8話 宇宙からのサプライズゲスト
「やはりこの規模のフェスとなると、パフォーマンスも素晴らしいでござるな!」
「俺もたまに見てたけど、熱気が凄いよなあ……」
「あ、シュート君。もうすぐ出番だから、メイクとか確認してもらってね!」
「あ、はい」
「Midnight Phoneix」の控室では、壁に設置された大型テレビから次々とアーティストのステージ流れている。総勢30組ほどのグループが、10分ほどのパフォーマンスを披露するため、彼らの出番までには時間があった。27組ほどのステージが終わり、スタッフが「Midnight Phoneix」の皆さん移動のほうをお願いします、と呼びに来る頃には、きらびやかな衣装、メイク、ヘアセットの準備はしっかり整っていた。
「う……なんか緊張してきた……」
「だいじょーぶだいじょーぶ! ステージに上がっちゃえば緊張なんて吹き飛んじゃうんだから!」
「深呼吸して、リラックスするでござる! ……某はアンドロイドでござるから、緊張できないでござるが……」
「……|麟さん、これは笑うのが正解ですか?」
「……アンドロイドにはギャグは早かったみたいだな」
緊張半分、高揚感半分。メンバーと廊下を歩く|祝詞斗は、高鳴る心臓を抑えながら深呼吸をした。
「む? |晶理殿、どうかしたでござるか?」
そんな中、|元康が一人険しい表情をする晶理に気が付いた。他の3人も元康の声に晶理のほうを見ると、晶理は厄介なことになった、と口を開いた。
「……会場外の『糸』に地球外生命体の反応があった」
「えっ」
「こんなときに?!」
「気のせい……な、訳ないでござるな。晶理殿が間違えるはずないでござる」
「でも、防衛戦線本部からの連絡はきていないですよ?」
途端にメンバーに緊張が走る。麟がスマホを確認するが、彼らの上司であり地球外生命体の対応を管轄している部署からは連絡はない。
「……小規模なものであれば常駐する分隊に処理を任せるはずだ、連絡が来なくても不思議ではない。ただ、警戒は怠らないでくれ。今兵士を除けば、この会場で地球外生命体に対抗できるのは我々だけだ」
「承知したでござ……むむ?!」
しかし、現実は皮肉なものである。元康の超高性能集音機能が、明らかに故意的な爆発音を聞き取ってしまった。
「爆発音がしたでござる……距離は……半径2キロ圏内。規模は不明……しかし、この近くの大型施設は|ライブ会場しかないでござる!」
「……なんで今来るかな~~~!!」
「え、え?」
心の底からため息をつく|三依。緊張と衝撃で混乱する祝詞斗。スタッフに安全シェルターへ避難するよう指示する晶理。麟が落ち着かせようと何かを言いかけた時、全員のインカムに防衛戦線本部からようやく連絡が入った。
「防衛戦線本部より緊急連絡、防衛戦線本部より緊急連絡。東京第3ドームに中規模の地球外生命体が出現。||内閣特殊防衛部隊《「Midnight Phoenix」》は直ちに制圧行動に移行せよ。ただし、該当会場で開催中の興行に関しては予定通り続行する」
「は?……美笠浜りょーかい」
「寿了解」
「健了解でござる」
「……晶理了解」
「神風了解です!」
全員の応答を確認した本部からこちらでも直ちに分隊を派遣する予定だ、即時制圧を頼む、と連絡を切った。
「なーにバカなこと言ってんの!! ボク達もうすぐ出番なんですけど!? そんなに中止したくないならもっとセンリョクくれればよかったのに!!」
まあ、イマサラって感じだけどさ、とガトリング砲を展開しながら呆れる三依。
「まあ仕方がないよ。こんなことしてるうちにあと1組と俺達だけだから、中止にするわけにもいかないだろうし……」
「無茶ぶりは今に始まったことではないでござる。晶理殿、指示を頼むでござる」
その横ではもう慣れたと言わんばかりに元康と麟が太刀とナックルを準備しながら晶理に指示を仰いでいた。
「……今回のライブの目的は祝詞斗のお披露目だ。最初の1曲以外は祝詞斗さえステージにいれば、何とかしてもらえるだろう。……大方は私がなんとかしよう。2曲目、3曲目は出番ではない2人と私の『糸』で何とかする。私と三依はステージから離れた地球外生命体を、元康と麟はステージ付近の地球外生命体の制圧を頼む」
「了解」
「了解でござる」
「りょーっかい!」
「それと、祝詞斗君。君は何があってもステージから降りないでほしい。今日の君は『電撃公開された期待の新メンバー』だ。君の身の安全は私たちが保証する。まあ、そうだな、私たちの動きを見て次回の実践の参考にしてもらいたい」
「了解しました。自分の役割を、全うします」
クローを手に装備した祝詞斗の、緊張交じりだがしっかりとした返事を聞いた晶理はにこりと微笑んだ後、すぐに表情を引き締めた。
「ではステージに移動しよう。途中で地球外生命体を見つけたら直ちにせん滅、一般人の誘導も忘れないように。……行くぞ」
その声と同時に、チップで強化された彼らは地面を軽く蹴って加速した。




