祈りの丘にて~1
祈りの丘は海が見渡せ、青々とした下草は柔らかく四季の花々が咲く美しい丘だ。散歩やピクニックにと人気の場所である。
その長閑な景色を破り、武装したエルンハイム騎士団が走り込んできた。
「そのお方を返しなさい」
騎士団が五人ほど、馬の首を綺麗にそろえてラビオとアンナローゼをぐるりと取り囲んでいる。
「ラビオ、どうするの? 追いつかれちゃったわよ」
「これ以上、馬を酷使すると潰れちまうからな。それは可哀想だろ」
(こんな高そうな馬、弁償できねえし)
「私が『癒しの歌』で治してあげる」
「ああ、そうしてやってくれ。だが、今は歌を歌ってる場合じゃなさそうだ」
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参謀ケインは話した。
「修道院から逃げ出したら、祈りの丘に向かってください」
「祈りの丘? 観光地だぞ、すぐ見つかっちまう」
「あそこがいちばん近い国境ですから」
「そうか、越境してまで追って来ないか」
「それだけに、国境までに追いつこうと必死で追ってくるでしょう」
「そこが次の勝負どころってわけだ」
「祈りの丘まではとにかく逃げてください。ギリギリですけど公爵の馬ならなんとかなると思います」
「すげえ数で追ってくるんじゃないか?」
「いいえ、聖女が逃げたなんて大っぴらにはできません。もちろんアンナローゼ様のことも。つまり追手には事情を知っている限られた者しか使えないはずです」
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「聖女様、こちらへ」
騎士団の長か。その年配の男は丁重な言葉遣いだが、逃げようとしたら容赦はしないだろう。他の者も皆、油断なくいつでも剣を抜ける体勢だ。
「こんなふしだらな女は聖女じゃないでしょ、もう諦めなさいよ」
「それを判断するのは私どもではございません、どうかお戻りください」
騎士団の長の声に苛立ちが混じり始めた。
「ちょっと、待ってくれよ。俺は彼女と遠乗りに来ただけだ、そりゃあなんの罪になるんだ?」
「この期に及んで空とぼけるつもりか。ならばもう容赦はせぬぞ」
騎士団員が全員すらりと剣を抜いた。
「おいおい、物騒だな。こっちは丸腰なんだぞ」
ラビオは両手を上げて見せた。
「ラビオ、どうすんのよ」
「黙って見てろって」
(ケインの話ではそろそろなんだが)
ラビオがアンナローゼに目配せしたとき、土煙を上げ丘を駆け上がってくる馬群が現れた。
(やっと来たか!)
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参謀ケイン曰く
「追いつかれたら、とにかく時間を稼いでください」
「時間を稼ぐってどれくらいだ?」
「国境警備隊が来るのを待つんです」
「そんなに都合よく警備隊が来るかよ」
「もちろん、手配しておきます。公爵様の馬を盗んで逃げた者がいるってね」
「俺は馬泥棒になるのか」
「馬泥棒が国境に向かっていると聞けば、国境警備隊が動いても不自然じゃない、でしょ」
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