表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/47

祈りの丘にて~4

挿絵(By みてみん)

それはまるで

大鷲と巣の中でくつろぐ小鳥。


けしてお似合いとは言えないけれど、二人はまるで気にしない。


公爵のはからいで、二人は見つかることもなく、例え見つかっても邪魔されることもなく…あの黒猫のケインさえ遠慮するほど睦まじく過ごしている。

やがてラビオの傷も癒えていった。


しかし、ラビオはらしくもなく…のらりくらりと甘えるアンナローゼをかわしていた。


「なんつうか、聖女さんてのは畏れ多くてなぁ」


差し込む満月の光に浮かぶアンナローゼは、まだ幼さを残しながら儚くも美しく…ラビオが触れるのをためらうのも無理はない。


「あ、もしかして」


「ああん?」


「男の人とアレしちゃうと聖女じゃなくなるとか思ってる?」


アンナローゼにそっと耳元で囁かれ、ラビオはぶーっと吹き出してむせ返った。


「おまえなあ。いちおう侯爵の姫さんなんだろうが」


「そんなの関係ないもん。ケインが言ってたわ、マチルダが前世で聖女の証が現れたのって、もう公爵様とお付き合いした後だったんですって」


「あの種馬公爵は昔っから手が早かったんだな」


ラビオは溜息をついて、アンナローゼの肩を抱き寄せると、そのまま乱暴に顔を仰向かせ唇を押し付けた。

生々しさに怯えるアンナローゼの震えが伝わってくるが、抱きしめた力を緩めなかった。体を離した後も彼女は目を見張って小刻みに震えている。


「こういうこった。おめえの知ってるキスなんざ、子供の挨拶なんだよ」


「…ラビオの馬鹿」


「は?」


「こんなことばっかりしてたんでしょ。ずるい、私のこと子供扱いして。どこの女と遊んでたの!」


「いやいやいや、俺もいい歳の男なんだから勘弁してくれよ」


「ウソよ」


アンナローゼはくすくすと笑いながらラビオの胸に顔をうずめた。


「すごいわ、気持ち良かった。でも、なんか、変な感じ」


強がりを言って細い腕で強くしがみついてくる。それでもラビオはまだ迷っていた。大人になり切れていない少女を思うままにしていいものか。


「本当は言いたくなかったけど」


「なんだよ」


「愛してる…もうっ、ラビオに先に言って欲しかったのに」


「そんなもん、言わなくてもわかることを」


愛おしさには敵わない。小動物のように胸にうずくまる少女にラビオは微笑みかけた。


「俺も初めてだから知らんが、たぶん相当、痛ぇぞ。明日は歩けないかもしれねぇ」


「初めてなんて、うそでしょ」


「初めての女は、初めてなんだよ。アンナ、本当に俺でいいのか?」


「言わなくてもわかってることを訊かないで」


ラビオは気付いただろうか。アンナローゼの性急さ危うさの意味、そして二人の時間がじきになくなることに。

それを思い計るにはあまりに若く、ただ目の前の幸せがすべてだった。




だがその日はやってきた。


新月の夜

深夜十二時を過ぎたころ、アンナローゼの母の形見のペンダントが砕けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ