聖女(偽)様 売りに出される~1
「私は『聖女』なの!」
自称、職業斡旋所(闇ギルド)の男たちのリアクションの薄さにアンナローゼはイライラして繰り返した。
「セイジョ? ってなんだ」
「食えるのか?」
「うそぉ、知らないの! でも、あなたならご存じでしょ?」
アンナローゼは親方と呼ばれている男を振り返った。
「確か、癒しの力を持ってて、修道院とかにいるんじゃなかったか?」
「そうか、それじゃ医者なのか?」
「いえ、私はまだ洗礼を受けていないので、人を治すことは許されていませんの」
「なんだそりゃ? 役に立たねえな」
「しかし、なんだかよくわからんが、聖女ってのは高い値が付きそうだぞ」
「いくらぐらいだ?」
「さあ、聖女なんて扱ったことないからなぁ」
「よし!」
そこで親方がパンと手を叩いて声を上げた。
「今夜の市で『聖女様』がセリにかかると宣伝しろ! この際なんでもいいからこのねえちゃんを売らなきゃなんねぇんだ。聖女のありがたみを知ってる奴がいれば、大金を出すかもしれねえ」
そしてアンナローゼに向き直った。
「俺が聞いた話じゃ『聖女の証』ってのがあるらしいじゃねえか。それはどうなってんだ?」
「えっと、それはこれよ!」
アンナローゼは袖をまくり上げ、肩のあたりにできているアザを見せた。じつはここに運ばれるとき、馬車の中でぶつけてできたアザなのだが、聖女の証なんて誰も見たことがないのだ。わかりっこない。
「ほほお、これが…ねぇ。よし、わかった」
半信半疑ながら親方はそのアザを『聖女の証』ということで押し通すことにしたらしい。売れ残ってしまうより、インチキでも売ってしまえばこっちのものと思っているのは明らかだ。
「だがな、これで売れなかったらそのペンダントを売ってもらうぞ。親の形見だからって知ったことか」
「大丈夫よ、なんたって聖女なんだから」
啖呵を切ってみせたが、ものすごく不安だった。まさか聖女がこんなに知名度が低いとは思ってもいなかったのだ。
「さあ、広場でも港でも、人の集まりそうなところで宣伝して来い! 『聖女様降臨』だってな」
親方の思惑通り
その夜の闇市は押すな押すなの騒ぎとなった。
よくわからないながらも『聖女』をひと目見ようと集まった野次馬が大半だが、確かにこれだけ人が集まれば金を出す者がいるかもしれない。
(何この騒ぎ。私ってもしかして『珍獣枠』?)
珍獣だろうが聖女だろうが、銅貨一枚の価値もないなんてプライドが許さない。アンナローゼは侯爵令嬢の意地を賭けて、群衆の前に歩み出て行った。




