聖女(偽)様 売りに出される~2
「さあ、お待ちかね。『聖女様』のご入場です」
集まった群衆は「おおっ」とどよめいたが、この中に本物の聖女を見たことがある者などもちろんいない。
貴族の令嬢だって遠目にしか見たことがないのだから、なんとなく気品があってそれらしい格好をしていれば誰もが信じてしまうはずだ。もちろんベールですっぽり顔を隠して、昨日の入札ナシのお嬢様と同一人物とわからないようにしている。
「さあ、聖女様ですよ、どなたかお屋敷に迎えませんか? 癒しの力を持ち、幸福をもたらす守り神、聖女様はいかが?」
(なんか、安っぽいお守りを売ってるみたいな口上ね)
そう思いながらもアンナローゼは、いかにもそれらしくお祈りのポーズをしてみせた。しかし、誰からも声がかからない。
「こんな掘り出し物はめったにありません。さあ、聖女様、銅貨1枚からいかがです?」
(安っ! もうちょっと釣り上げなさいよ)
群衆はざわざわとしながら様子を見ている。聖女様に銅貨一枚っていうのもいかがなものか? いや、そもそも値段をつけていいものなのか迷っているようだった。
「さあ、いかが!」
「銅貨1枚」
ついに声が上がった。
(やった! まさかこれで終わりじゃないわよね)
「銅貨2枚」
一度声が上がるとつられるように声がかかった。
「銅貨3枚」「銅貨5枚」「銅貨10枚」
低調ながら少しずつ金額は上がっていく。
(よしよし、せめて銀貨くらい出してよね)
「銀貨1枚!」
どうやら競り合っているのは二人に絞られたようだ。
「銀貨2枚」「銀貨3枚」「銀貨5枚!」
そこで声が途切れた。
「はい、よろしいですか? では銀貨5枚で後ろの列の商人さん」
その声と共に拍手が湧き、誰が競り落としたのかと皆が振り返った。
アンナローゼからは暗くてよく見えなかったが、背の高い男が立ち上がって近づいてくる。
(あ、もしかして)
間違えようもない、凄まじい形相で睨みつけてくるのはラビオだ。
(やばっ、怒ってる?)
しかし彼女は、ゆでだこより真っ赤になって怒っている彼を見て微笑んだ。
(見つけてくれたのね)
本当は手を振って駆け寄りたかったけど我慢した。
彼が投じた銀貨五枚は聖女の値段ではなく、アンナローゼそのものの価値だったはず。
少し安くないかしら? と思ったけれど、ラビオの大きな影が目の前に立った時は、泣きたくなるほど嬉しかった。




