7.心を読む男
ずっと個室にいるのは危険だ。
ネットカフェを出たのは、昼過ぎだった。
未来を見る。
――店員、監視カメラ、警察――
人通りは多くない。
歩きながら、僕は未来を見る。
数秒先、数分先……。
危険はない。
でも、一つだけ妙な未来が見えた。
――通りの向こう、黒いサングラス。
髪の長い男が僕を見ている。
「見つけた」――
未来がそこで止まった。
「……もしかして」
僕は足を止めた。
未来をもう一度見る。
――同じ光景、同じ男、サングラス、長い髪――
心を読む能力者、はらだ。
僕はゆっくり振り向いた。
通りの向こう、コンビニの前に男が立っている。
サングラスに黒いコート。
ポケットに手を入れている。
男はこちらに歩いてきた。
「やっぱりお前か」
男はにやりと笑って言った。
僕の背筋に冷たいものが走る。
「有名人だな。あんたが未来が見える高校生だな」
僕は何も言わず未来を見る。
――数秒先、はらが殴りかかってくる。
僕が避ける、ナイフ、血――
未来がいくつも分岐している。
「面白いな。今、お前未来見てるだろ」
僕の心臓が一瞬止まりそうになる。
「顔に出てる」
はらは笑った。
「心がうるさいな、お前」
……心を読む男。
「未来見るたびに、頭の中が映像だらけだ」
はらは僕を指さした。
「丸聞こえ……筒抜けだ」
最悪だ。
僕は未来を見る能力。
でも、未来を見る瞬間の思考を読まれる。
つまり相性が悪い。
はらは近づいてくる。
逃げるか?
それとも……。
僕は未来を見る。
――戦う未来、逃げる未来、通報される未来――
どれも良くない。
はらが笑った。
「安心しろ。別に警察に突き出す気はない」
どういうつもりだ。
「じゃあ何?」
僕は言った。
「能力者だろ。お前も俺も。仲良くしようぜ」
何を考えているんだ。
僕は未来を見る。
――テレビ、能力者特集、人気、血。
倒れる、はら、ナイフ、僕――
未来が途切れる。
「どうした?」
はらは言った。
「未来、見えた?」
「……なんで僕を探しているの?」
「簡単だ。お前、今一番面白い能力者だから」
「おもしろい?」
「あぁ。これからは能力者の時代が来る。分かるだろ?」
僕は黙った。
はらは笑っていた。
「その時代のトップに立ちたい」
「……」
「そして、俺はその横に立つ男を探してる」
はらは、僕を指さした。
「それがお前」
こいつ、俺と同じ考えを持っている。
僕は未来を見る。
――はらと組む未来、能力者の世界、混乱する社会。
過去を見る少女……――
「で? どうする?」
はらは言った。
「……考える」
はらは笑った。
「いいね。嫌いじゃない」
そう言って、背を向けた。
「また会おう。未来少年」
はらは去っていった。
僕はその背中を見ながら、未来を見た。
――暗い路地、血、はらが倒れている。
そして、その前に立つ僕、手にはナイフ――
未来が消えた。
「……やっぱり。君は死ぬんだな」
霊能力ブーム、能力者達。
能力者を殺す未来を見る僕。
未来は少しずつ闇に染まり始めていた。




