39.もう一人の未来
僕達は走っていた。
れんが息を切らす。
「まだ追ってくる?」
僕は未来を見る。
――兵士、森の入口――
まだ遠い。
「今は大丈夫」
「でも時間の問題だね」
ゆきは言った。
ひなは僕の肩に寄りかかっている。
かなり弱っている。
「しょうた……研究所」
僕は頷く。
「見えた」
「どんな所?」
れんは言った。
僕は目を閉じる。
未来を見る。
――研究所、山の奥、岩の壁、巨大な扉――
僕は未来を見続ける。
――研究所の中、白い廊下、研究員、子供、能力者。
白い部屋、一人の少年、椅子に座っている、僕を見ている――
僕は思わず目を開けた。
「……いた」
「未来能力者?」
僕は頷いた。
「間違いない」
「名前分かる?」
ひなは言った。
僕は未来を見る。
――研究員、会話、データ、コードネーム、オラクル――
「オラクル……」
「予言者って意味だね」
ゆきは言った。
僕は続けて未来を見る。
――研究所、オラクル、僕、戦い――
でもその未来が壊れる。
突然、視界が白くなる。
頭が痛い。
「っ……!」
「しょうた!?」
れんは驚いた。
僕は膝をついた。
頭の中で未来がぶつかっている。
僕の未来。
そして誰かの未来。
声が聞こえる。
「見えてるよ」
冷たい声、少年の声。
「お前……っ」
僕の体が震える。
「誰と話してるの!?」
れんは言った。
「……オラクル」
ひなが目を見開く。
「もう!?」
声が続く。
「君、逃げてるね。君の未来、全部見えるよ」
オラクルは言った。
「嘘だ」
僕は答えた。
「試してみる?」
オラクルは笑った。
未来が流れる。
――僕は一歩動く。
その瞬間。
「右に動く」
オラクルは言った――
僕は止まった。
「しょうた!?」
れんは言った。
「……同じ、僕と同じ能力」
僕は震えていた。
「でも君より遠くまで見える」
オラクルは言った。
空気が凍る。
僕は未来を見る。
――その未来の先、必ずオラクルがいる。
未来がぶつかる、そして壊れる――
これが僕の能力の弱点なのか……。
未来を見る能力者同士は、未来が干渉する。
「どうするの?」
れんは言った。
「行く。逃げても未来は変わらない」
僕は前を向いた。
「来て。待ってる。君が死ぬ未来も見えてる」
オラクルの声が消えた。
森は静かだった。
でも僕達は理解していた。
これはもう逃げる物語じゃない。
未来能力者同士の戦いが始まる。




