56.再会
雨は弱くなっていた。
でも地面はぬかるんでいる。
僕は一人で走っていた。
れんもゆきもいない。
足が重い。
呼吸が荒い。
もう体力は残っていない。
それでも走る。
止まれば終わる。
その時、遠くから声が聞こえた。
「しょうた」
僕は止まった。
前の木の間。
みきが静かに立っている。
雨に濡れている。
逃げずに、ただ僕を見ている。
「……追ってきたか」
「うん」
「警察は?」
「すぐ来る」
僕は少し笑う。
「やっぱり」
逃げ場はもうない。
「しょうた、終わりだよ」
「どうしてそこまで?」
みきは少し考える。
「見たから」
過去、僕の罪、全部。
「あなたは人を殺した」
僕は答える。
「そうだ」
みきの目が少し揺れる。
でも視線は逸らさない。
「じゃあ終わらせる」
その時、遠くでライトが見えた。
警察が森の中へ入ってくる。
時間はほとんどない。
僕はみきを見る。
小さな少女。
でも僕を追い詰めた。
未来を見た僕が、過去を見る少女に追い詰められた。
「みき」
「何」
「もし未来が見えたらどうする」
みきは少し考える。
「変える」
僕は笑う。
「同じだ」
僕もそうだった。
未来を変える。
そのために全部やった。
結果こうなった。
「後悔してる?」
みきは言った。
沈黙が流れる。
ひなの顔。
れん、ゆき、オラクル。
全部思い出す。
「わからない」
ライトが近づく。
「いたぞ!」
警察の声だ。
あと数十秒でくる。
僕は空を見る。
未来は見えない。
でも最後の選択を自分で決める。
「みき、一つ頼みがある」
「何」
僕は静かに言った。
「ひなを忘れないでくれ」
みきの目が揺れる。
その時、警察のライトが僕達を照らした。
「動くな!」
銃が向けられる。
僕は包囲された。
逃げ場は完全に消えた。
僕はゆっくり両手を上げる。
物語は最後へ向かう。




