の一撃を振った。
「き、消えた……これでいいんですか?」
「流石でござる祝詞斗殿! 祝詞斗殿は三依と違って射程も範囲も狭い故、しっかり狙ってクローを振ることを意識するでござる!」
「はい!」
いきなり踏み出した最初の一歩であったが、踏み出してしまえば後は容易い。祝詞斗は実践訓練で学んだことを一生懸命思い出しながら次々と地球外生命体を撃破した。
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「!……晶理さん、寿さん! よかった、ご無事だったんですね!」
「カメラマンさん!? どうしてシェルターに入っていない……そうか、続行命令か」
「そうなんです、私たちも避難しようと思ったのですが、逃げようにも逃げられなくて……」
一方いち早くステージへと到着した晶理と麟。既に出番を終えた29組目のグループの誘導をその場にいた兵士に任せていると、政府からの「ライブは続行せよ」という逆ればクビ待ったなしの命令で避難できず、恐怖の浮かぶ表情で待機しているステージスタッフを見つけた。
「政府からの続行命令が出ている以上、ライブは続行する。しかしそれは、皆さんの身を危険にさらすと、と言っている事と何ら変わらないだろう」
「……はい」
淡々と事実を述べる晶理と、既に目視できる場所まで近づいた地球外生命体に死を覚悟するスタッフ。
しかし、次の瞬間、真紅の閃光が走り地球外生命体は跡形もなく消え去った。
「約束しよう。『勝利を織る暁の糸』……私が、皆さんの安全を保障する。傷ひとつ負わせないと、約束しよう。だから、国民の前では『アイドル』としていさせてくれないだろうか」
「晶理さん……! そこまでおっしゃっていただいたのなら、やらないわけにはいきません!」
「私たちも最高のステージを届けられるように、最善を尽くします!」
次々と奮い立ち、持ち場に着くスタッフ。その様子にもはや畏怖の念すら覚える麟。
「……やっぱリーダーって強いんだな。俺も、あんなふうになりたいよ……」
まあ10年は先かなあ、とぼやいていると、遠くの通路から祝詞斗、三依、元康が駆けてくるのが見えた。
「地球外生命体のせん滅は完了したでござる!」
「ありがとうございます。こちらも準備は整いました……後2分ほどで休憩時間が終わります。祝詞斗、君はステージ袖で待機して。分隊の兵士も数名いるから、万が一地球外生命体が来たら応戦してくれ。多分、|糸が何とかしてくれるとは思うけど」
「はい!」
「晶理さん、元康さん、三依。俺達はステージに行きましょう。ファンのみんなが待っています」
麟の言葉に3人は頷き、じゃあシュート君、後でね! とステージへと向かった。
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「すっごいな……『始まりの煌炎』か……」
荘厳な音楽が鳴り響く中、ステージ上で舞う4人を見つめる祝詞斗。麟が懸念した地球外生命体の侵入はなく――あったとしても、晶理の「糸」で瞬殺されるのだが――出番の迫る祝詞斗の緊張だけが高まっていた。
「そろそろ麟さんのMCパートで……」
音楽が止まり、ライブをご覧の皆さんこんにちはー! という麟の声が聞こえる。事前の打ち合わせでは、このMCのあと、自分と入れ違いに三依と晶理が会場付近の地球外生命体のせん滅に進む予定だ。
「お、シュート君、準備ばっちりだねえ。ボクたち今から行ってくるから、頑張ってね!」
「ライブを楽しむといい。応援している」
地球外生命体の出没地点を見てやや早く退場したらしい2人が祝詞斗にエールを送り、颯爽と走り抜けていった。
ありがとうございます、頑張ります! とその後ろ姿に声をかけていると、スタッフの合図が見えた。
「よし……行くぞ」
高まる鼓動を感じながら、祝詞斗はこぶしを握り締めて階段を上る。
「……では登場してもらおう、俺達の新しい仲間、神風祝詞斗君だ!」
麟の爽やかな声を聴きながら、光り輝くステージに足を踏み出した。




