お嬢様はさらわれがち~3
「さぁ、今日の目玉だよ。お育ちのいいお嬢様が訳あってのご参戦だ!」
アンナローゼは人形のように着飾り、女優よろしく松明で照らされた演壇に立った。
そこは闇市などと言えば聞こえはいいが、ようするに人身売買をする奴隷市場だ。百年も前なら戦争で分捕ってきた捕虜を売ろうという輩もいたが、いまは各国とも条約を結んで野蛮な行為は表向き禁止されている。
しかしいつの世も裏社会は存在する。
貧しさ、病、災害など、堅気の商売だけでは食べていけなくなる人々はどうしても出てきてしまう。そういった弱者の受け皿は非合法でも必要なのだ。そういう意味で言えば「職業斡旋所」というのもギリ間違いではない。
そんな世の理などアンナローゼには分からぬことだったが、彼女が知る明るく活気ある町の競り市、ましてや貴族のオークションなどとは異質の熱狂があるのは感じていた。
「さあ、お嬢ちゃん、あんたの特技を見せてくれ」
アンナローゼは笑顔でうなずくと得意の歌や踊りを披露して見せた。
観客はやんやの喝采を浴びせ、アンナローゼは得意満面で手を振り思った。
(これなら金貨を稼ぐこともできるかも)
しかし…
入札する者は誰一人いなかった。
闇市で聖歌や社交ダンスを見せても、珍しい余興のひとつとしか思われないようだ。とりあえずまぁ、生活の役には立たない。
「あり得ない!」
憤慨したアンナローゼは顔を真っ赤にしてリベンジを申し出た。
「ああいうお上品な芸は、ここらじゃウケねえんだよ。もっとこう、色っぽく腰を振るとか、スケスケの服を着るとか」
「こんな感じ?」
アンナローゼは腰を振って見せたが、男たちは気まずそうに視線をそらした。
「うううううんん、これだけは言いたくなかったけど」
「なんか他に特技があるのか?」
「わたし、じつは、『聖女』なんです!」




