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第58話「審判」

 レールガン連射により思うように近づけない。

 そうこうしているうちに、無数のミサイルがこちらに飛翔してくる。


 今度は追尾型はそこそこに、残り多数は放射線状に散らばりビルや道路に着弾。

 爆風でビルは倒壊し、アスファルトや車は散弾式に宙を舞う。


 その合間を縫うようにミサイルはリーネットを追い詰め、ロベリアはレールガンで狙い撃ち。


 地上でも空中でも動きを制限されるリーネット。

 思考をめぐらしながら逃避を続ける。


 しかし大掛かりな攻撃にダメージを受け続け、そのまま一か八かの賭けに出た。

 

「そんなにアタシのことブッ飛ばしてぇんならよぉ……」


 ドロドロと熱で光る損傷した肉体。

 一気に再生すると、行動に移った。


 跳ね飛び回り、ミサイルを誘導する。

 方角はロベリアのいる方向。


「ふ、バカな子。アナタの速度ではミサイルをまくことはできない。そのままワタシのほうに突っ込んできてワタシもろとも巻き添えにしようって魂胆でしょうけど……残念ね」


 ロベリアは熟練のスナイパーのような集中力で遠方のリーネットに狙いを定める。

 もっと引きつけてから撃つと決め、ピクリとも動かない。


 そんな彼女の様子を見て、リーネットはにやけ面。


「よしよし、そうするよな。お前ならそうする。……動かない。焦らず、冷静に狙いを定める。チェックメイト寸前なら、なおのことだ!」


 と、リーネットは自身のバネ化をやめた。

 そしてミサイルを背後に迎え入れる。


 ……────タイミングはバッチリ。



(……格ゲーとかでよぉ、ジャスガするとノーダメになるってあれ。一体どういう原理なんだろって思ったが、ちょっとわかった気がする。《《ミサイルの大部分をバネに変えた》》。コイツはマッハ速度もプラスしてアタシを弾き返すッ!!)


 狙い通りリーネット弾き飛ばされ、ミサイル以上の速度でロベリアへと飛ぶ。

 度肝を抜かしたロベリアは一瞬怯み、それが数ミリのズレを生んだ。


 レールガンの狙いは外れ、リーネットの脇を通り過ぎる。

 デカブツを持った状態で、彼女の接近に対応することはいかにロベリアでも困難であり、


「おりゃああああああああああああああああ!!」


 ────ドゴォオッ!!


 リーネットの突き出した右足がロベリアの顔面にクリーンヒット。

 ぶつかった瞬間、頭蓋骨と脳みそがシェイクしてグチャグチャになる感触を味わいつつ、数キロメートルにわたり吹っ飛んでいくロベリアをスライディング着地しながら見届けた。


「ざまーみやがれ、クソ野郎!!」


 吹っ飛んだ方向へ中指を立て、迫ってくるミサイルを瞬時に片づけた。

 

(だが感覚でわかる。倒れたまま動いてない。いや、動こうとすらしてない。もう再生なんざとっくに終わってるだろうに)


 ロベリアの思考が読めない。

 あれだけの猛攻がウソのようにやんだ。いや、とめた。


 それがかえって不気味だった。

 同時に背中からくる冷たさが、リーネットを冷静にさせた。


 その場で足をとめ、かまえる。

 キロメートル単位で離れていても、ロベリアの存在感が圧となってリーネットをの神経を尖らせた。


 そして、その予感は当たっていた。

 ロベリアが吹っ飛んだであろう地点が、怪しい光を放っている。


 それを見たとき、リーネットは身震いを起こし、バネ化して一気に駆けだした。

 半ば本能的な動きだった。


 肉体を潰すレベルで攻撃をまた叩き込まねばと焦りが生まれる。

 それもそのはず────……。


 彼女の眼光の先にあるのは、白銀の光の球体。

 ロベリアを包み込むように展開し、さながらまゆか卵か。


 道理で動かなかったわけである。

 

「進化キャンセルパンチ受けやがれえええええええええええ!!」


 ものの十数秒で肉薄し、拳を突き出す。

 しかし、それは魂をえぐるような怖気とともに、奥から伸びる手で受け止められた。

 

「な、に……」


 光がほどけ、目覚めるようにその眼差しがリーネットを射抜く。

 神秘的でやわらかな空気が吹き抜ける中、ロベリアはその変貌を外界に露わにした。


「少々お遊びが過ぎたみたいね。ここからは本気でいかせてもらうわ」


 髪型も変わり、身につけていたものまで変化している。

 白の戦闘スーツにしては、あまりにも美しすぎた。


 ハイレグレオタードを基調とした扇情的なもの。

 ウェディングドレスのように祝福に満ちた白銀の布地を広がせ、宇宙服のようにあらゆる環境への頑丈さを兼ね備えてる。


 一見矛盾した機能を併せ持つこの意匠こそ、彼女の心象の現れなのだろう。

 そこに調和もなければ、進歩もない。


「近代兵器の次はショーガールかよ。カンカンでも踊ってくれんのか?」


「あら、一緒に踊ってくださる?」


「……やっぱやめた。だからこの手離しやが」

 

 言い終わる前に三連キックがリーネットに炸裂。

 さながら軽快かつアップテンポなダンスのリズムで最後は回し蹴り。


 近代的なデザインの装甲が備えられたニーハイブーツからの威力は、リーネットの火力を上回った。


「かっ!?」


 肉体が引きちぎれ、方々へ飛んでいく。

 気づけば頭部だけになっていることに気がつき、今度は自分が数キロメートルに渡って吹っ飛んでいった。


 だが、攻撃は終わらない。

 まだ崩れていないビルが突然炎上し、頭部リーネットに向かって倒壊。


「あんのクソボケがぁあああああ!!」


 首から出ている脊柱をバネに変え、勢いのままに跳ね回る。

 

「あら、しつこいわね。でも、再生には時間がかかるはず……」


 ゆっくり追いかけてもいいが、本気を出すと言った以上容赦はしない。

 ブーツ部分が変形し、アイススケートのような形状へと変化する。


 装甲がやや分厚くなり、ジェット機能が追加された。

 スタートダッシュの低姿勢とともに、内部機構が唸りを上げる。

 

「最後まで責任を持ってグチャグチャにしてあげるッ!!」


 お手本のようなVスタート。

 アスファルトを綺麗に切り裂きながら、瓦礫と炎をものともせずに疾駆する。

 

 その気配を感じ取ったリーネットは、ギョッとして逃げ回った。

 上半身はやや再生済み。吹っ飛んだ肉片が自動的に集まったり、新たに生成されたりとで、なんとか人型へと戻りつつあったのだが、


「なんでもありじゃねえかアイツ!! ……うぅ、クソ」


 また発熱。

 そして頭痛と吐き気。


 本来いち生命が負ってはならない損壊を受けた影響なのか。

 それとも、学院にいたときに感じたあの体調不良か。


 どちらにせよ、猛進してくるロベリアから距離を離すように、両腕をバネにして跳躍する。


 そんな彼女をロベリアは補足。

 トドメを刺せると胸が躍った、────その直後だった。



「な、なに……? あれは」


 《《リーネットの背中にバネのような形状をした螺旋形の光が伸び出ているのを見た》》。

 


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