聖女(仮)様 捨てられる ~4
修道院か…。
白い大理石の礼拝堂に勤める揃いの白衣を着た修道女たち。庭の花さえ白い百合で統一された清浄の地。美しい場所ではあるが何一つ面白味はない。その光景を思い出すと、アンナローゼの身にぞくっと震えが走った。
もし、聖女の証が現れていたら結婚はご破算になり、彼女は修道院で暮らすはずだった。それでも聖女という勤めがあれば、きっと彼女にも何かしらの生き甲斐はもてただろう。
聖女には癒しの力があるとされ、修道院は病院も兼ねている。
それが聖女でも侯爵家令嬢でもない、ただのマチルダという娘となって修道院に送られることになってしまった。
(修道院で何をしろって言うのよ)
見慣れたはずの部屋の中を見回し、小さな宝石箱を開けた。
高価なものではないが、子供の頃からお気に入りで遊んでいたアクセサリーたちが入っている。嫁入り道具からは弾かれたそれらひとつひとつをなでていると、何も考えなしだった幼い自分はもういないのだと思い知らされた。
ふと、その中に小さな指輪があるのを見つけた。
それはただのガラス玉だったが、何故かとても心惹かれ子供の頃にはいつも身に着けていたものだ。
(あら? これはどなたからいただいたんだったかしら)
そしてもう一つ、気になったことがある。
(この指輪は青かったと思うんだけど)
いま彼女の手にあるその指輪は真紅に輝いている。
アンナローゼはその指輪を見つめてしばらくじっと考えていたが、はっと思い立ち顔を上げた。




