二人の聖女~3
マチルダの部屋に面した裏庭で、ラビオとケインは二人並んで居心地悪そうに待っていた。
「いまごろ修羅場ですかね」
そう言うケインの声は面白がっているように聞こえた。
「修羅場? 公爵を取り合うのかよ」
「まさか、アンナ様はオジサンが苦手なんでしょ」
「おまえ、アンナって呼んでるのか」
「ソコ、気になるんですね」
ケインが笑うとラビオが「うるせぇ」と言って頭を小突いた。
「親しいからじゃないですよ、あの方、前世ではアンナでした」
「その前世っての、お前はすっかり覚えてるのか?」
「なんでもってわけじゃないです、僕は前世はマチルダ様の飼い猫でしたからマチルダ様に起こったことしかわかりません。お二人は双子で、エルンハイム侯爵家に生まれました。そしてマチルダ様に聖女の証が現れてしまった。それが悲劇の始まりです」
「悲劇?」
「当時、ローエンダイムの公爵家とマチルダ様の婚約が進んでいました。しかし聖女となっては婚約は解消。しかも、政略結婚なのに二人は恋に落ちていたのです」
「気の毒だが、お貴族さんならそういう悲恋話はいくらでもあんだろ」
「ここまでなら彼女も我慢したでしょう。でも、代わりにアンナ様が嫁ぐことになって」
「それも、まぁ、さもありなんだ」
「そのアンナ様にはお子が2人生まれて、仲睦まじくお暮らしになったとか。ちなみに公爵には12人のお妃がいて、お子様は男女合わせて14人います」
「すげえな」
「お若いうちに爵位を継いでますから、お妃が次から次へと送り込まれてくるらしいですよ」
「でもそりゃあ、アンナって言うより公爵が乗り換えたんだろう。恨む相手が違わねえか?」
「もちろんこの後、公爵様にも恨み言を言うかもしれませんけど、もうすっかり拗らせちゃってますからねぇ。双子なのに一人だけ幸せを手に入れたアンナ様が許せないんでしょう、ましてや相手が自分の恋人だったんですから」
「なるほどな。でもよ、そもそも聖女ってのは断れねえのか?」
「それが出来たらみんな断るでしょうね。聖女って…国家機密ですから修道院から出られなくなります。例え政略結婚でも破談になるのは、エルンハイム領の外に出さないためなんですよ」
そのときマチルダの部屋から号泣する声が聞こえてきた。
「まずい、誰かに聞かれる前にアンナ様を連れ出さないと」
二人の男はあたふたと修羅場、真っ最中の部屋に飛び込んでいった。




