58.裁判
数ヶ月後。
裁判所は大きかった。
中は静かだった。
僕は被告席に座っている。
手錠は外されている。
でも自由じゃない。
周りは記者、カメラ。
傍聴席は人が多い。
この裁判は有名になった。
能力者、研究施設、逃亡、殺人。
全部話題になった。
「これより審理を開始する」
裁判官は静かな声で言った。
検察官が立つ。
「被告人、しょうた」
僕の名前。
この場所ではただの犯罪者の名前だ。
検察官が続ける。
「被告は、複数の殺人に関与。研究施設事件、逃亡」
罪が読み上げられる。
たくさんある。
僕は黙って聞いていた。
次に証人。
「証人、みき」
みきが前に出る。
あの日と同じ静かな顔だ。
「証言できますか」
裁判官の声に、みきが頷く。
「できます」
「被告について何を知っていますか」
「過去」
検察官の声にみきは答える。
法廷がざわつく。
能力の話を信じる人、信じない人。
みきは続ける。
「見ました全部」
テレビ出演、親との関係。
金、怒り、そしてナイフ。
親の死。
傍聴席がざわつく。
みきは続ける。
研究施設、能力者、兵士、逃亡、ひな。
みきが見た過去を証言する。
「被告は殺人を認めています」
検察官の声で視線が全部僕に集まる。
「被告、何か言うことはありますか」
裁判官は言った。
沈黙が流れる。
僕は少し考える。
「ありません」
法廷が静かになる。
「以上です」
検察官の声が響いた。
――――
次の日のニュース。
僕の裁判が連日報道される。
SNS、議論。
能力者、研究、政府。
世界はただの事件として扱った。
――――
一方、れん。
警察署で事情聴取。
でも罪は重くない。
釈放。
ゆきも同じだ。
二人は外に出る。
「終わったね」
空を見てれんが言った。
「しょうた……」
ゆきは呟いた。
二人にはもう会えない。
僕は被告席に座っている。
未来は見えない。
でも結末はわかっている。




