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44.未来のない世界

 時間が止まったみたいだった。


 僕は未来を見る。

 いつもなら未来が流れる。


 数秒先、数分先、可能性。

 でも何もない。


 完全な空白だ。


「……見えない」


「未来?」


 れんは言った。


 僕は頷く。


「全部消えた」


 ゆきも驚いている。


 オラクルは立って僕を見ていた。

 でもその顔は今までと違った。

 不安、焦り。


 オラクルが目を閉じる。


 未来を見るはずだった。

 でも何も見えない。



「……ない。未来が」


 オラクルは言った。



「ひなが消した」


 れんは言った。


 ひなは壁にもたれている。

 呼吸が荒い。

 顔が真っ青だ。



「ふざけるな!」


 オラクルは怒鳴った。


 オラクルが感情を出したのは始めてだ。


「未来がない世界なんて!」



「これが普通の世界だ」


「違う。未来は必要だ」


 オラクルは睨んだ。



「未来は誰にも見えない」


 オラクルが震えている。


 未来を見る力。


 それが今、完全に消えている。



「戻せ」


 オラクルは言った。


 ひなが首を振る。


「無理」



「戻せ!」


 オラクルは叫んだ。


 ひなは小さく笑った。


「未来は消した」


 その時、ひなの体が揺れた。

 僕が支える。


「ひな!」


 ひなの体は冷たかった。


「ひな……」


「もう長くない」


 ひなは呟いた。


 僕の胸が痛む。

 でもひなは笑っていた。


「未来、見えないね」


 僕は頷く。


「うん」


「それでいい」


「よくない!」


 れんが涙をこぼす。



「こんなの意味ない!」


 オラクルは叫んだ。


 僕はオラクルを見る。


 未来が見えない。

 オラクルはただの少年だった。


「未来がなきゃ、人は間違える!」


 オラクルは叫んだ。


「未来があっても人は間違える」


 静かな沈黙が流れる。


「未来が見えない……」


 オラクルが震えている。


 僕は一歩前に出た。

 未来がない。

 でも進む。


「終わりにする」


 僕は近づいた。


 オラクルは、僕を見た。

 初めての恐怖。


「来るな……」


 僕は止まらない。

 未来がないから。

 迷いもない。


 ただ進む。



「警備!」


 オラクルは叫んだ。


 廊下の奥から警報音が鳴る。

 赤いライトが光る。


 研究所が動き出す。



「増援!?」


 れんは言った。



「まだ終わってない!」


 ゆきは言った。


 僕はオラクルを見る。

 この戦い、ここで終わらせる。


 未来はない。

 だから今、この瞬間だけがすべて。

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