43.ひなの覚悟
静かだった。
僕、オラクル、ひな、れん、ゆき。
誰も動かない。
空気は張り詰めていた。
「君、何を見た?」
オラクルは言った。
僕は答えない。
見てしまったからだ。
ひなが倒れている未来。
動かない未来。
未来が頭から離れない。
「しょうた」
ひなは僕を見る。
ひなの目は静かだった。
「見たね」
僕は言葉が出ない。
「何? 何を見たの?」
れんは言った。
僕は答えない。
「死ぬ未来」
ひなは笑った。
「……え?」
れんは呟いた。
ゆきが息を呑む。
「能力の使いすぎは体が壊れる」
ひなは言った。
「ダメだよ! そんなの!」
れんは叫んだ。
ひなは首を振る。
「必要だから」
「未来を消す能力か。面白い」
オラクルは興味深そうに言った。
ひなが睨む。
「遊びじゃないわ」
「でも、そんなもの意味がない」
オラクルは言った。
「どうして?」
ひなは言った。
「未来を消しても、未来は生まれる」
オラクルは言った。
僕は未来を見る。
――ひな、能力、未来――
未来が消える。
でも別の未来が生まれる。
オラクルが言った通りだ。
「だから全部消す」
ひなは言った。
「全部?」
ゆきは言った。
「未来、可能性、全部」
ひなは言った。
「そんなことできるわけない」
オラクルの表情が変わった。
「できる。私はそのために作られた」
ひなは言った。
僕は思い出す。
研究所、実験。
能力者、ひなの能力。
存在消去、未来消去。
「ひな、それをやったら……」
「私は死ぬ」
「だめ!」
れんは涙を流している。
「れん、泣かないで」
ひなは言った。
「そんなの嫌だ……」
「未来は変えられる」
ひなは言った。
僕は未来を見る。
――ひなが死ぬ未来、オラクルが勝つ未来、研究所が続く未来。
そして一つの未来。
研究所、崩壊、能力者計画、終わる。
未来が見える。
でもその未来の先には、ひながいない――
未来が消える。
僕は目を閉じた。
「しょうた……」
れんは言った。
ゆきは黙っている。
「決めなよ。未来を見る者、未来を選ぶ者」
オラクルは言った。
僕は目を開けた。
ひなを見る。
ひなは微笑んでいた。
「大丈夫だよ。しょうた」
「……ごめん」
ひなが首を振る。
「ありがとう」
その瞬間、ひなが立ち上がった。
空気が歪み、世界が震える。
「未来を消す」
ひなは言った。
オラクルの顔が、初めて真剣になる。
「やめろ」
ひなが目を閉じる。
僕は未来を見る。
――未来、未来、未来。
そして、その未来が全部消えた。
未来がない――
「何をした!」
オラクルは叫んだ。
「未来を消した」
ひなは言った。
これからの戦い、未来が見えない。
完全な未知。
未来能力者の力が消えた世界。




