37.ひなの過去
森の奥にあった小さな廃屋。
僕達はそこに隠れていた。
屋根は壊れている。
壁も古い。
でも今はここしかない。
れんが水を持ってきた。
「ひな……飲める?」
ひなは床に横になっている。
顔が青い。
呼吸も弱い。
ひなが少しだけ目を開けた。
「……ありがとう」
水を少し飲む。
ゆきがひなの腕を見る。
火傷、血。
「かなり無理したね」
「うん。やりすぎた」
ひなは笑っていた。
「ひなの能力、何なの?」
れんは聞いた。
ひなは少し黙った。
「内緒にしてたんだけど、音を消す能力じゃないの。本当は存在消去」
「存在……?」
れんは目を見開いた。
「音、動き、時間、全部消せるの」
ゆきが息を呑む。
「そんな能力……」
「でも代償がある」
「命?」
れんは聞いた。
ひなは頷いた。
「使うと体が壊れる」
僕はひなを見る。
そして未来を見る。
――ひな、倒れている未来――
未来が消える。
「どうしてそんな能力……」
れんは言った。
「政府の能力者研究施設に連れて行かれたの」
「政府!?」
ゆきは驚いた。
「小さい頃にね」
「……実験?」
れんは言った。
ひなは頷いた。
「能力者の子供がいっぱいいた」
僕は思い出した。
白い部屋、研究員、僕の過去。
「しょうたも?」
ひなは言った。
「……うん」
「やっぱり」
「研究所ってどこ?」
ゆきは言った。
「山にある地下施設」
ゆきは言った。
「そこってまだある?」
れんは言った。
ひなは頷いた。
「今も能力者を作ってる」
空気が重くなる。
僕は未来を見る。
――研究所、子供、装置、能力、一人の少年――
未来が消える。
僕は息を呑んだ。
「……いる」
「何が?」
れんは言った。
「僕みたいな能力者まだいる」
そのとき、遠くで音がした。
れんが窓から外を見る。
「車?」
僕は未来を見る。
――黒い車、能力者対策部隊、ここに来る――
未来が消える。
僕は立ち上がる。
「見つかった」
「もう!?」
れんは震えていた。
「追跡されてた」
「どうする!?」
ゆきは言った。
僕は未来を見る。
――逃げる未来、戦う未来、捕まる未来。
そのとき一つの未来が見えた。
研究所、地下施設、能力者、僕、立っている――
未来が消える。
「行く」
「どこに!?」
れんは言った。
「研究所」
ひなが目を開く。
「……本気?」
僕は頷く。
「全ての原因はそこだ」
「危ないよ!」
れんは言った。
「だから行く」
能力者対策部隊。
研究所。
物語は次の段階へ進む。




