5.もう一人の能力者
ネットカフェの個室は静かだった。
外では朝のニュースが流れている。
でも僕の頭の中は、それよりもずっと騒がしかった。
過去を見る少女、みき。
僕はパソコンの画面を見つめていた。
ニュースサイト、動画サイト、SNS。
どこを見ても同じ話題だった。
――超能力少女・みきが話題――
動画を再生する。
テレビ番組の切り抜きだ。
「あなたは人の過去が見えるんですか?」
司会者の質問に、みきは頷く。
「例えば、この人の過去は?」
スタッフが、観客の男性を指さす。
みきはその人を見る。
数秒後。
「この人、小学生のとき友達をいじめてた」
会場がざわめいた。
男性の口元が引きつる。
「え、ちょっと……」
みきはさらに続けた。
「そのあと、もみ消した」
男性は何も言えなくなっていた。
観客がどよめく。
動画はそこで終わった。
「……本物だな」
僕は呟いた。
演技じゃない、あれは本当に見えている目だ。
僕と同じ目。
僕は未来を見た。
――テレビ番組、能力者特集、次々と現れる能力者。
透視能力者、霊視能力者、予知能力者。
ほとんどが偽物。
未来を見ると分かる。
ただの詐欺師。
演技、トリック、共犯者。
でも、本物もいる。
未来の映像の中で、一人の男が映る。
黒いサングラス、長い髪。
30代くらいだろうか。
「俺は人の心が読める」
その男は観客の一人を指さす。
「今あんた、財布の中に三千円しかない」
観客が財布を開く。
「……三千円だ」
観客がざわめく。
「心は正直だ。全部聞こえる」
男は笑っていた――
……未来が終わった。
「テレパスってやつか?」
僕は椅子にもたれた。
霊能力ブームが起きれば、本物も集まる。
つまり、能力者が増える。
その未来をさらに見てやる。
――能力者同士の対立、テレビ、企業、政治。
そして、能力者を利用しようとする人達。
世界は確実に変わる――
「……いい未来だ」
僕は笑った。
混乱した世界は、嫌いじゃない。
その時、未来が流れ込んできた。
――テレビ、ニュース速報。
「新たな能力者が現れました」
アナウンサーは言った。
画面に映るのは、さっき未来で見た男だった。
「心を読む能力者」
名前は、はら。
はらは、カメラに向かって笑った。
「この世界、面白くなるな」――
未来が終わった。
僕はゆっくり目を開けた。
能力者が増える。
みき、はら、そして僕。
新時代の始まりだ。
僕はパソコンの画面を閉じた。
また未来が流れ込んでくる。
――暗い路地、血、はら。
その前に立っているのは……僕。
手にはナイフ――
未来が途切れた。
僕はしばらく動けなかった。
「……そうか」
未来は教えてくれた。
僕はまた人を殺す。
しかも能力者を。
僕はゆっくり笑った。
能力者……最初の一人目か。
霊能力ブーム、能力者達。
そして、能力者を殺す能力者。
僕の物語は、少しずつ変わり始めていた。




