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4.特番

 山道を歩き続けて、どれくらい時間が経っただろう。

 夜はいつの間にか終わり、空はうっすらと明るくなっていた。


 カラスの声。

 冷たい朝の空気。

 そして、遠くに見える小さな町。


 僕は、その景色を見ながら立ち止まった。

 未来を見る。


――小さな商店街、古いネットカフェ、シャワー、鍵つきの個室、数日は安全――



「……よし」


 僕は町へ向かった。


 朝の町は静かだった。

 通学する小学生。

 犬の散歩をする老人。


 誰も僕に気づかない。

 フードを深く被りながら、僕はネットカフェの前に立った。


 未来を見る。

 

――店員、身分証、監視カメラ――


 身分証か……。

 僕はまた未来を見る。


――「身分証? なくてもいいっすよー」――


 ……よし。


 僕はドアを開けた。


「いらっしゃいませー」


 眠そうな店員が言った。


 僕は会員登録を済ませ、個室に入りドアを閉める。


 ……静かだ。


 小さな部屋、パソコン、椅子。

 やっと一人になれた。


「あぁぁぁっ……!」


 僕は背中を伸ばした。

 そしてパソコンをつけた。


 ニュースサイトを開く。


――未来が見える高校生、失踪――


 記事をクリックする。


 そこには、僕の顔写真があった。

 テレビ出演したときのものだ。


 笑っている。

 まるで別人みたいだ。


 記事にはこう書かれていた。



 都内の住宅で男女二人の遺体が発見された。

 この家に住んでいた、高校生の行方が分からなくなっている。

 警察は、事情を知っている可能性があるとして捜索している。



 この感じ……まだ容疑者ではない。



「……時間はある」


 僕は椅子に深く座った。


 さらにニュースを見ていく。


 ワイドショー、ネット記事、SNS。

 そして、ある番組の予告が目に入った。



――緊急特番! 本当に存在する!? 超能力者――


 僕は画面を見つめた。

 未来を見る。



――スタジオ、霊能力者、占い師、透視能力者、そして

……みき!!


「こちらの少女は、なんと人の過去が見えるそうです」


 未来の映像の中で、司会者は言った。


 観客がざわめく。



「うん。見えるよ」


 みきは言った。

 そして、画面に僕の写真が映る。



「この人、逃げてる」



 僕は思わず笑った。

 僕が前に見た未来と一緒だ。



「その人、どこにいるんですか?」


 未来の中で、司会者は言った。


 みきは少し考えている。

 そして目を閉じた。


「……北」――


 そして、また未来が途切れた。


 僕は椅子にもたれた。



「ざっくりだな……」


 でも、油断はできない。


 過去を見る能力。

 もし直接僕を見たら、この逃走は終わる。

 僕はさらに未来を見た。



――霊能力特番、SNS、トレンド。


 人々が騒ぐ。


「本物だ!」

「超能力者!」

「ヤバい!」


 高視聴率。

 テレビ局が動く。


 新しい番組、新しい能力者。

 そして、霊能力ブーム。


 社会が少しずつ狂っていく。

 企業が能力者を雇う。

 警察が協力を求める。

 テレビが毎日特集する。


 未来を見る僕。

 過去を見るみき。


 僕たちは、その中心にいる――



 僕は、さらに未来を見る。



――半年後、巨大なスタジオ、全国放送、能力者特集。

 そこに立っているのは、みき。


 ……そして。


 観客席の後ろ。


 フードを被った男。

 ……僕だ。



 未来の僕は笑っていた――



 その未来を見た瞬間、僕は小さく呟いた。


「なるほど……」



 逃げるだけじゃない。

 霊能力ブームの中心へ潜り込む!


 その時だった。


 個室の外でテレビの音が聞こえた。


「続いてのニュースです」



 僕は嫌な予感がして、扉を少し開けた。


 フロアのテレビでは、ニュース番組が流れていた。

 画面に映ったのは、みき。

 落ち着いた目をしている。


「今、話題になっている超能力少女、みきさんです!」


 スタジオから拍手が聞こえる。

 アナウンサーは続けて言った。



「あなた、本当に過去が見えるんですか?」


「うん」


 みきはカメラを見て静かに言った。

 そして、画面の向こうの僕に向かって言った。



「見つけるよ」


 僕の背筋に冷たいものが走った。



「だって、あなたの過去……もう見えてるから」


 僕は扉を閉めた。

 部屋の中で、ゆっくり息を吐く。


 これは、能力者同士の戦いだ。

 世界は今、霊能力ブームに飲み込まれようとしていた。

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