表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

聖女(仮)様 旅立つ ~2

挿絵(By みてみん)

そのとき何故そんなことをしたのかラビオ自身にも今もってわからない。

しかし、彼はそうせずにはいられなかった。


友は去り、父に見捨てられ、恋人に裏切られた少女は傷ついた小鳥よりはかなげに見えた。

それが命を賭ける理由になったわけではない、けれど…

この哀れな姫がただの少女であることを確信し、ラビオはアンナローゼを胸に抱いた。


想像もしたことのない厚い肉の塊に包まれ、アンナローゼは弱々しくもがくがまるで動けない。


(クロード様とは別の生き物みたい)


「やめてください、あなた死んじゃうかも」


「ばーか、こんなことくらいで死なねえよ。あんな噂を信じるのか?」


「そうじゃないけど…」


「ほらな、なんともないじゃないか。せっかくだからチューさせろ」


「イヤです!」


アンナローゼはラビオの顎に手を掛け思いっきり突き上げた。


「なんだよ、そんなにイヤか?」


「初めては髭のない人がいいんですっ!」


「ひげぇ?」


ラビオがゲラゲラと笑う声が体を揺さぶられ伝わってきた。

その頃にはアンナローゼもラビオが本気でないことに気付いていた。

たぶん慰めたつもりなんだと。


「信じてくれてありがとう。ラビオってもっとおじさん臭いかと思ってました」


「うるせっ、俺はまだ20になったばかりだ。加齢臭なんかねえよ」


「馬車がひっくり返ったときも助けてくれましたね」


「死なれたら(かね)にならねえからな」


(バカバカしい、こんな娘っ子に人を殺す力なんかあるわけねぇだろが)


「ねぇ、ラビオ」


「なんだ?」


「やっぱり私って、女性の魅力というものは…まるでないの?」


「まあなぁ、その『つるんぺたん』をどうしろとか言われてもなぁ」


「ひどい!」


「そんなのはあと何年かすりゃ何とかなんだろ。牛乳とチーズでも食っとけ」


「牛じゃないわよっ」


ぷぅっと膨れて、アンナローゼはラビオの足を思い切り踏んづけた。


「いってえな」


笑いながらラビオはアンナローゼを持ち上げると空へ放り上げた。


「俺がふるいつきたくなるような、いい女になってみろ!」


悲鳴を上げながら、アンナローゼも笑い出した。

恐ろしくはなかった。

眼下ではラビオが大きく手を広げ待っていたから。


*******************************


アンナローゼが去った後。

エルンハイム侯爵は机の上のベルを取った。


短く2回、3回目は長く鳴らす。

しかしその音は聞こえない。


「お呼びでしょうか」


不意に黒い影が現れて声を発した。


「ブラスト商会のバカ息子はもうほっておいていい。代わりに一つ仕事を頼む」


「なんなりと」


*******************************


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ